のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

葡萄畑を見下ろして飲むワインの美味しさよ(のらやま通信239/1410)

2016年04月27日 | 散歩漫歩

7月上旬、ナシの収穫・出荷前の気分転換にと30年来のパートナーと四万温泉へ。のんびりするのが目的。温泉で体が温まったら布団の中で読もうと数冊の本をカバンに詰めていたのですが、直行しても早く着きすぎるからと寄り道をしようと考えたところから少し旅の意味合いが変わってしまったようです。
まずは関越道に入らずに東北道を北上。足利のココ・ファーム・ワイナリーへ。知的障がい者たちのつくるブドウ畑ということで広く知られています。ブドウ畑のその急斜面にびっくり。30度以上の傾斜はありそうです。「施設概要」に“山の斜面を使って障がい者の機能訓練をしたい”というねらいが書いてありました。急斜面のブドウ畑を前にしたカフェで開墾当時の労苦や毎年の栽培作業の厳しさを思い浮かべワインでも。いえまだ旅の途中。
二日目。骨休めに来たのだからと午前中は温泉に入ったり布団にもぐったりでしたが、外は上天気。根っからの貧乏性が起きだして、子供たちとキャンプに出かけていた当時、気になっていた野反湖へドライブ。その途中で見つけた見事な薪の壁。薪を販売しているプロなのか薪が生活の必需品のやま人なのか、家庭用の薪を作っているにしては立派な薪小屋です。プロにしては動力薪割り機のような機械が見当たりません。斧一本が立てかけてあるだけでした。斧でこれだけの薪を割る労力と技には頭が下がります。わが家の曽祖父は昭和初期に新しい家を興したとき、薪を拾う山林を持っていませんでした。だから子孫が薪で困らないよう晩年は薪づくりに精を出し小屋一杯の薪を残してくれました。亡くなって20年余りたちますが、まだ薪小屋の隅に曽祖父が割った薪が残っているかもしれません。
三日目。向かうは長野県東御市のワイナリー。吾妻渓谷をどんどんさかのぼり鳥居峠を越えて菅平口を経て千曲川沿いの丘陵へというルート。学生時代から何度か鳥居峠を通ったはずですが、有名な嬬恋村のキャベツ畑を見たことがない。そこでちょいと寄り道「つまごいパノラマライン」へ入ると国道だけ走っていただけではみられなかった光景が広がっていました。高原すべてがキャベツで埋め尽くされています。ヤマトタケルがわが妻の恋しいことよと詠んだ故事から命名された地名にちなんで愛妻の丘という見晴らし台がありまして、若いカップルが和んでいました。われわれには、夏秋の半年で1年分を稼ぐ畑、しかも百馬力の大型トラクタを買えるだけ稼ぐ畑、理想的農業のひとつの形だよねーって、日常的感想のみ。
今回の夫婦旅のひとつの目的地は玉村豊雄さんの始めたヴィラデストガーデンファームアンドワイナリー。軽井沢と上田の間の丘陵にあるファームカフェです。「ブドウ畑の風景を見ながらそのブドウからつくられたワインを飲む。そんな田園のリゾートを信州の自宅の庭先に作りました。多くの人々の共感を得られればと願っています」こんなメッセージに共感して多くのお客さんが訪れていました。
1992年に栽培を始めて2014年には6ヘクタールを越え、さらに地元の役所の紹介で遊休農地を解消して近々10ヘクタール規模の経営になるとか。栽培面積の拡大に合わせてワイン醸造の研修所もつくって千曲川沿いの一帯をワインバレーにしようという構想もあるとカフェのスタッフから聞きました。先々にはカフェレストランだけでなく宿泊施設も整備して、心置きなくワインを楽しんでもらおうという計画もあるそうです。
『里山ビジネス』という新書で紹介されていて興味を持って出かけてみたのですが、想像以上にビジネスとして成功しているようです。なぜこんな不便でなにもないところへ人が訪れるのか。実は高速道路ICから車で10分ですから、そんな不便ではないのですが、近くの観光地に来たついでに立ち寄るようなところではない。わざわざ訪れることを目的にしなければならないところ。きっとそこに切った張ったような嘘がないからでしょう。オーナーが本気になって楽しんでいる様子が本物だからでしょう。帰路で立ち寄った柳生博さんの八ヶ岳倶楽部も観光地にあるという立地を除けば、オーナーのライフスタイルに共感できるものがあるというのが共通点でしょう。
農業も単に農産物を栽培するだけでなく加工、販売を加えた6次産業化、さらにグリーンツーリズムという観光機能も求められる時代です。観光とは文字通り『光り』を観ること。そこにキラリと光るなにかがないとただのお騒がせで終わってしまいます。さてさて、わが家の農業、柏市の農業はいかに。
(2014年10月)

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