のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

耕しし土の軽さよ春嵐

2013年02月24日 | 農のあれこれ
わが家の所在地の小字は「西の作」といいます
集落からみて西側の畑というような意味でしょうか
ところが西隣の地区からみれば東側に当たるわけでして
今日のような強い北西の風が吹きますと
西方の畑からすさまじい砂埃が風下の東側に襲い掛かってきます

年に一回あるかないかの砂埃で前が見えなくなるほどでした
わが家の門が風の通り道になっているようで
車に乗っていても出入りを躊躇してしまうくらいです

風の強さも以前よりも強くなっているうえ
立地条件から仕方がないとはいうものの
とてもこんな砂嵐の中では畑で仕事ができません

はてさて昔もこんな砂嵐があったのかと尋ねてみると
それほどではなかったようです
そのころは冬作といえばムギだったでしょうし
埃は立ちにくかったようです

ところがこのあたりは露地のホウレンソウやネギが代表的な冬作であり
収穫が終わるとそのまま放置されるか、すぐに耕しておきます
もともとは富士山が噴火してできた軽い火山灰土の下総台地
それを先人達が有機質を土に混ぜ土づくりをしてきました
今では機械であっという間に、場合によったら次の作付前にもう一度耕うん
さらさらの表土ですから少し強い風で舞いあげられるのも仕方ありません

耕作放棄して雑草が生えていればそんなことはないのですが
気候と作付け体系が合致してしまっての砂埃
まだ一生懸命、農業をしている証拠です
軽いのは“埃”で、“誇り”でないのはせめてもの救い?

春めきて眼に直なるは麦の畝(飯田蛇笏)

2013年02月23日 | 冬の梨畑
気温は冬のままですが、春の陽に促されて
12月にナシ畑に播種したライムギが存在感を増してきました

2週間前の2月11日はこんな感じ

                 

写真ではあまり変わっていないか

って、そんなことはどうでもよくて、今日の本題はこっち
“いよいよTPP交渉へ参加”

TPP自体は問題が多いようで慎重に検討しなければならないと思うのですが
農業が隠れ蓑にされているような報道に異議あり!

産業界全般では歓迎されているものの農業のみが反対していて
産業規模の小さな農業を犠牲にしてでも、あるいは納得させれば
日本全体としてはhappyな選択だというようなマスコミ報道です

おいおい、ですよ

確かに農業関係者の中には
貿易自由化されると大きな痛手を受けてしまうと主張している方々がいます
しかし、反対運動に駆り出されている農家の多くは白けているように見えます

そもそも兼業農家は自分が食べるぐらいの米は自分でつくるでしょうから
安価な米が外国から入ってきても関係ありません
米専業農家(農業事業者)はむしろ外国へ売りに行こうと考えるくらいですので
貿易自由化を歓迎しています

外圧がなくともすでに農業の再編は始まっています
産業としての農業ならば自由化は必然で
農業で食べていこうという農家は
いま急ピッチで規模を拡大し、法人化も検討しています

ほらね、TPPに参加しても日本の農業は大丈夫でしょう
っていうシナリオができているように思えます

そうなんです
日本農業は全然問題ありません
貿易自由化されても消費者が国産農産物を支持してくれるなら

そもそも貿易自由化=TPPではないはずです
貿易自由化交渉は多国間でやる必要はなく二国間でやればいいんです
お互いのメリット・デメリットを協議して
この分野は自由化をしないでおきましょうってやればいいんです
多国間で一気にしようとするから
なんでもかんでも自由化せざるを得なくなってしまうんです
農業を前面にだして何かの隠れ蓑にして
どさくさにまぎれてやってしまおうという魂胆ではなのでしょうか
TPPの本当のねらいは農業でないところにあるように思えてなりません

マスコミ報道は情報操作の手段に使われてきました
今回のTPPは農業以外の分野でも大きな課題を抱えているはずですが
ほとんど報道されず、考える機会が与えられていないように思います

