心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

うつくしいものを美しいと思える「こころ」

2017-08-04 21:28:04 | 旅行

 暑い暑い日に、私の部屋のエアコンが壊れました。ずいぶん長い間使ってきましたから、寿命なんだろうと思います。そんなわけでここ数日間、扇風機で過ごしました。そしてきょう、やっと新しいエアコンが届きました。これでなんとか暑い夏を乗り越えることができそうです。
 そんな暑い夏の夜、ブログに音楽のパーツを張り付けるのに四苦八苦しました。仕組みが分かっていないためですが、なんとか左サイドのトップに表示することができました。ただ、gooご指定のパーツなのでお気に入りの曲というわけにはいきません。クリックしなくても自動的に曲が流れるようになれば良いのですが、それもまだ実現できていません。
 さて、先週末に加賀温泉郷に行ってきました。カレンダーを見て何日間か予定が入っていないことを確かめると、やおらネットを駆使して温泉宿を探す、いつものことです。......暑い暑い夏に、蝉しぐれのシャワーを浴びながら露天風呂に浸る。そしてお風呂上りの爽快感。冷たいビールがたまりません(笑)。
 何十年も前には、夏になると、子どもたちを連れて片山津温泉、山代温泉、山中温泉などに出かけたものです。もちろん子どもたちはプールや海水浴がお目当てです。そんな加賀温泉郷を久しぶりに訪れてみると、宿の賑やかさとは裏腹に、街の中はなんとなくひっそり感が漂っていました。
 翌日は、伝統工芸体験ができる「ゆのくにの森」に行きました。単なる観光スポットと思っていましたが、苑内は広く、輪島塗、陶芸、漆器、手漉き、ガラス工芸、金箔、オルゴール、そば打ち、お菓子作りなど様々な創作体験に、手づくり大好きな家内は興奮気味です。ざっと散策する予定だったのに4時間も滞在してしまいました。
 建物はどれも由緒ある古民家を移築したものだけに、伝統美と家屋がうまく調和した気持ちの良い空間でした。昼食のあと、ギャラリーで開催中の「相田みつを」展を覗きました。相田みつをの作品には以前、東京の相田みつを美術館で拝見したことがありますが、独特の筆遣いで心の歌(詩)を表現した作品の数々が、古民家に溶け込んでいて、こころ豊かな時間を過ごすことができました。
 資料をみて、相田みつをが26年前に67歳で亡くなっていることを知りました。67歳。今夏、私は同じ歳を迎えます。幼稚性という課題を突きつけられた感があります。......帰り際に買った香皿に、こんな言葉が描かれていました。
 うつくしいものを
 美しいと思える
 あなたの
 こころが
 うつくしい

 その翌日、京都市美術館別館で開催中の第103回「光風会展」に出かけました。知人から案内状をいただいたためですが、国内のこの種の展覧会を観る機会は滅多にありません。筆遣い、色の出し方、構図と、丹念に眺めていると、ふと「うつくしいものを美しいと思える」瞬間があります。大げさな言い方をすれば、制作者と観る者の心が通じ合う瞬間があります。時間と空間。理屈ではなく、全身で体感することって、こういうことなんでしょうね。
 この日の午後は、京都大学の正門前で仲間と合流して、「こころの未来研究センター創立10周年記念シンポジウム」に出席しました。このセンターは、「こころとからだ」「こころときずな」「こころと生き方」を柱に、心理学、認知科学、認知神経科学、公共政策、美学・芸術学、仏教学など多岐にわたる学際領域から、「こころ」の総合的研究拠点をめざしているユニークなセンターです。実験室に閉じこもるだけではなく、「こころ」の視点から社会を見つめる。時代をみつめる。大事なテーマです。
 研究者でも専門家でもない私が、このセンターに現役時代から注目してきたのは、ポスト成長時代を生きる私たちに根源的な課題を提起をしていると思うからでした。南方熊楠も指摘しているところですが、専門分化が進み、木を見て森を見ない傾向が強まり、全体最適の視点を見失っている。さまざまな分野で見られる現象です.....。一本の木の向こうに広大な森を見る。言うは易く行うは難しの取り組みに、ひとつのモデルとして注目しています。
 難しいことはヨコにおいて、とにかく先生方のお話しを傾聴しました。みなさん、お一人お一人の軸足をしっかりお持ちになって、大きなテーマを見つめていらっしゃる。年配の先生方と若手の先生方とのディスカッションでは、次代を担う若手研究者を育てようという空気が充満していました。そうした諸々の取り組みに、私は現役時代から刺激を受けてきたように思います。
 ことし創立120周年を迎える京都大学に10年前に産声をあげた「こころの未来研究センター」。この先が楽しみでもあります。特設の書籍売り場で、一般人でも読めそうな本を探していたら、河合俊雄著「村上春樹の『物語』~夢テキストとして読み解く」に出会いました。
 いずれにしても、「うつくしいものを美しいと思える」素直な「こころ」が必要なんでしょうよ。きっと。

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