■第2期「ゴルトベルク変奏曲」アナリーゼ講座のお知らせ■
~豪華なフランス風序曲の16変奏、イタリアの陽光が降り注ぐ17変奏 ~
2016.11.5 中村洋子
★立冬を前に、秋の日は釣瓶落としです。
気が付きますと、
もう夕暮れになっています。
★前回のブログで
「Clavierbüchlein für Anna Magdalena Bach
アンナ・マグダレーナ・バッハのクラヴィーア小曲集」について、
お話いたしましたが、
この曲集は、Johann Sebastian Bach バッハ (1685-1750)が、
妻Anna Magdalena Bach (1701-1760) と一緒に、
作っていった音楽帳です。
★Bachは1704年、最初の妻のMaria Barbara
マリア・バルバラ(1684-1720) と結婚しました。
彼女は、Bachの「またいとこ」で7人の子供を産みましたが、
4人は幼くして亡くなっています。
★1720年5月下旬、Bachは仕えていたケーテンのレオポルド侯爵と
一緒に、有名な温泉保養地・カルルスバートへと旅立ちます。
カルルスバートはケーテンから南に約210キロ、
皇帝や著名な貴族が各地から集い、それぞれがお抱えの楽長や
楽団員を引き連れ、華やかな演奏会がさかんに催されます。
レオポルド侯爵はきっと、
“私には、こんな素晴らしいカペルマイスター
(宮廷楽長)がいますよ”と自慢し、
Bachの演奏を、皆さんに披露したことでしょう。
★しかし、Bachが7月上旬、ようやくケーテンの我が家に戻ると、
出迎えたのは、
思いもかけない「愛する妻Maria Barbaraの死・・・」。
むごい知らせでした。
Bachを送り出した時、あんなに元気だったマリア、
まだ36歳でした。
既に、埋葬まで終わってしまっていました。
残されていた子供は、長男フリーデマンが11歳、
二男エマヌエルが6歳でした。
その衝撃は、いかばかりか・・・。
★どんな病気で、なぜそんなにも急に亡くなったのか、
記録は残っていないそうです。
唯一「レオポルド侯爵陛下のカペルマイスター、
Johann Sebastian Bach氏の妻埋葬」という
記録が教会にあるのみだそうです。
★マリアの死から約1年半後、Bachは1721年12月3日、
二度目の妻となるAnna Magdalena Wilcke
アンナ・マグダレーナ・ヴィルケと、結婚しました。
当時、彼女は20歳でした。
Anna Magdalenaは、宮廷ソプラノ歌手として既に、
認められた存在でした。
途方もない天才バッハを心から愛し、尊敬して結婚したのでしょう。
★面白いエピソードが残っています。
Bachはこの結婚パーティーのために、素晴らしいワインをたくさん、
年収の五分の一以上のお金を、注ぎ込んで購入しました。
Bachの喜びがうかがい知れます。
★“Bachは紙代を惜しんで、楽譜の余白に書き込んだ”という
学者の説がおかしく思えます。
豪放で度量の大きな人です。
★結婚の翌1722年からBachとAnnaは、共同作業で、
「Notenbüchlein für Anna Magdalena Bach
アンナ・マグダレーナ・バッハのための音楽帳」
を作り始めましたが、残念ながら全部は残っていません。
★「Clavierbüchlein für Anna Magdalena Bach
アンナ・マグダレーナ・バッハのクラヴィーア小曲集」は、
1725年から始まり、Bachの息子たちも加わって、
1740年すぎまで書き続けられました。
★この「Clavierbüchlein für Anna Magdalena Bach」は、
パルティータの1、2番や、ペッツォルトの短いメヌエットも1曲
として数えるという、やや乱暴な数え方では、
40数曲になります。
★その26番に当たる曲が「Goldberg-Variationen
ゴルトベルク変奏曲」の主題である「Ariaアリア」です。
これは、Anna が写譜しています。
Bachの自筆譜は残っていませんが、Bachの生前出版である、
「 Clavierübung クラヴィーアユーブング4巻
Goldberg-Variationen」 の初版譜と比較しますと、
若干、レイアウトも異なり、ここからも
たくさんの発見があります。
★暫くお休みしていました
「Goldberg-Variationenゴルトベルク変奏曲」
アナリーゼ講座の第2期が、来年2017年1月から、始まります。
第2期は、「Goldberg-Variationen」全30曲の後半第16曲から、
始まります。
★第2期からご参加されます方にも、無理なくご理解いただけますよう、
毎回、第1期の復習を行います。
また、講座の時間も2時間半(休憩含む)だったのものを、
3時間に拡大します。
★1月21日(土)は、第16、17、18変奏とともに、
