■インヴェンションの難易度と、ご質問へのお答え■
09.11.6 中村洋子
★10月は、21日が名古屋、29日が表参道で、
「インヴェンション・アナリーゼ講座」を、開催いたしました。
★両講座で、お受けしました幾つかのご質問に、お答えいたします。
≪インヴェンション15曲(2声)を終わってから、
シンフォニア(3声)へと、進んだほうがいいのかどうか≫、
≪どういう順番で、レッスンをしたらいいのか、
難易度は、あるのかどうか・・・≫という質問です。
★1720年の日付がある
「フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小品集」に、
「インヴェンション&シンフォニア」の、
ほとんどの初稿が、入っています。
ここでのバッハの目的は、長男・フリーデマンに対する、
作曲技法の教育にあったことは、間違いありません
★1723年の日付がある「インヴェンション&シンフォニア」は、
この時点で、長男への教育という視点から、
さらに大きく、芸術作品へと、発展しているように、思えます。
★このため、この曲集は、鍵盤楽器の演奏技法を習得するうえでの、
「難易度」順には、全く書かれていません。
「フリーデマンバッハの曲集」も、インヴェンションとは、
別の配列ですが、これも、以前に、当ブログでご説明しましたように、
「難易度」とは無関係に、配置されています。
★「インヴェンション&シンフォニア」全30曲で、最も難しい曲は?
逆説的かもしれませんが、ずばり、≪2声のインヴェンション1番≫です。
★講座にご参加されました皆さまは、この私の説に、納得されると思います。
12月の講座は、最終回ですので、全曲を振り返り、
なぜ、「1番」が、そんなに難しいのか、お話いたします。
しかし、実際のレッスンで、何番から始めるか、
それは、大問題でしょう。
★私の方法は、次のようです。
先生が、なるべくたくさんのインヴェンションを、実際に、
心を込めて弾き、それを生徒に聴かせます。
もし、時間が足りないようでしたら、冒頭の数小節でも構いません。
★そして、生徒に、どれを弾きたいか、
その曲を、自分で選ばせるのです。
私の経験では、生徒が思いがけない曲を選んだことに、
驚いたことが、あります。
その理由をききますと、子供らしい直感に満ちた、
納得させられる答えが、あったことも多く、
そこで、インヴェンションについて、あるいは、バッハについて、
お話したり、バッハの他の作品を弾いたりします。
そして、レッスンがより、充実し、
確実に、バッハファンが増えます。
ということは、本当のクラシック音楽の理解者が生まれる、
ということです。
★これを実行するには、先生にも次のようなことが、
求められます。
バッハの大きな設計図、全30曲がどのような構想のもとで、
≪大きな一曲≫に成っているか、
各曲のアナリーゼ、特に、和声、対位法を理解し、
さらに、一番大切なこととして、
「バッハの音楽が大好きで、愛している」ということです。
★先生がもし、バッハを恐れている場合、
生徒は、敏感にそれを感じ取り、バッハを苦手としてしまいます。
生徒が選んだ曲のなかのパッセージや、モティーフが、
インヴェンションの他の曲のなかにも、たくさん、
散りばめられていることを、実際に弾きながら、
あっさりと、ご説明ください。
子供は、手品を見たように、喜ぶはずです。
その喜びが、興味につながります。
★そのようにすれば、何番から弾こうと、問題ないのです。
12月4日(金)の、「インヴェンション&シンフォニア15番」の
アナリーゼ講座では、バッハが考えた「全30曲の構成」を、
お話する予定です。
さらに、そこから導き出される、具体的な≪練習の曲順≫も、
いくつか、ご提案してみたいと、思います。
★「インヴェンション&シンフォニア15番」は、
この曲集の最後を飾るとともに、実は、平均律クラヴィーア曲集の、