アベノミクスにより株価が上がり
一見、国民が豊かになったような気分にさせていますが
貿易収支は赤字になり、ガソリン価格の上昇が続いています
やっぱり原発が必要だよねという雰囲気にさせるシナリオだともいわれます

原発事故以後の政策課題にエネルギー施策の再構築があると思うのですが
これもマスコミ報道ではほとんど前面に出てきていません

春めいているのは国民生活とはかけ離れた巨大な闇資本かもしれません

愛(うつく)しと思ふ吾妹(わぎも)を夢に見て起きて探るに無きがさぶしさ(万葉集)

2013年02月15日 | みのわプロジェクト
地ビールの色比べではありませぬ
昨年手をつけたものの後始末をつけなければなりませぬ
恥を忍んで申し上げます
ヒマワリ油の失敗の後始末です

               

右側が正常なヒマワリ油の色で
左側が昨年仲間たちと取り組んだプロジェクトでできたヒマワリ油の色
搾油してくれたNPOの方も経験のないことで原因はわからないとのこと
指にとって舐めてみるとカビ臭いような青臭いような

推測するに収穫時の種の扱いが悪かったのでないかと思います
つまり、収穫後、すぐに種を取りださずに放置しておいて
カビが生えたり種の品質を劣化させてしまい
しかも油の量を多く獲りたいということで
種の選別が甘くなってしまったのかもしれません

種の収穫期が稲刈り時と重なり作業時間がとれなかったうえに
初めての経験なのに適切なアドバイスもうけなかったのがそもそもの原因です
何事も手抜きをしてはいけないことの必然の報いです

食用にするわけですから
原因のはっきりしないものは口にするわけにはいきませぬ
ということで化粧瓶ではなくペットボトルと一斗缶に詰めて納品してもらいました

50リットル以上の油にはなったのですが、はてさてどうしましょ
ディーゼル燃料として使いましょうか
バイオ燃料です
転んでもただでは起きないというのか失敗は成功のもとというのか


“僕たちの失敗”といえばこんなこともありまして

                

材料の配分を間違えたシフォンケーキです
空気が入ってしまいました

欲だけで取組まぬよう自らを戒めるためにここに記録しておきます

山を見よ山に日は照る海を見よ海に日は照るいざ唇(くち)を君 <若山牧水>

2013年02月12日 | 散歩漫歩
利根川、手賀沼周辺には船戸や根戸など「戸」のつく地名が見られます
これは「津」と同じで「港」や「船着き場」「渡し」を意味するそうです

わが家のある「柳戸」もその一つ
むかしは“柳渡”だったといわれ
その由来は、岸辺に柳の木がうえられていたとか
柳のように細長い水路だったからとか考えられます

船着き場だった近くには9世紀の開創と伝えられる古刹があり
『柳戸の観音様』として親しまれてきました
昭和10年代までは毎年8月に『十日市』という市が開かれ
三里四方の村々から人を集めていたそうです

             

かつての水路は今、「観音谷」という名の谷津田になっています
谷津田にも春の日は差し込んでいます

粟稗にまづしくもなし草の庵(芭蕉)

2013年02月06日 | みのわプロジェクト
遊休農地を活用する方策を試みた昨年の箕輪プロジェクトでは
3aぐらいの土地でヒエを栽培しました

種を播き、株間を除草し、
収穫後は脱穀、風選別まで仲間たちがやってくれました
が、われわれができたのはここまで
手持ちの機械では脱ぷ(殻をとること/米でいうところの“脱穀”)ができません
もしそれができたとしても雑穀ご飯にするくらいが関の山
もっと幅広いヒエの利用方法はないものか…

