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■バッハ「フルートソナタ」・「シチリアーノ」の作者は?、テレマンとの関係■
09.7.2 中村洋子
★テレマン George Philipp Telemann(1681~1767)の、
「小品集を伴った小フーガ集」
「Leichte Fugen mit kleinen Stuecken TWV 30:21ー26
「Easy Fugues with little Pieces」(1738年出版)は、
小フーガの後に、演奏が容易な数曲の小品を伴った曲集です。
★全5曲で、第1番を例にとりますと、第1曲目が「Fuga prima」、
2曲目が「Vivace」、3曲目が「Allegro」、4曲目は「Presto」、
5曲目は「Allegretto」。
フーガは、2ページですが、他の曲は、
1ページ前後の、短くやさしい曲です。
★バッハの「組曲」と異なるのは、冒頭のフーガを除く他の曲が、
「ダンスの曲」ではない、ということです。
バッハでは、「アルマンド」、「クーラント」、「サラバンド」、
「メヌエット」、「ジーグ」などが、並びます。
★この曲集が、作曲されたころ、まだ、大バッハ
J.S.BACH(1685~1750)も、活躍していました。
テレマンは、バッハより、4歳年上ですが、
バッハより、17年、長生きしました。
しかし、この両巨匠が活躍していた1730年代における、
二人の作風は、大きく、違っていました。
★テレマンが、この曲集を「Galanterie - Fugen」と、
名付けたように、第一世代の「ギャラント様式」の曲です。
大バッハの、複雑で、対位法を極めた音楽様式に対し、
簡潔で、分かりやすく、後のガルッピ、クリスチャン・バッハ、
エマニュエル・バッハ、ぺルゴレージ などへと、
つながっていく、音楽といえます。
★「ギャラント」は、フランス語で「楽しみを求める」が原義。
「ギャラント様式」は、すべてが明澄で、簡素で明確な和音、
同じリズムを続けるバス、優雅なセンチメンタリズム、
三和音と短いフレーズに基づく旋律、これらが主な特徴です。
★このテレマンの曲集は、現代のピアノ学習者や、
音楽愛好家にとっても、馴染みやすく、
楽しいうえ、質が高いので、お薦めです。
★楽譜は、Schott社( ED9015 )、
Schott piano classicsシリーズの、一つです。
★バッハの有名な「フルートソナタ」BWV 1031
Sonate Es-Dur fuer Floete und obligetes Cembalo の、
作者は、現在では、バッハの息子のカール・フィリップ・
エマヌエル・バッハ Carl・Philipp ・Emanuel・Bach(1714~1788)
と、されています。
その理由として、この曲の様式が、上記のテレマンの様式に、
とても近いためです。
★しかし、この「フルートソナタ」は、
大バッハの指導と手助けによって出来た、
あるいは、バッハが自分で、かなり手を入れていたのでは、
という説も、あります。
★私は、この作者が、息子なのか、大バッハであるか、
興味ありませんが、もし、息子の作品であるならば、
彼は、大バッハの様式を骨の髄まで、染み込ませ、
理解したうえで、次の世代の曲として、創造したと思います。
★この第2楽章「シチリアーナ」の和声と形式は、
大バッハの平均律クラヴィーア曲集 1巻 1番の前奏曲を、
そのまま、移してきたものである、と言えるからです。
先月、カワイアナリーゼ講座「前奏曲とは何か」で、
お話しました、「前奏曲様式」が、完全に消化されて、
このシチリアーナが、作られています。
★「最初の4小節の和音」を、要約し、
「ト短調」を「ト長調」に変えて、弾いてみてください。
平均律クラヴィーア曲集 1巻1番の「前奏曲」と、
同じ音楽が、出現します。
また、属音や、主音の保続音の位置、使われ方を見ますと、
大バッハの前奏曲様式を、そのまま用いています。
そして、これが、ショパンの「エチュード」へと、
つながっていくことが、読み取れると思います。
息子の作であるならば、彼の力量がうかがわれます。
★この曲に、大バッハが手を入れている、
あるいは、大バッハ自身の作品である可能性については?
