田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

九尾の騎士/吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫

2008-08-20 06:30:34 | Weblog
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 携帯が鳴った。

「彩音、助けにきて。静もいる。わたしたち演劇部の部室にいる」
 
 忘れてた。学校閉鎖がとけた。
 今日から、平常授業があったのだ。

「どうなっているの? 美穂、おちついて」
 
 美穂は面会謝絶の重体だったはずだ。
 いつのまに退院したのだろう。
「え、美穂が学校にいるの? わたしの母がした輸血がきいたんだわ」
 と彩音のところによってきて慶子がいう。

「街のオヤジたちが発情しちゃってるの。学校がおそわれてる。男の子もみんな赤い目になってる。女の子はレイプされてる。もう地獄、地獄だよ」
「慶子、いこう。学校がおそわれている。美穂も静もあぶない」

 授業を再開するのが早すぎたのだ。

「学校っていちばんわたしたちにとって安全なところじゃなかったの」

「彩音……」と玉藻がやさしく声をかける。

「わたしの乗り物を貸してあげる。あなたたちの一族がわたしの廟をまもり、一族の純血を守り通したことに感謝しているわ。こんどはわたしも後にはひかない」

 黄金色の噴水のなかから、九尾の狐が現れた。

「これなら、ふたりのれる。慶子いこう」
「わたしは母をたすけに病院にいく。病院は東地区に在るのよ。司くん、彩音といっしょにいつてあげて」
「てれるな、白馬の騎士じゃなくて、九尾の騎士か」
「おゆき」
 玉藻が彩音と司をみてほほえみ、狐に命令をくだした。
 だが、玉藻は影となり、薄れかけている。
「わが一族のいちばんわかい武者ぶりね、ふたりの初陣のてだすけをするのよ」

 あとのことばは九尾の狐にかけたものだった。
 声だけが残り、玉藻はまた消えてしまった。
 まだパワーが足りないようだ。

「美智子、文葉、わたしたちがもどったらすぐ出発できるように手配をたのむ」
 麻屋と源一郎が4駆に飛び乗った。
 司と彩音は九尾のキツネの背中にのって空を飛んだ。
 モロ山にある地下の大洞窟にワープしたときのような感じだ。
 
「そこ、動かないでよ美穂、いまそっちへむかっているから」
 
 校門のところに男がいた。
「彩音ちゃん、おじさんといいことしょう」
 門のところで、まるでまちぶせしていたみたいだ。
 股間をモッコリさせた酒屋の藤田だ。
「彼氏といっしょにどこへ行くのだ。おじさんといいことしょう」
 藤田には九尾の狐はみえないらしい。
 よだれをたらしている。好色な目を赤らめて追いすがってくる。
「斬」
 司が刀をきらめかせた。
 よだれをたらしたまま藤田の首が宙にとんだ。
 もう人間ではない。
 人ではない。
 吸血鬼への変身をはじめているものに情けはむようだった。

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