いえ、実は話は逆でして、昨年春に食品関係の展示会で
雑穀を使った半調理加工品を作っている業者の方と知り合いました
しかも加工原料となる雑穀は休耕田で栽培しているというではありませんか
食品卸売業の方と農家の異業種協働プロジェクトといいます
さらに
もし雑穀を栽培してくれるなら国産原料として仕入れますよ
と声をかけてもらっていました
面白いじゃない
箕輪畑でヒエを作ってみようかということになったわけです

われわれができることはここまで、後は助けて
もし加工の原材料として使えそうなら
それに見合うだけの商品でかえしてください
というわけで殻付きヒエ54kgを木更津へ持ち込んできました主

その異業種協働プロジェクトは“木更津雑穀村”といいます

              

新聞の紹介記事があったのですが
すでにweb上では見られなくなっていますので以下に転載します

参考;朝日新聞記事(2011年10月17日)より抜粋
http://www.asahi.com/food/news/TKY201110170287.html
 雑穀の魅力に注目したのは、同市の食品卸業「グッチートレーディング」(川口吉彦社長)。ヒエやタカキビなどの雑穀は、栄養価が高く健康に良いと注目されているが、調理方法が限られ、一般家庭への普及にはまだ課題が多い、という。「雑穀をもっと普及させたい」と、考えていた時に出会ったのが、同市茅野の農家、小川均さん(48)。小川さんは、後継者がいないために増えていく休耕田を見ながら、何かできないか、と考えていた。「雑穀は体にいいし、面白そう。新しいものを作り、人が集まるようになれば、地域に活気も出る」
 小川さんは仲間の農家と、昨年からタカキビやアマランサスなど雑穀作りを始めた。初年度は約3千平方メートル、2年目の今年は約4千平方メートルの休耕田で試行錯誤しながら挑戦したが、台風やイノシシの被害もあり、初年度の収量は20キロにとどまった。今年はそれでも200キロは超えそうだという。
 一方、グッチートレーディングは、雑穀を半調理品に加工して、食卓に届ける方法を考案。雑穀を炊きあげた状態でパック詰めし、家庭ですぐに調理できるようにしたものや、雑穀を使ったパスタソースを開発。今後もスープやデザートなど、シリーズを増やしていくという。
 小川さんや川口社長らは「木更津雑穀村」として活動、消費者を招いた収穫祭も9日、現地の休耕田で開催した。川口社長は「『雑穀のおかずはこんなにおいしい』と知ってもらうことで、需要が自然に増え、それで生産量も増えればうれしい。そして木更津の生産現場で消費者と交流できれば、地域も活性化する」と期待する。(本田大次郎)


ヒエ持ち込み時に対応していただいたのは食品卸売業G社のHさん
本業は酒類卸のようですが
お酒を美味しく飲むには健康でなくてはならいないという考えから
雑穀の加工に取り組んでいるそうです

これまでに雑穀を使ったパスタソースなどを商品化していますが
最近商品化されたのが雑穀を練り込んだ『パティ』
さっそくバンズに挟んだハンバーガーをご馳走してくれました
白身魚のような食感でした

農商工連携事業に認定された加工場が年末にできあがり
これから本格的に生産販売したいという
その加工場スタッフの関わり方が興味深いものでした
一言でいえばパートさんですが
パート賃金の一部は雑穀商品購入のための割引で支払われる仕組み
従業時間に応じて割引率は3段階になっているんだとか
賃金の一部を現物支給にするという意味もあるのでしょうが
雑穀消費の拡大がねらいだとか

雑穀の商品化にあたって日常的に消費する食習慣がないことが最大の課題
国産の無化学肥料無化学農薬栽培による雑穀ということで
商品が高価になることもあるのでしょうが、
体に良いからと一度は手に取ってもらえても続かないといいます
割引券は日常的に雑穀を食べてもらえる呼び水になればという考え
雑穀料理教室もたびたび催しているようですが
消費拡大はまず身内からというわけです

遊休農地を活用しかつ健康的な食材を提供するという仕組みを構築しても
それを支えてくれる消費行動が伴わないという話
他でも聞いたことがありました
ナタネ油・ヒマワリ油を搾油しているNPOでも同じことを話していました