1番、2番とも、密接な関係をもっています。
★極端な例かもしれませんが、インヴェンションやシンフォニアを、
全曲、レッスンし終える前に、平均律クラヴィーア曲集のうちの、
幾つかの曲に入ることも、十分に可能であると、
私は、思います。
★それについても、講座でお話いたしますが、
その利点は、インヴェンションが終わる前に、
生徒が、平均律クラヴィーア曲集の楽譜に、
触れることができる、ということなのです。
★いろいろな事情で、不幸にも、インヴェンションを練習し終える前に、
ピアノのレッスンそのものを、辞めてしまう、ということもあります。
しかし、平均律の楽譜が、家に在りさえすれば、
この類稀な、美しい曲に、触れることができるからです。
特に、≪インヴェンション≫は、「フリーデマンの小品集」では、
≪プレアンブルム(前奏曲)≫と、書かれていました。
★私の講座の受講者の方でも、「平均律は、難しいのでは・・・」と、
思われている方も、いらっしゃるようですが、
平均律のプレリュードだけでも、是非、弾いてみてください。
「難易度」は、シンフォニアと大差ない「宝石のような前奏曲」が、
ひしめいています。
その世界を、ご自分の指で、自分の楽器で味わうことができるのは、
どんなに、素晴らしいことでしょう。
★ショパンの、≪エチュード≫は、バッハの平均律クラヴィーア曲集の、
プレリュードの、全面的影響の下に、作曲されています。
★平均律クラヴィーア曲集は、前奏曲とフーガを、
セットで勉強しなくてはならない、という思い込みから、
ご自分を解き放ち、自由になり、平均律クラヴィーア曲集という
“大宇宙”を、少しでも味わってみる、というのが、
音楽を勉強する“醍醐味”ではないでしょうか。
★「難易度」の話に戻りますが、私にとっては、
≪インヴェンション1番≫と≪平均律クラヴィーア曲集1巻1番前奏曲≫が、
バッハ以降、250年間のクラシック音楽の、礎になった曲であることを、
思えば思うほど、“なんとも難しい曲である”と、思われてなりません。
★難易度は、その人その人にとって、すべて異なります。
答えになっていないと思われますが、その答えを見つけようする
努力が、一生続く音楽の勉強である、と思います。
(名古屋・亀末広:茶三昧、山本隆博:漆器)
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲
09.11.6 中村洋子
★10月は、21日が名古屋、29日が表参道で、
「インヴェンション・アナリーゼ講座」を、開催いたしました。
★両講座で、お受けしました幾つかのご質問に、お答えいたします。
≪インヴェンション15曲(2声)を終わってから、
シンフォニア(3声)へと、進んだほうがいいのかどうか≫、
≪どういう順番で、レッスンをしたらいいのか、
難易度は、あるのかどうか・・・≫という質問です。
★1720年の日付がある
「フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小品集」に、
「インヴェンション&シンフォニア」の、
ほとんどの初稿が、入っています。
ここでのバッハの目的は、長男・フリーデマンに対する、
作曲技法の教育にあったことは、間違いありません
★1723年の日付がある「インヴェンション&シンフォニア」は、
この時点で、長男への教育という視点から、
さらに大きく、芸術作品へと、発展しているように、思えます。
★このため、この曲集は、鍵盤楽器の演奏技法を習得するうえでの、
「難易度」順には、全く書かれていません。
「フリーデマンバッハの曲集」も、インヴェンションとは、
別の配列ですが、これも、以前に、当ブログでご説明しましたように、
「難易度」とは無関係に、配置されています。
★「インヴェンション&シンフォニア」全30曲で、最も難しい曲は?
