田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼浜辺の少女外伝/魔闘学園

2008-08-30 05:42:31 | Weblog
 不安があった。            
 ひさしぶりで、すさまじい凶念を体感した。
 街が邪悪な気配にピリピリふるえている。
 この凶念。
 この邪悪な気配は記憶にある。 

 麻屋は英語圏で、日本ではあるが厚木の米軍キャンプにいた。
 英語を話すことで生きていた。
 時の流れが逆流していた。   


 厚木基地での日々。          
 遠い湾岸で戦争が続いていた。
 兵士たちの死体が黒い袋につめこまれて毎日はこばれてきた。
 テレビで公表されているような員数ではない。
 すべて、目にみえる表の世界のできごとには裏がある。           
 焼却炉からは、火葬の、人を焼く臭いが。
 いがらっぽい煙に混入して。
 基地の一隅をおおっていた。                 
 

 タカコとクラブにはいった。
 むろん、うさんくさい目でみられた。
「マッポじゃないからね」
 タカコときてよかった。
 犬飼中次期生徒会長の犬飼ケイコが宇都宮のクラブで踊っていたというのだ。
 けっしてケイコの現れるはずのない場所だ。         
 それも失踪した月曜日からかぞえて3日目、麻屋がケイコの家から連絡をうけた日だ。
 あのとき、すぐに捜査にかかればよかった。
 警察に届けてある、というので安心してしまった。                 
 警察で本気で捜査しているのなら、「アサヤ塾」にもケイコの交遊関係くらい調べにきてもいいはずだ。
 いや、警察が怠慢なはずがない。
 あまりにも不可解な殺人事件をかかえている。
 河川敷住民のスロートカット殺人事件をかかえている。
 多忙すぎるのだ。
「なんてクラブなの……」
「クラブは宇都宮にはひとつしかないの」
 携帯を打ってきたタカコが「センセイ、ダセェ」とケタケタ笑っていた。
「松が峰にあるリリスょ。アサヤ先生聞いてよ、二荒さんいますかなんて、ケイコがさぁ、スカして、たずねていたって。わたしが塾バックレちゃってるから会いたくなったのかな。どうかしちゃったのかな。センセイ、オール5のケイコがあたしんとこへなにしにきたの……」                
「松が峰のリリスだな」
「やだぁ、先生ほんきで、いくき。オッチャンはセキュリティにことわられるよ。マッポとまちがえられるものね。あたし、イッテアゲる」
 
 スモークが、踊の群れの足元にまつわりついている。

 すきかってに踊っている。
 下半身の動きはまったく見てとれない。
 重低音にときおりラップがはいる。
 それ以上のことは、麻屋にはわからない。
 臭い。
 若者の汗の臭いなのだろうか。
 それにしても、臭いがきつすぎる。
 青緑のような匂い。
 脇の下と足の臭いか。
 通風性のわるい、安もののスニカー。
 洗ったこともなく、うすぎれればすててしまう靴下が悪臭の源なのか。
 それとも……発情したセックスの?               
 しかしタカコは慣れている。
 平気だ。  
 
 スモークには妖気がふくまれていた。
     
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