田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

牧場/吸血鬼ハンター美少女彩音  麻屋与志夫

2008-08-06 23:12:02 | Weblog
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「事後処理は市役所にまかせておけばいい」
「生徒たちは全部帰宅させたが、だいじょうぶだろうな」
「ほかのものに、人から人にはこの熱はうつらない。移す能力もないはずだ」
「生かさず、殺さず。ずっとわれわれの餌ですか」
「そういうこと。ヤッラどうしで精気をすいあったら、鮮度がおちるからな」
「おいしい精気を吸いおわったら、おいしい血を吸いましょう」
「たのしいな。たのいしな」
 だれがはなしているのか声がくぐもっているのでわからない。
 美術館のあたりだろうか。
 それに壁越しだ。
 麻屋はうしろのふたりにバックするように合図する。
 いつのまにか、吸血鬼の侵攻は市民のレベルまで浸透している。
 異界が現実の鹿沼と重なりあっている。
 人の精気を吸って生きているマインドバンパイヤが増殖していた。
 ひとがひとを差別する。
 『お近所トラブル』がたえない。
 しまいには猟銃で隣の主婦を射殺する。
 吸血鬼よりも残酷なことを平然とやってのける。
 川に親友の子供を生きたまま投げ込む。
 学校でのいじめ。
 大人同士のいがみあい。
 苦しみ、悲しむ。
 苦しみや恐怖におののく人の精気は吸血鬼にとっては、最高のゴチソウだ。
 吸血鬼の侵攻が鹿沼を中心にして広がりつつある。
 精気を吸われても、吸血行為のようにドハデな、ひとの生死にかかわることもない。
 吸血だけを目的としない、マインドバンパイアが増えている。
 だから、いままで、だれにも気づかれなかったのだ。
「教室で平気で携帯かけまくる。携帯であそんだり、おかしいと思っていたんだ。制止しても、なにいわれているのかわからない。しかられていても、携帯から手をはなさない。数分おきにでかいあくびをする。精気をすわれていたんだな」
「そうか、うちの学校だけではないよね」
「汚染はひろがりつつある」
「ひょっとして、全国区」
「あるいはな……」
 麻屋はふたりを肯定する。
 だが、これほどひどいコウモリインフルエンザは鹿沼の東地区だけだ。
 それが、せめてもの救いだ。
 ここでこの地区だけでくいとめないと大変なことになる。
 全国にこんなインフルエンザが蔓延したら日本は破滅だ。
 核攻撃どころの被害ではなくなる。
 後ずさっていた慶子がどすっと壁にぶちあたる。
 壁がくるっと回転した。
 回転ドアになっていた。
「ヤバイよ。いまの音きかれたよ」
「どうしょう、彩音」
 慶子は泣き声を出した。
「あっ、ここが反省室だ」
 怨恨の渦がうねっている。
 麻屋は吸血鬼捕縛の呪文をとなえながら、部屋の隅から隅までゆっくりと歩く。 渦の動きがうすらいでいくのを肌に感じる。

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注。「モロ」としいう言葉はやはり吸血鬼に関係ありました。
河出文庫「吸血鬼伝説」栗原成郎 281ページを御覧ください。
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負のエネルギー/吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫

2008-08-06 06:13:16 | Weblog
53

 慶子にもわかってきたようだ。
 マジな顔でおおきくうなずいている。
「だからその恨みのこもった反省室を再封印するか、思いきって亡霊を解放してやれば……」
 彩音と慶子が同時におなじことをいう。
「ふたりとも、だいぶわかってきたようだな。わたしたちは、吸血鬼との戦いに優位に立てる」
 だが心の片隅では……。
 麻屋は、反省室。
 などとは思っていなかった。
 拷問部屋だったろう。
 いや、そんなことはないだろう。
 物事を悪く考えすぎる。
 これも吸血鬼の影響を受けているのだ。
 とぶっそうな推理を否定する。
 歴史の中に消えてしまっている。
 ……残酷な話……。
 にも、目をむける必要はある。
 美しいものだけを見て生きていければ。
 こんなに幸せなことはない。
 
 吸血鬼は街の暗い部分からエネルギーを吸いとっているのだ。
 人を不幸にしている。
 その、負のエネルギーを食い物にしている。 
 恨み、嫉妬、貧困。を発生させている。
 さらに鹿沼に不幸をもたらそうとしている。
 すべて吸血鬼が画策している。
 ヤツラを滅ぼさなければ、平和な鹿沼にはもどれない。
「もう、幸橋の下のあたりよ」
「彩音も慶子も気づかないのか。このあたりはもう昔ほられた洞窟じゃないぞ」
 壁がよごれていない。
 まわりがコンクリートだ。
 どこかでさきほどコウモリにおそわれた階と合流している。
 おかしい。
 これは!!
 吸血鬼だけの通路が鹿沼の地下にできているのだ。
 下水路とうまくジョイントすれば吸血鬼は地下通路を利用していつでも、どこへ でも出没することができる。
 これはたいへんなことだ。
 街を歩いていて悪臭におそわれることがある。
 あれは地下道から吸血鬼がでてきたときの臭いだろう。
「図書館から、隣の川上澄生美術館へ。そして……」
 地下道で街から街へつながっている。
 そんな考えが閃いた。
 閃いたからといって、安易にそれを生徒たちの前で口外するわけにはいかない。
 麻屋はふたりを制止した。
 話し声がする。
 どこかで人の話し声がしている。
 低い押し殺したような声。
 でも、まちがいなく人の声だ。
「どこから聞こえてくる……? 慶子。上のほうからかな? どうなんだ」
 麻屋が慶子を仰ぎみている。

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