■シンフォニア 9番での Edwin Fischer の 難しい Fingeringのもつ意味■
2011.9.21 中村洋子
★本日は、記録的な強い台風が日本を縦断し、大荒れの一日でした。
外出もできず、明後日23日 ( 祝日・金曜日) PM 2:00 から、
「横浜みなとみらい・カワイ」で、開講いたします
「 バッハ インヴェンション・アナリーゼ講座 」 の勉強で、過ごしました。
「 シンフォニア 9番 」 について、 Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー の校訂版は、 「 感動的な Klagelied ( 悲嘆の歌 ) 」 と評し、 左手 ( 下声 ) 1小節目 2拍 ( F ) から始まり、 2小節目 3拍の 「 C 」 まで続く半音階進行を 「 Passionsmotiv 」 ( キリスト受難のモティーフ ) と、しています。 ( へ → ホ → 変ホ → ニ → 変ニ → ハ ) 音ですが、 この 6つの音を、2つづつ分割しますと、 F → E 、 Es → D 、 Des → C という ≪ 2度音程モティーフの、畳みかけ ≫ と、なります。 「 2度音程 」 は、 Fischer フィッシャー に倣って名付けますと、 「 Klagemotiv 」 ( 嘆きのモティーフ ) と、呼んでいいと、思います。
その答えを解く 「 鍵 」 が、 Fischer フィッシャー 校訂版の、 「 Fingering 」 に、あるのです。 As → G ( 変イ → ト ) 音 の 8分音符を、 Fischer は、 「 5 5 」 と、 二音とも、 小指で演奏するよう、指定しています。 「 小指 薬指 」 で弾くのが、最も 「 弾き易い 」 「 指遣い 」 です。 「 5 5 」 は、とても弾き難い指遣いです。 それゆえ、Fischerの楽譜を、「 読み込めない 」 人たちは、 このような 「 指遣い 」 を、ひいては、 「 Fischer の楽譜 」 までを、非難の対象とするのです。 ≪ vollem Legato zu “ singen ”≫ ≪ “ sung in full legato ” ≫ ( フルレガートで、歌う ) で、 Largo のテンポで、 弾いてみてください。 一歩一歩よろけながら歩む、キリストの足取りもかくや・・・ という音型が、眼前に、現れてきます。
★ Johann Sebastian Bach バッハ ( 1685~1750 )
★上記の半音階は、 F → E → Es → D → Des → C
★ 9番シンフォニアは、この 「 2度音程 」 の motiv が、曲を支配しています。
★この 「 Klagemotiv 」 を、どう演奏すべきか?
★例えば、 13小節目上声 ( ソプラノ ) 4拍目の
★常識的にみますと、ここは 「 5 4 」 と、
★しかし、この箇所を、 Fischer の指遣いで、
★重い十字架を、痩身に背負いながら、刑場へと、
★まず 「 5 5」 指の Fingering で、その音型を体験し、
次に、各人の指の特性に合った、 「 指遣い 」 を、
探せばいいのです。
★これは、私が以前に、講座でお話ししました 「 暗譜の方法 」 とも、
深い関係が、あります。
★ Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー は、上声 ( ソプラノ ) の
上記 13小節に続く、 14小節の最後の音 「 As 変イ 」 から、
15小節の最初の音 「 G ト 」 にかけての
「 Klagemotiv 」 ( 嘆きのモティーフ ) の 2度音程も、
「 2 2 」 指 を、指示しています。
★人差指を、2回続けて使いますが、同じく
≪ vollem Legato zu “ singen ” ≫ で、弾くことにより、
「 思い足取り 」 が、 「 5 5 」 のときより、さらに、
「 深く 」 、表現できるのです。
★上記の Fingering は、ほんの一例です。
各小節にびっしり書き込まれた Fingering は、
一つ一つに、深い意味があります。
音で 「 思考する 」 とは、何なのか?
という問いに対する、明確な 「 答え 」 が、ここにあります。
そして、同時に 「 どう演奏したらよいか 」 にも、
直結しているのです。
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