■繰り返し登場する「主題」は、それぞれが異なった生命をもつ■
~ KAWAI 名古屋 「イタリア協奏曲」第1回・アナリーゼ講座~
2015.2.24 中村洋子
★春一番も吹き、静かに着実な春の足音が聞こえてまいりました。
2月25日 (水) は、 KAWAI 名古屋で、
「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」
アナリーゼ講座・第1回を、開催いたします。
★2月17日(火)の、 KAWAI 表参道
「平均律第2巻 23番 H-Dur」・アナリーゼ講座で、いかに、
この23番 Prelude が、イタリア協奏曲と深い関係にあるかを、
お話してきたばかりです。
1739年ごろ完成された「 Wohltemperirte Clavier Ⅱ
平均律クラヴィーア曲集 第 2巻 」 から、その約4年前の1735年に、
出版された「イタリア協奏曲」を、逆に、
俯瞰するという、得難い経験もできました。
★「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」は、1735年に
≪Zweyter Theil der Clavier Übung クラヴィーア ユーブンク第2巻 ≫
として出版されました。
Bach 生前の数少ない出版の一つです。
この曲集には、「イタリア協奏曲」と「フランス風序曲」が、
収録されていますが、
出版後の、Bach 自身による正誤表も残っていますので、
Bach 公認の楽譜といえます。
「Manuscript Autograph facsimile 自筆譜 」 は、
残念ながら残っていません。
★イタリア協奏曲第1楽章(全192小節)は、
1ページ8段、全5ページに記譜されています。
・ Invention & Sinfonia の横長1ページ 基本3段
・ 「 Wohltemperirte Clavier Ⅰ 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 」
縦長1ページ 基本6段
・「 Wohltemperirte Clavier Ⅱ 平均律クラヴィーア曲集 第 2巻 」
縦長1ページ 基本7段
とは、随分と異なった印象を受けます。
★Bach の生前出版は、すべて統一がとれているかといいますと、
そうでもなく、例えば、
・ Clavier Übung 1巻である「Partita 全6曲」は、
横長1ページ 基本4段
・Clavier Übung 4巻 Goldberg Variationen は、
縦長1ページ 基本7段です。
名曲集も、まちまちです。
★曲想、曲の構造に即して、Bach がレイアウトを選択している、
とも言えましょう。
★1741年出版の「Goldberg Variationen」は、
1739年頃に完成した
「 Wohltemperirte Clavier Ⅱ 平均律クラヴィーア曲集 第 2巻 」 と、
レイアウト、段組みが一致しているのは、偶然でしょうか?
★ KAWAI 名古屋のアナリーゼ講座では、
Bach が「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」のレイアウトで、
何を訴えたかったか、
それを、どう演奏に活かすかを、お話いたします。
★2週間前に KAWAI 金沢で開催しました、
「 Inventio & Sinfonia Nr.6 E-Dur 」 アナリーゼ講座では、
Inventio での Binary form = 二部構成 (A A B B) の「A」を、
最初に弾く際と、2回目に演奏する際、
どのように変化させるかについて、解説いたしました。
★この「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」も、
繰り返し、繰り返し登場する「主題」の演奏法がカギとなります。
Edwin Fischer エドウィン・フィッシャーは、それぞれに、
異なる Fingering を付けています。
★Edwin Fischer が、 Sinfonia Nr.1の注釈で、
「every voice had its own life」と書いていますように、
繰り返し登場する「主題」は、
それぞれが、異なった生命を持っているかように、
演奏するべきであると、いえます。
アナリーゼ講座では、それを、詳しくご説明いたします。
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■KAWAI 名古屋「「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」
第1回・アナリーゼ講座
~ イタリア協奏曲の正体は、華麗で豪奢な管弦楽協奏曲 ~
■日 時 : 2015年 2月 25日(水) 10:00 ~ 12:30
■会 場 : カワイ名古屋2F コンサートサロン「ブーレ」
■予 約 : Tel 052-962-3939 Fax 052-972-6427
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★イタリア協奏曲 全 3楽章を 、2回にわたり、初版譜を基にして、
アナリーゼいたします。Bach ( 1685~1750 )の作品で、生前出版された曲は
あまり多くありませんが、その一つが、
「 Italienisches Konzert イタリア協奏曲 」です。
★「 Zweiten Teil der Klavierübung クラヴィア練習曲第 2巻 」
全 27 pages の、前半 (1~13 page) が、イタリア協奏曲です。
後半は、「 Overture nach Französischer Art フランス風序曲 」です。
★「 平均律クラヴィーア曲集第 1巻 」(1722)、
「 Inventionen und Sinfonien 」(1723) の 上声は、
ともに 「 ソプラノ記号 」 で記譜されています。
しかし、このイタリア協奏曲の上声は、
私たちに馴染み深い≪ ト音記号 ≫ で一貫して、 記されています。
下声は、≪アルト記号≫ と ≪バス記号≫ が、交互に現れます。
その意味を読み解きますと、イタリア協奏曲の骨格が、
明確に 浮かび上がってきます。
★一見、明快単純に見えます第 1楽章の和声は、実は大変に複雑で、
平均律 1巻ではあまり見られない、Bachの典型的な後期の和声です。
この和声を、正確に理解いたしませんと、
tutti( 総奏 )と 、solo が交互にまじわる、単なる華やかな曲として
演奏されてしまいます。
事実、そのような浅薄な演奏も、多く聴かれます。
★Bach の対位法と和声とが、固く手を結びあった究極の曲が、
このイタリア協奏曲なのです。Bach が若き日に学び尽くしたAntonio Vivaldi
(1678~1741)、Alessandro Marcello (1669~1747) の
「 Concerto 」 や、Bach 自身の 「 Brandenburg Concerto
ブランデンブルグ協奏曲 」 についても、
2回の講座で、触れていきたいと思います。
★Bach の広大無辺な世界は、狭い 「 古楽 」 の世界には、入り切りません。
ピアノで、それをどう演奏していくかを、やさしく、ご説明いたします。
また、偉大な pianist Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー
( 1886 ~ 1960 )の Fingering から、彼が、何をこの曲から汲み取り、
構築していったか、についても詳しくお話します。
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■講師 : 作曲家 中村 洋子 Yoko Nakamura
東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。
2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。
07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。
08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。
08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
Analysis インヴェンション・アナリーゼ講座 」
全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。
09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」の楽譜を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。
10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
「 Regenbogen-Cellotrios 虹のチェロ三重奏曲集 」の楽譜を、
ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。
11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
チェロ二重奏のための 10の曲集 」の楽譜を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」の楽譜を、
Musikverlag Hauke Hack Dortmund 社から出版。
13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」の楽譜を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
14年:「 Suite Nr.2、4、5、6 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 2、4、5、6番 」 の楽譜を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
SACD 『 Suite Nr.1、2、3、4、5、6 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 1, 2, 3, 4, 5, 6番 』 を、
「disk UNION 」社から、≪GOLDEN RULE≫ レーベルで発表。
スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
自作品が演奏される。
★上記の 楽譜 & CDは、
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
「アカデミア・ミュージック 」
https://www.academia-music.com/academia/s.php?mode=list&author=Nakamura,Y.&gname=%A5%C1%A5%A7%A5%ED
https://www.academia-music.com/ で販売中。
★私の作品の SACD 「 無伴奏チェロ組曲 第 1 ~ 6番 」
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
disk Union や全国のCDショップ、ネットショップで、購入できます。
http://blog-shinjuku-classic.diskunion.net/Entry/2208/
※copyright © Yoko Nakamura
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