音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■能「竹生島」を観る ■

2007-12-24 17:21:01 | ★旧・感動のCD、論文,演奏会など
2006/2/20(月)

★昨年暮れに、お能の小さな発表会で「竹生島」に参加させて頂きました。
一度本物を観ようと軽い気持ちで国立能楽堂の定例公演に出掛けました。
2月17日金曜日です。
お能の世界にも最近はスターが現れ、追っかけをする方もいらっしゃるようですが、この公演は、中堅の実力派がそろった素晴らしい公演でした。

 お能が終わった瞬間、観客席から「ホー」という溜息が漏れ、「よかったわね・・・」という感嘆の声が、お能の観巧者、あるいは初心者と見受けられるような方からも、自然に湧き上がっていました。

 この理由は一重に、能の演者(シテ、ワキ、ツレなど)、囃子方(笛、小鼓、大鼓、太鼓)、地謡(8人で構成)の三者が、「舞い」「音楽」「演劇」を、一つのまとまった芸術空間として創出させることに成功したからにほかなりません。
そのどの一つでも緊張感に欠けますと、たちまち、お能の求める世界が雲散霧消してしまいます。
特に、地謡が充実しているお能は質が高くなります。

 竹生島に祭られている弁財天の「天女の舞」や、竜神の「舞働」では、演者とともに、聴いている私たちが知らず知らずに体を動かし、共に舞っているかのような心地良さを味わいました。
お能の醍醐味はこれです。

 中入りの時に、社人(アイ)がワキに宝物を見せ、竹生島に伝わる神秘的な岩飛びをして見せますが、それを演じた茂山千之丞さん(1923年生)の科白の聞きやすさ、鍛え抜かれた立ち姿、振る舞いの美しさはまさに至芸でした。
日本語を喋ることが音楽そのものにほとんどなっています。日本語が本来もっている自然なリズム感を芸術にまで高めています。

 昨今のオリンピックのテーマ音楽のような日本語のリズムとはかけ離れ、イントネーションを無視し、英語をただ真似たような醜い日本語には耳を塞ぎたくなりますね。

 シテ(竜神)寺井 栄さん、ツレ(弁財天)坂井音晴さん、太鼓の徳田宗久さんは特に健闘されました。また、地謡には、わが師の浅見重好先生、藤波重孝先生が出演されていました。
 
 もちろん、茂山千之丞さんはスターです。
しかし、一部のスターに見られるようにあちこち、掛け持ちで忙しく、ここ一番の舞台に賭ける気迫に薄い場合も散見されるようです。
このように熱い舞台を観ますと、観客としても小雪混じりの冬空の中を、手をかじかませながらわざわざ出掛けた甲斐があるというものです。


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