音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■第8 回インヴェンション講座のゲストは、弦楽器奏者・シッケタンツさんです■

2009-02-17 18:25:12 | ■私のアナリーゼ講座■
■第8 回インヴェンション講座のゲストは、弦楽器奏者・シッケタンツさんです■
              09.2.17   中村洋子


★本日、第7 回「インヴェンション・アナリーゼ講座」を、開きました。

春のように明るい日差しでしたが、冷たい北風が吹き、本当に寒い日でした。

それにもかかわらず、ピアノ指導者の先生や、音楽愛好家の皆さまに、

たくさんお出かけいただきまして、とても、うれしく思っております。


★アンケートで「8 番のへ長調は、とても人気があるのですが、

7 番は内容も深く、どのように生徒に教えていいのか、悩んでいました。

この講座を聴いて、7 番が好きになりました」というご感想を、頂きました。

この講座を開いた甲斐があった、と喜んでおります。


★この7 番のシンフォニアは、「平均律クラヴィーア曲集」の

第1 巻から、第2 巻への“橋渡し役”を務める、重要な曲です。

第1 巻は、1722~23年ごろに出来、第2巻は、1744年ごろ完成しました。

「インヴェンションとシンフォニア」は、丁度その真ん中に位置します。

(バッハがインヴェンションの序文を書いたのは、1723年のことです)。

インヴェンションが、単なる学習用の小品集ではないことは、

ここからも、分かります。


★私の作曲家としての感慨ですが、制約がないまま、

長い曲を書くことは、それほど、困難なことではありません。

大バッハも、平均律の第1 巻で、長い曲、短い曲と、

彼のイマジネーションを広げ、心ゆくまで存分に、

闊達に、作曲しております。

そうしますと、作曲家のチャレンジ精神としては、こんどは、

制約された枠の中で、創造力を最大限に発揮したい、という

欲求が、起きてきます。


★そうした意欲のもとで、完成したのが「インヴェンション」です。

これは、「曲の長さ(ごく、少ない小節数)」と、

「声部(二声部と三声部に、限る)」という、

二つの制約の下で、作曲されています。

そして、その意図どおり、見事な成果、

バッハの最高の作品の一つとして、結実しているのです。

その後、バッハは、心置きなく自由自在に、持てる力を

すべて投入して、「平均律第2巻」を、作曲しました。


★本日の講座では、シンフォニアの7 番と、平均律1 巻、2 巻から、

各一曲ずつを選び、それらが相互に、どのような関連性をもっているか、

どのように、演奏に生かしていくか、についてお話しました。


★演奏への生かし方とは、反復進行(ゼクエンツ)の扱い方、

クライマックスへの、もって行き方、

緊迫した部分と、リラックスした部分の弾き分け方、などです。

さらに、バッハの和音がもつ「革新性」と、その「色彩」を、

演奏にどう生かすか、についてもお話いたしました。


★また、この7番のシンフォニアで使われている、

「半音進行」が、シューベルトや、リヒャルト・シュトラウスにまで、

強い影響を及ぼしている、という点についても、

資料と、実際にピアノで音を出して、ご説明しました。

7 番は、シンフォニア15 曲のちょうど、真ん中に位置する、

堂々とした、扇の要のような曲、といえましょう。


★インヴェンションの序文には、1723年の日付が書かれています。

「アンナ・マグダレーナ・バッハのためのクラヴィーア小品集」は、

1725年に、書き始められました。

同じ時期に、一方では、

一点一画を、ゆるがせにしないインヴェンション、

もう一方では、妻アンナの名を冠し、性格や編成がとりどりな、

多様な曲に満ちた、家庭音楽会にふさわしい小品集とが、

前後して、編まれたことになります。


★3 月24 日(火)開催の「第8 回インヴェンション講座」では、

この家庭的なバッハを、髣髴とさせる、

明るく、楽しい「インヴェンション8 番」と、

喜びに満ちた「シンフォニア8 番」を、取り上げます。

ライプチッヒ出身の、シッケタンツさんのヴァイオリンも交え、

バッハの家庭で演奏されたような、楽しい空間を、

どのように作っていくか、お話したいと思います。


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