田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

学校閉鎖/吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫

2008-08-03 20:17:10 | Weblog
49

 彩音のイヤミに文美がせきばらいで反応した。
「なんだ、定年まで市の図書館にいた文美おばぁちゃんのアイデァだったの」
 
 すなおに、彩音はほめる。
 わたしのほうが、語感が古い。
 わたしは『コウモリ熱』なんていっていた。
 まさか、吸血鬼熱だ。
 なんていえないものね。

「まぁね」と文美が反り返る。
「わたしは、この街はおかしい。この街ではなにかが起きている。なにか街の影で、うごめいている。……と、警告してきた。妄想バカ……と、長いこといわれつづけてきたの。でも、妄想でしかいえないこともあるのよ。妄想にも真実はあるの」
 夕暮れるとコウモリが空一面に飛び交った。
 薄闇の空にコウモリが群れている。
 不気味な鳴き声を上げて夜空をさらに暗くする。
 どこから、このコウモリの大軍は現れたのだ。
 ひとびとは逃げまどう。
 怯えて家の中に閉じこもる。
 昼も夜も家の中で震えている。
 コウモリはフンをまきちらす。
 コウモリのまきちらすフンの悪臭が空から降ってきた。
 その強烈な臭いを嗅ぐと頭がくらくらする。
 その排泄物は、屋根や地面に降りそそいだ。
 太陽に炙られ乾燥し埃となって舞い上がる。
 街の東地区は隅々まで、埃まみれになった。
 ひとびとは気づきはじめていた。
 この異臭を放つフンまじりの埃は……。
 ただごとではないと。
 この異物は、異形のものがいる証拠だと。
 それでも、うどうすることもできなかった。
 大勢のひとがコウモリインフルエンザにかかってしまった。
 どこの家でも、ひとりは病人をかかえこんでいる。
 高熱がつづく。
 うなされる。
 ワイセツなことを。
 ワメキチラス。
 熱はなかなか下がらない。
 薬も効かない。
 ただ寝ているだけだ。
 青白く、日増しに衰弱していく。
 窓を密閉しても、埃だからどこからともなく部屋にしのびこむ。
 埃はまさに生きたウイルスを含んでいた。
 とりわけ、鹿沼中学の学区内。
 黒川の向こう岸。
 市の東側が罹病率が高かった。
 東に高い台地が連なる。
 その河川段丘の下を黒川が流れている。
 上昇気流がある。
 空気の淀みがほかの地区とちがうのかもしれない。
 こうもりの巣、発生源が鹿沼中の旧校舎にあるせいでもあった。
 廃材もまだ校庭の隅に山積みされている。
 生徒たちは、サージャンマスクをして予防に努めた。
 目はおおうわけにはいかない。
 赤目になった。
 赤くただれた眼からは涙が出た。
 とまらなかった。
 咳が出た。クシャミが出た。
 とまらなかった。
 そして。
 
 ついに学校閉鎖。

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H5N1型?/吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫

2008-08-03 12:51:07 | Weblog
48

 いまの大関教育長は麻屋の先輩だ。
 民間から起用された。
 建築会社の社長だ。
 教育委員会のある旧消防署あとはアサヤ塾からは目と鼻の距離だ。
 気さくに、とことこ歩いて大関はやってきた。
 そして、固まった。
「集団脱走。集団登校拒否。集団……」
 大関はあまりの生徒のおおさに絶句。
 なすすべもない。
 大関はあまりに現実ばなれした話しに絶句。
 対策を思いつかない。
 だいいち、一級建築士からたたきあげた社長だ。
 理系の頭だ。
 吸血鬼の存在はファンタジーの世界。
 理解できない。
「昨夜、上都賀病院で共に闘った警察とフアイャマンがいるわ、あのひとたちにきてもらって……」
 彩音、慶子、静の3人が同時に叫ぶ。
「あの人達に、吸血鬼との接近遭遇体験を話してもらえばいいのよ。そうすれば、教育長の偉い先生も分かってくれるよ」

15

 学校閉鎖。
 市民は家の中に閉じこもっている。
 昼中は街に人影がまばらだ。
 太陽の直射をきらっている。
 紫外線にあたることを避けている。
 鳥インフルエンザ……。
 コウモリは鳥てすか?
 獣ですか? 
 鳥だとしたら、そのまま鳥インフルエンザでいいではないか。
 黒川の上流で白鳥が死んでいる。
 べつに解剖して調べなかった。
 今になって、H5N1型だったのではないか?
 人にも感染する新型のインフルエンザではないか?
 鳥インフルエンザなのだ。
 やはり、そうなのだ。
 喧々諤々。
 そんな議論を反復する愚をくりかえさないためにも、そのものズバリ。
『コウモリインフルエンザ』汚染地区。
「考えたものね? 行政にも知恵者がいるのね」
「おほん」

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