ナワリヌイ8

出過ぎた杭は、どうなるか。
プーチンが恐れた反体制派の指導者ナワリヌイ氏のドキュメント。毒殺されかけて、ドイツに脱出。そこで支援者とネットを使って調査して、暗殺計画を世界に暴露。注目の中、自ら帰国して今も投獄。これがスパイ映画でなく現実なのが衝撃。こんな体制が大手を振って世界の強国としてふるまっているのが今だとは。
彼が捕まる前の遺言みたいなインタビューの言葉が残った。悪者がはびこるのは、善人が自分たちの力や強さを自覚せず、何もしないからです。
動かねば。

東京2020オリンピック side B 4

やっぱり…。
選手主体のSide Aからの巻き返しを期待したけどならず。大会を支えた人たちの姿という切り分けはよかったと思うけど、背広組の分量が多すぎて。現場で頑張ってる人たちを見せ、気持ちを語ってもらわな。森さんやバッハさんをいくら見せられても誰も共感しないって。誰の発注で誰に見せるために作ったのかよくわかる残念な作品。それこそ100年経って子孫たちがこれ見てどう思うのか

神は見返りを求める 8

調子こいてんじゃ、ねぇよ！
ムロツヨシが演じるお人好しのおっさんが、底辺youtuberを助ける。はじめは神扱いだったけど、センスの古さが災いして邪魔になり、逆にストーカーになってという話。ものすごく見ていてキツイ。でもそれは登場人物の行動やセリフのイヤなところが、どこか自分に重なるから、刺さるからだと思う。きれいごとじゃ生きていけない本音の連発に心が掻きむしられる１本。デートにはメチャメチャ向かないけど。

ベイビーブローカー 6

ハードル上がりすぎた？
大好きな是枝監督が韓国に渡り、勢いのあるかの地の俳優やスタッフと撮った作品。いい作品だった。でも心に残ったのは違和感だった。感情を揺さぶることに徹する韓国映画と、是枝作品の繊細な狙いがあまりマッチしてなかったような気がする。撮りたいものがあって、ではなく、韓国✕是枝、新しい！という企画書の目的が優先された感じ。そば職人とラーメン屋は違うもんな。

PLAN75 7

ばあちゃんに、電話したげよ。
少子高齢化対策のために、75歳以上には生死の選択権が与えられるという、少し未来の設定の物語。いろんな立場でその制度に関わり、いろんな選択をする人たちを淡々と描くことで、あなたならどうする？を問いかけてくる問題提起映画。親ならどうする？自分なら？答えはすぐにはでてこない。ただ感じたのはお年寄りの疎外感と寂しさ。やさしくしてあげなきゃ。

劇場版 おうちでキャノンボール2020 6

やれること、やれないこと。
男たちの憧れ！手練のAV監督たちがナンパして撮影した内容でポイントを競う、ゲスの極みゲーム「テレクラキャノンボール」これまでのシリーズではその道のプロの根性とテクに唸らされることも多かった。しかし今回は緊急事態宣言下でソーシャルディスタンスをとってという制限下での開催。さすがというアイデアもあったものの、やはり触れないエロのハードルは高すぎて。というか、反骨心は買うけど必要なことなのかどうか？家庭の問題を置いといて見に行った自分にも言いたい「なにやってんだ？お前」

峠 最後のサムライ 5

この尺で入るような人物ではないのよ。
司馬先生の原作は上中下3巻。幕末の動乱期、戦わないための策を説いた弱藩の家臣。人格はもちろんいろいろ事情はあったからだと思うけど、ほとんど描かれなかった。だからひたすらマザー・テレサのような平和主義と名言を繰り返す奇妙な説教ジジイに。時代の変化についていけてないのは、継之助ではなく映画の制作陣なのでは？

メタモルフォーゼの縁側 8

なんやろ、この心地よさ。
宮本信子と芦田愛菜がBLマンガを通じて育む友情物語。予想以上にすごく、よかった。宮本さんの婆さんはもちろんだけど、オドオドして自信のない庶民女子高生を演じた愛菜ちゃんの魅力。一番遠いところにいるおっさんでも共感するところはたくさんあったし、何よりどちらか一方でなく、両方が成長していくのが良かった。好きなものは時間も性別も超える。熱中する姿は何にででも美しい。始めるのに「もう年だから」なんてない。悪い人の出てこない物語にホッコリしながら、たくさん元気のもとを分けてもらった気がする。

FLEE 5

FREEではない。
アフガニスタンからの難民だった青年が、ずっと隠していた脱出や悲惨な生活、ゲイであることをカミングアウト。その証言をアニメで表現した異色のドキュメント。アニメってSFとか異世界とか、空想だから形にできないことの表現に使われることが多いけど、真逆の過酷すぎる現実を見せるために使ったのは非常に面白かった。ただ意図したことかもしれないけど、淡々とした告白になり、迫力や熱意といったテキスト外で伝わるものが希薄になり、退屈してしまった部分もあった。かといって再現ドラマでドギツいシーンを見せるのもしんどいよな。難しい。

はい、泳げません 5

いいえ、思てたんとちゃいます。
泳げない大学教授と、泳ぐことしかできない綾瀬はるかの物語と聞いていた。原作の高橋秀実さんはおもろい角度での軽妙なエッセイを書く人だから、気楽にコメディを見に行ったらちごたわ。大の男が泳げないというのはそんな壮大なエクスキューズが必要なほど異常なことのか？抱えたトラウマが大きすぎて引いてしまった。そんな主人公にいろいろ語る綾瀬はるかは水中の金八！別にこれで映画作らなくてええんちゃう？

東京2020オリンピック side A 4

まだ半分だからなんとも言えないけど。
河瀨直美監督による「いろいろあった」東京オリンピックの公式記録映画。このサイドは選手側にたったものだそうだけど、全編に流れているのは「アスリートも人間だ」「いろんな事情や問題あんねん」それはわかるけど、そこがメインなの？選手たちのその事情を乗り越えてまで頑張ってきた道筋がほぼないのは疑問。今はそれでもいいけど何十年も経って、未来の日本人がかつてあった東京オリンピックを振り返るために残す映像としてはどうなん？作家性と目的が合わないと思った

トップガン マーヴェリック 6

これぞハリウッド映画！
前作は36年前だから劇場では見てない。59歳になったトム・クルーズがアンチエイジングの極みと、最新の爽快感を見せつける作品。懐かしい音楽とバブルの香りがいっぱい。早送りでみたら10分くらいで終わるドラマだけど劇場でしっかり見たくなる映像の作り込みは見事だ。前作へのオマージュと同時に世代交代へのフリもあっていいなと思ってたら、最後は「代打オレ」かい！そこは違う形のカッコよさってないのかなぁ。