ときどき小雨がぱらぱらと舞う、そんな初秋の休日の朝を迎えました。花壇を覗くと、1週間ほど前に株を切り戻しておいたハーブの根元に、淡緑の若葉が見えます。暑い夏を乗り越えてくれた証です。一見か弱く見える植物の生命力を思ったものです。
さて、この夏は塩野七生さんの「ローマ人の物語」をずいぶん楽しみました。「悪名高き皇帝たち」が文庫本で4冊、それに「危機と克服」が3冊。お休みの日には長椅子に座って、ときには大きな氷を浮かべたハーブ酒を楽しみながら、二千年も昔の広大なローマ帝国の歴史を映画でも見るかのように読み耽りました。カエサルが暗殺され、アウグストゥスが初代皇帝に就いてから13代皇帝トライアヌスに至る100年余りの間、基礎固めに翻弄したり、ときには1年に3人もの皇帝が入れ替わる権力争いが繰り広げられたり、また混乱に乗じて西に東に反ローマの動きが広がったり.....。しかし、それをなんとか乗り越えた時代でもありました。ちょうど読み終わった頃、こんどは「賢帝の世紀」が文庫本として出版されましたが、さすがに9月に入ると時間と心のゆとりがありません。来年の夏までお預けです。
そんな初秋の土曜日、仕事帰りに中古レコード店に立ち寄りました。が、入り口にあったDVD歌劇「フィデーリオ」が気になりました。ベートーベンが作曲した唯一の歌劇「フィデーリオ」です。時代は18世紀、舞台はスペインの国事犯監獄。その所長ピツァロは政敵フローレスターンを不当にも密かに収監していた。最愛の夫フローレスターンを助け出そうと妻レオノーレが男装してフィデーリオと名乗り、看守ロッコの手伝いをしながら機会を窺っている。そこに、密書により不審に思った大臣が視察にやって来ることになる。所長ピツァロは、不当監禁の発覚を恐れ、政敵フローレスターン殺害を決める。暗い地下室で墓堀をさせられた看守ロッコとフィデーリオを前にして襲いかかろうとするその瞬間に、フィデーリオが素性を明かし、我が身を犠牲にして夫を守ろうとする。運良く、ちょうどその時、大臣が到着する。めでたくフローレスターンは自由の身となり、明るい陽の下でフィデーリオと抱き合う。...ざっと、こんなシナリオです。
このDVDに惹かれたのは、このオペラが上演された劇場が南フランスのオランジュ古代劇場だったからです。今は世界遺産のひとつとなっている古代ローマの劇場だったからです。1977年の上演で、以前からライブ版を探していたのですが、手にしたのは一時流行ったオペラ映画です。その分、臨場感に欠けるのですが、ローマ漬けの夏の締めくくりに相応しいものとなりました。1幕、2幕の監獄の薄暗さから一転して、第3幕は南フランスの太陽が降り注ぐオランジュの舞台で出演者全員が舞台衣装を脱ぎ普段着で晴れやかに終曲の合唱を歌う。これは映画ならではの意外性なのかもしれません。指揮はズービン・メータ、フィデーリオはグンドゥラ・ヤノヴィッツ、フローレスターンはジョン・ヴィッカーズが務めました。
さぁ、これで、私の「夏」はおしまいです。当分の間、ローマともお別れして現実の世界に戻りましょう。でも、塩野さんの歴史小説から大きなお土産をいただいたような気がしています。
さて、この夏は塩野七生さんの「ローマ人の物語」をずいぶん楽しみました。「悪名高き皇帝たち」が文庫本で4冊、それに「危機と克服」が3冊。お休みの日には長椅子に座って、ときには大きな氷を浮かべたハーブ酒を楽しみながら、二千年も昔の広大なローマ帝国の歴史を映画でも見るかのように読み耽りました。カエサルが暗殺され、アウグストゥスが初代皇帝に就いてから13代皇帝トライアヌスに至る100年余りの間、基礎固めに翻弄したり、ときには1年に3人もの皇帝が入れ替わる権力争いが繰り広げられたり、また混乱に乗じて西に東に反ローマの動きが広がったり.....。しかし、それをなんとか乗り越えた時代でもありました。ちょうど読み終わった頃、こんどは「賢帝の世紀」が文庫本として出版されましたが、さすがに9月に入ると時間と心のゆとりがありません。来年の夏までお預けです。
そんな初秋の土曜日、仕事帰りに中古レコード店に立ち寄りました。が、入り口にあったDVD歌劇「フィデーリオ」が気になりました。ベートーベンが作曲した唯一の歌劇「フィデーリオ」です。時代は18世紀、舞台はスペインの国事犯監獄。その所長ピツァロは政敵フローレスターンを不当にも密かに収監していた。最愛の夫フローレスターンを助け出そうと妻レオノーレが男装してフィデーリオと名乗り、看守ロッコの手伝いをしながら機会を窺っている。そこに、密書により不審に思った大臣が視察にやって来ることになる。所長ピツァロは、不当監禁の発覚を恐れ、政敵フローレスターン殺害を決める。暗い地下室で墓堀をさせられた看守ロッコとフィデーリオを前にして襲いかかろうとするその瞬間に、フィデーリオが素性を明かし、我が身を犠牲にして夫を守ろうとする。運良く、ちょうどその時、大臣が到着する。めでたくフローレスターンは自由の身となり、明るい陽の下でフィデーリオと抱き合う。...ざっと、こんなシナリオです。
このDVDに惹かれたのは、このオペラが上演された劇場が南フランスのオランジュ古代劇場だったからです。今は世界遺産のひとつとなっている古代ローマの劇場だったからです。1977年の上演で、以前からライブ版を探していたのですが、手にしたのは一時流行ったオペラ映画です。その分、臨場感に欠けるのですが、ローマ漬けの夏の締めくくりに相応しいものとなりました。1幕、2幕の監獄の薄暗さから一転して、第3幕は南フランスの太陽が降り注ぐオランジュの舞台で出演者全員が舞台衣装を脱ぎ普段着で晴れやかに終曲の合唱を歌う。これは映画ならではの意外性なのかもしれません。指揮はズービン・メータ、フィデーリオはグンドゥラ・ヤノヴィッツ、フローレスターンはジョン・ヴィッカーズが務めました。
さぁ、これで、私の「夏」はおしまいです。当分の間、ローマともお別れして現実の世界に戻りましょう。でも、塩野さんの歴史小説から大きなお土産をいただいたような気がしています。