★壮年時のバッハは、テレマンの曲を、当然、知っていたはずです。
バッハの音楽様式を、「ギャラント様式以前の、複雑で、
手の込んだ対位法」と、固定してとらえなければ、
“バッハの作品”であった、ということもいえます。
★一人の作曲家が、一つの様式でしか書けなかった、
ということはない、と思います。
まして、あの大バッハなのですから、当然、
なんなく、新しい様式でも、作曲できたはずです。
★そんなことを考えながら、わずか33小節のシチリアーナを、
演奏することは、とても楽しいことです。
33小節という長さは、インヴェンション1曲の長さに
よく似ています。
私は、作曲家探しには、ほとんど興味ありません。
その曲の内容がすばらしく、その素晴らしさを理解し、
楽しめれば、十分です。
★10月21日にカワイ・名古屋で「第1回 バッハ・インヴェンション
アナリーゼ講座」を開催いたします。
(野生山吹の実と龍のひげの花)
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲
09.7.2 中村洋子
★テレマン George Philipp Telemann(1681~1767)の、
「小品集を伴った小フーガ集」
「Leichte Fugen mit kleinen Stuecken TWV 30:21ー26
「Easy Fugues with little Pieces」(1738年出版)は、
小フーガの後に、演奏が容易な数曲の小品を伴った曲集です。
★全5曲で、第1番を例にとりますと、第1曲目が「Fuga prima」、
2曲目が「Vivace」、3曲目が「Allegro」、4曲目は「Presto」、
5曲目は「Allegretto」。
フーガは、2ページですが、他の曲は、
1ページ前後の、短くやさしい曲です。
★バッハの「組曲」と異なるのは、冒頭のフーガを除く他の曲が、
「ダンスの曲」ではない、ということです。
バッハでは、「アルマンド」、「クーラント」、「サラバンド」、
「メヌエット」、「ジーグ」などが、並びます。
★この曲集が、作曲されたころ、まだ、大バッハ
J.S.BACH(1685~1750)も、活躍していました。
テレマンは、バッハより、4歳年上ですが、
バッハより、17年、長生きしました。
しかし、この両巨匠が活躍していた1730年代における、
二人の作風は、大きく、違っていました。
★テレマンが、この曲集を「Galanterie - Fugen」と、
名付けたように、第一世代の「ギャラント様式」の曲です。
大バッハの、複雑で、対位法を極めた音楽様式に対し、
簡潔で、分かりやすく、後のガルッピ、クリスチャン・バッハ、
エマニュエル・バッハ、ぺルゴレージ などへと、
つながっていく、音楽といえます。
★「ギャラント」は、フランス語で「楽しみを求める」が原義。
「ギャラント様式」は、すべてが明澄で、簡素で明確な和音、
同じリズムを続けるバス、優雅なセンチメンタリズム、
三和音と短いフレーズに基づく旋律、これらが主な特徴です。
★このテレマンの曲集は、現代のピアノ学習者や、
音楽愛好家にとっても、馴染みやすく、
楽しいうえ、質が高いので、お薦めです。
★楽譜は、Schott社( ED9015 )、
Schott piano classicsシリーズの、一つです。
★バッハの有名な「フルートソナタ」BWV 1031
Sonate Es-Dur fuer Floete und obligetes Cembalo の、
作者は、現在では、バッハの息子のカール・フィリップ・
エマヌエル・バッハ Carl・Philipp ・Emanuel・Bach(1714~1788)
と、されています。
その理由として、この曲の様式が、上記のテレマンの様式に、
とても近いためです。
★しかし、この「フルートソナタ」は、
大バッハの指導と手助けによって出来た、
あるいは、バッハが自分で、かなり手を入れていたのでは、
という説も、あります。
★私は、この作者が、息子なのか、大バッハであるか、
興味ありませんが、もし、息子の作品であるならば、
彼は、大バッハの様式を骨の髄まで、染み込ませ、
理解したうえで、次の世代の曲として、創造したと思います。
★この第2楽章「シチリアーナ」の和声と形式は、
大バッハの平均律クラヴィーア曲集 1巻 1番の前奏曲を、
そのまま、移してきたものである、と言えるからです。
先月、カワイアナリーゼ講座「前奏曲とは何か」で、
お話しました、「前奏曲様式」が、完全に消化されて、
このシチリアーナが、作られています。
★「最初の4小節の和音」を、要約し、
「ト短調」を「ト長調」に変えて、弾いてみてください。
平均律クラヴィーア曲集 1巻1番の「前奏曲」と、
同じ音楽が、出現します。
また、属音や、主音の保続音の位置、使われ方を見ますと、
大バッハの前奏曲様式を、そのまま用いています。
そして、これが、ショパンの「エチュード」へと、
つながっていくことが、読み取れると思います。
息子の作であるならば、彼の力量がうかがわれます。
★この曲に、大バッハが手を入れている、
あるいは、大バッハ自身の作品である可能性については?
★壮年時のバッハは、テレマンの曲を、当然、知っていたはずです。
バッハの音楽様式を、「ギャラント様式以前の、複雑で、
手の込んだ対位法」と、固定してとらえなければ、
“バッハの作品”であった、ということもいえます。
★一人の作曲家が、一つの様式でしか書けなかった、
ということはない、と思います。
まして、あの大バッハなのですから、当然、
なんなく、新しい様式でも、作曲できたはずです。
★そんなことを考えながら、わずか33小節のシチリアーナを、
演奏することは、とても楽しいことです。
33小節という長さは、インヴェンション1曲の長さに
よく似ています。
私は、作曲家探しには、ほとんど興味ありません。
その曲の内容がすばらしく、その素晴らしさを理解し、
楽しめれば、十分です。
★10月21日にカワイ・名古屋で「第1回 バッハ・インヴェンション
アナリーゼ講座」を開催いたします。
(野生山吹の実と龍のひげの花)
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