逆説的かもしれませんが、ずばり、≪2声のインヴェンション1番≫です。
★講座にご参加されました皆さまは、この私の説に、納得されると思います。
12月の講座は、最終回ですので、全曲を振り返り、
なぜ、「1番」が、そんなに難しいのか、お話いたします。
しかし、実際のレッスンで、何番から始めるか、
それは、大問題でしょう。
★私の方法は、次のようです。
先生が、なるべくたくさんのインヴェンションを、実際に、
心を込めて弾き、それを生徒に聴かせます。
もし、時間が足りないようでしたら、冒頭の数小節でも構いません。
★そして、生徒に、どれを弾きたいか、
その曲を、自分で選ばせるのです。
私の経験では、生徒が思いがけない曲を選んだことに、
驚いたことが、あります。
その理由をききますと、子供らしい直感に満ちた、
納得させられる答えが、あったことも多く、
そこで、インヴェンションについて、あるいは、バッハについて、
お話したり、バッハの他の作品を弾いたりします。
そして、レッスンがより、充実し、
確実に、バッハファンが増えます。
ということは、本当のクラシック音楽の理解者が生まれる、
ということです。
★これを実行するには、先生にも次のようなことが、
求められます。
バッハの大きな設計図、全30曲がどのような構想のもとで、
≪大きな一曲≫に成っているか、
各曲のアナリーゼ、特に、和声、対位法を理解し、
さらに、一番大切なこととして、
「バッハの音楽が大好きで、愛している」ということです。
★先生がもし、バッハを恐れている場合、
生徒は、敏感にそれを感じ取り、バッハを苦手としてしまいます。
生徒が選んだ曲のなかのパッセージや、モティーフが、
インヴェンションの他の曲のなかにも、たくさん、
散りばめられていることを、実際に弾きながら、
あっさりと、ご説明ください。
子供は、手品を見たように、喜ぶはずです。
その喜びが、興味につながります。
★そのようにすれば、何番から弾こうと、問題ないのです。
12月4日(金)の、「インヴェンション&シンフォニア15番」の
アナリーゼ講座では、バッハが考えた「全30曲の構成」を、
お話する予定です。
さらに、そこから導き出される、具体的な≪練習の曲順≫も、
いくつか、ご提案してみたいと、思います。
★「インヴェンション&シンフォニア15番」は、
この曲集の最後を飾るとともに、実は、平均律クラヴィーア曲集の、
1番、2番とも、密接な関係をもっています。
★極端な例かもしれませんが、インヴェンションやシンフォニアを、
全曲、レッスンし終える前に、平均律クラヴィーア曲集のうちの、
幾つかの曲に入ることも、十分に可能であると、
私は、思います。
★それについても、講座でお話いたしますが、
その利点は、インヴェンションが終わる前に、
生徒が、平均律クラヴィーア曲集の楽譜に、
触れることができる、ということなのです。
★いろいろな事情で、不幸にも、インヴェンションを練習し終える前に、
ピアノのレッスンそのものを、辞めてしまう、ということもあります。
しかし、平均律の楽譜が、家に在りさえすれば、
この類稀な、美しい曲に、触れることができるからです。
特に、≪インヴェンション≫は、「フリーデマンの小品集」では、
≪プレアンブルム(前奏曲)≫と、書かれていました。
★私の講座の受講者の方でも、「平均律は、難しいのでは・・・」と、
思われている方も、いらっしゃるようですが、
平均律のプレリュードだけでも、是非、弾いてみてください。
「難易度」は、シンフォニアと大差ない「宝石のような前奏曲」が、
ひしめいています。
その世界を、ご自分の指で、自分の楽器で味わうことができるのは、
どんなに、素晴らしいことでしょう。
★ショパンの、≪エチュード≫は、バッハの平均律クラヴィーア曲集の、
プレリュードの、全面的影響の下に、作曲されています。
★平均律クラヴィーア曲集は、前奏曲とフーガを、
セットで勉強しなくてはならない、という思い込みから、
ご自分を解き放ち、自由になり、平均律クラヴィーア曲集という
“大宇宙”を、少しでも味わってみる、というのが、
音楽を勉強する“醍醐味”ではないでしょうか。
★「難易度」の話に戻りますが、私にとっては、
≪インヴェンション1番≫と≪平均律クラヴィーア曲集1巻1番前奏曲≫が、
バッハ以降、250年間のクラシック音楽の、礎になった曲であることを、
思えば思うほど、“なんとも難しい曲である”と、思われてなりません。
★難易度は、その人その人にとって、すべて異なります。
答えになっていないと思われますが、その答えを見つけようする
努力が、一生続く音楽の勉強である、と思います。
(名古屋・亀末広:茶三昧、山本隆博:漆器)
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