主題Aria、第1~3変奏の復習をいたします。
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●作曲家 ・中村洋子 によるアナリーゼ講座
「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」
第 1回 変奏曲 第 16 、17 、18 番
■日時 : 201 7年 1月 21 日(土) 13:30~16 :30
■会場 : 文京シビックホール 多目的室 (地下 1階)
■受講料 : 3, 000円(税込)
■定員 : 100名
お問い合わせ・お申込み |
アカデミア・ミュージック(株)企画部 TEL: 03-3813-6757 |
https://www.academia-music.com/academia/m.php/20161026-0
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★バッハの音楽はなぜ美しく、私たちの心をとらえて離さないのか・・・
人類の宝「ゴルトベルク変奏曲」が、どういう構造で成り立っているか、
一見、単純に見えながら、複雑に絡み合っているその「和声」と対位法を
ピアノで実際に音を出しながら、詳しく分かりやすくご説明いたします。
第6回(第2期第1回)の講座では、
・豪華なフランス風序曲とフーガの第16変奏
・イタリアの陽光が燦々と降り注ぐ第17変奏
・第9変奏から導かれ、第22変奏にバトンを渡す第18変奏
の3つの変奏曲を掘り下げていきます。
★本講座は、初版譜ファクシミリ(Fuzeau出版社)を基にして進めます。
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★ 第 2期第 1回は、第 16 、17 、18 変奏の三曲です。
前半 15 曲は、嘆きの底に沈潜するかような第 15 変奏で、
締めくられました。
★第16変奏は、再び生命が息を吹き返し爆発するかのような、
喜びに満ちたG-Dur上行音階で始まります。
フランス風序曲の形式です。
この形式は、クラヴィーアユーブング1、2、3巻から第16変奏に向けて
周到に準備されてきました。
★緊迫感に満ちた第15、16変奏の後は、ユーモラスな
「3度のジグザク進行」を伴った第17変奏です。
このジグザグ進行は、第16変奏のフーガから発展したモティーフですが、
源泉は、ヴィヴァルディの協奏曲や、スカルラッティのソナタに
遡ることができます。
イタリアの陽光が燦々と降り注ぎます。
★第18変奏は、6度のカノンです。
ソプラノ声部は、アルト声部を2分音符の長さだけ遅れて追走します。
この二声 を支えるバス声部に、第16、17変奏の要素が投影されます。
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■講師:中村洋子プロフィール
東京芸術大学作曲科卒。
・2008~15年、「インヴェンション・アナリーゼ講座」全15回を、東京で開催。
「平均律クラヴィーア曲集1、2巻アナリーゼ講座」全48回を、東京で開催。
自作品「Suite Nr.1~6 für Violoncello無伴奏チェロ組曲第1~6番」、
「10 Duette fur 2Violoncelli チェロ二重奏のための10の曲集」の楽譜を、
ベルリン、リース&エアラー社 (Ries & Erler Berlin) より出版。
「Regenbogen-Cellotrios 虹のチェロ三重奏曲集」、
「Zehn Phantasien fϋr Celloquartett(Band1,Nr.1-5) チェロ四重奏のための
10のファンタジー(第1巻、1~5番)」をドイツ・ドルトムントの
ハウケハック社 Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。
・2014年、自作品「Suite Nr. 1~6 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲第1~6番」のSACDを、Wolfgang Boettcher
ヴォルフガング・ベッチャー演奏で発表
disk UNION : GDRL 1001/1002)
・2016年、ブログ「音楽の大福帳」を書籍化した
≪クラシックの真実は大作曲家の自筆譜 にあり!≫
~バッハ、ショパンの自筆譜をアナリーゼすれば、曲の構造、
演奏法までも 分かる~ (DU BOOKS社)を出版。
・2016年、ベーレンライター出版社(Barenreiter-Verlag)が刊行した
バッハ「ゴルトベルク変奏曲」Urtext原典版の「序文」の日本語訳と
「訳者による注釈」を担当。
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