■ピアノ独奏曲を作曲しました。Kempffの「Goldberg-Variationen」偉大な演奏■
2015.6.2 中村洋子
★5月末は、鹿児島県・屋久島近くの口永良部島で突如火山が噴火し、
首都圏も、二度にわたって大きな地震に見舞われ、
小笠原諸島でも、記録にないような深い震源での大地震が起きました。
穏やかな気持ちに、なかなかなれません。
★東京銀座の「山野楽器」クラシックCD売場で、
私の「無伴奏チェロ組曲全6曲」のSACD( Wolfgang Boettcher 演奏)が、
心のこもった紹介文を添えて、展示販売されています。
うれしいことです。
タワーレコード本店でも、ご紹介いただいているそうです。
★私は、これから出版します本の準備や、
新しくピアノ独奏曲の作曲などで、忙しい毎日でした。
★昨夜は夜中にふと、 Wilhelm Kempff ヴィルヘルム・ケンプ(1895~1991)
演奏の Bach 「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」を、聴きました。
楽譜を見ながら演奏をお聴きになりますと、冒頭の Thema である「Aria」で、
Bach の書いた装飾音を、 Kempffが大胆にカットしていることに、
驚かれるでしょう。
★これは、前回のブログでも書きましたように、
Kempff が考え抜いた結果、現代のピアノで演奏するためには、
「過剰となる」装飾音を省くことで、よけいに Bach の本質が
理解できるということなのです。
見事な演奏です。
★この曲を、カイザーリンク伯爵が不眠症対策にした、
とかいうお話は、戯言でしょう。
Bach の「Clavier Übung クラヴィーアユーブンク」の第4巻として、
生前に出版された、渾身の名曲です。
眠くなるどころか、 聴き惚れます。
★2008年から始めました Bach の
「Inventionen und Sinfonien インヴェンションとシンフォニア」、
「Wohltemperirte Clavier Ⅰ、Ⅱ 平均律クラヴィーア曲集第1、2巻」
の全曲アナリーゼ講座は、6月16日 (火)の「平均律2巻 5番 ニ長調 D-Dur」 、
7月14日 (火) 「平均律2巻12番 ヘ短調 f-Moll」のみを、残すことになりました。
★7年かけて達成しつつありますが、
私の希望はやはり、「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」と、
「Die Kunst der Fugue フーガの技法」を、どういう形になるか
分かりませんが、皆さまと一緒に勉強していきたい、ということです。
★「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」の
「Manuscript Autograph 自筆譜 」は、行方不明ですが、
幸い、 Bach 公認の生前出版された楽譜のfacsimileが、
存在しますので、それで勉強できます。
「Italienisches Konzert イタリア協奏曲」と同じです。
★「Die Kunst der Fuge フーガの技法」は、
「Manuscript Autograph 自筆譜 」が、残されています。
Bach が亡くなった直後に出版された「Die Kunst der Fuge」
初版譜とは、配列などが異なっています。
私はこの「Manuscript Autograph 自筆譜」で、勉強しますと、
初版譜より、こちらのほうに説得されてしまいます。
その点も、じっくりと探求したいと思います。
★今回作曲しましたピアノ独奏曲は、「Suite No.1 for piano solo」です。
7楽章形式の組曲です。
与謝蕪村の俳句を、各章に一句ずつ掲げました。
★これは、私が学生時代から愛読しています、
萩原朔太郎「郷愁の詩人与謝蕪村」という作品にある句から、
選び出しました。
★私が、Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー先生と、
一緒にSACDを出しました「無伴奏チェロ組曲1~6番」の姉妹編と
言えます。
Bach を7年間勉強してきましたご褒美かもしれませんが、
私なりに、満足した作品となりました。
★朔太郎の評論は、若い頃から何度も読み、
そのたびに、発見があります。
それが「名作」である理由でしょう。
朔太郎と蕪村、天才が天才を見るのです。
機会がございましたら、是非お読みください。
★ Kempff は、「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」の冒頭、
この変奏曲の主題となる「Aria」の装飾音をほとんどカットし、
2小節目上声の前打音も、弾いていません。
これは、 Bach 「 Inventio 1番 C-Dur 」を、
Bachの 「Manuscript Autograph facsimile 自筆譜 」 で、
勉強した人でしたら「なるほど!」と、
膝を打つことでしょう。
★彼はただ装飾音を省略するのでなく、深いアナリーゼを基に、
カットしているのです。
それによって、Ariaの骨格が隅々まで分かります。
Ariaのみならず、この曲全体の構造まで、
まるで、X線透視したかのように、
分かってくるのです。
★続く 「Variatio Ⅰ 第1変奏」は、二声 の曲なのですが、
Kempff の演奏では、四声に聴こえます。
くっきりと四声に聴こえます。
★「二声 の Inventio」が、本当は「四声」であるのと、同じ理由です。
さらに、「Goldberg-Variationen ゴルトベルク変奏曲」と、
「Inventionen und Sinfonien インヴェンションとシンフォニア」とが、
兄弟の曲であることまで、分かってくるのです。
それを教えてくれるのが、 この Kempff の偉大な演奏です。
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