プロジェクト仲間の農家Oさんも紹介していただきました

Oさんはいわゆる中山間地の専業農家
周辺の耕作放棄水田は気になるだけでなく
獣害の温床になるという実害もあるといいます

雑穀の脱ぷは専門の脱ぷ機と循環式精米機の二つを使いこなすんだとか
米の十分の一にもならない大きさですからたいへんです
ある程度の面積をこなすとなると機械は不可欠ですから

Oさんは餅加工もされていて
加工部門の先生とわが家の加工のアドバイザーが同一人物だったことがわかり
Oさんとわが家はいわば兄弟弟子
これはこれは兄(あに)さんですか
世間は狭いですなぁ

雑穀の他に遊休地を使って搾油もやってみませんかと逆にお誘いしました
そのうち雑穀村と搾油NPOとわが家の協働プロジェクトが始ったりして
期待が広がる木更津行きでした

藁しべのくたびれ儲けの長者かな

2013年02月05日 | 今年の米づくり


季節外れの落穂拾いではありませぬ
去年10月の10年に一度と呼ばれた台風による大雨の後始末

冠水した田んぼに広がっていた稲わらが畦を超え
風下に吹き寄せられたどり着いたところが
わが家の田んぼというわけです

けっこうな面積に藁が堆積しているのですが
深いところで30cm近くも溜まったところもあって
そのまま耕運することもできず
田んぼが乾いてから機械で集めて持ち出そうと
待っているうちに年を越してしまいました

立春を過ぎたら雨や雪が定期的に降るので
なお藁を持ち出し難くなります
去年がそうでした
年末から寒中は大変寒い日が続いて
梅の開花も遅れるほどでしたが
立春を過ぎたとたんに温かくなりました
今年は寒のあける前から何となく不安定な気候配置で
これはもう人力の力業でやるしかないと
ちゃちゃちゃビレッジのスタッフにお手伝いをお願いしました

持ち出した後の始末を考えて
反転させてすこし乾かした藁を籾殻袋に詰め込んで
トラックまで運びあげてナシ畑に入れました
4,5人で半日ずつで5日もかかってしまいました
これで長者になれなければ
くたびれ儲けということでしょうか


大福を一つ頬張る日向ぼこ

2013年02月03日 | アグリママ
ただいま「かしわかあさん」新作開発中

年が明けてから米粉のシフォンケーキを道の駅直売所で販売しています



寒くて団子には手が出ないような日でも
お陰さまでシフォンケーキは手にとってもらえているようです

さらに餡子を自作している強みを生かして
ただいま大福に挑戦中
豆大福を(右側)は整形がまだまだで修行が必要
赤い色が鮮やかなイチゴ大福なら
近所のイチゴ屋さんから特上品を分けてもらって
美味しさで評価していただけるかも
近日中にお目見えします

もう少し暖かくなったらおはぎも店頭に並ぶ予定です
乞うご期待

大根引拍子にころり小僧かな≪一茶≫

2013年02月01日 | 農のあれこれ
2haの畑で年間100から150種類の露地野菜を栽培し
レストラン卸しと駅ナカで直売しているA農園を見学してきました

以前はネギ、大根、ほうれん草を市場出荷していましたが
2000年から自宅前で直売を開始
さらに就農する後継者のやる気の芽を潰したくないと
2006年に鉄道会社に働きかけて駅ナカ直売所をオープン
2009年よりはレストランチェーンにも野菜を納めるようになりました

駅ナカ直売所は
駅員さんに営業課の電話を聞きいたその日のうちに契約
1週間後にオープンしたという行動力
女性農業者のお手本となる母さんのど根性です

駅ナカ直売所ではお客さんに「お帰りなさい」と声をかけ
レストランチェーンとのお付き合いでもコミュニケーションが大事というAさん
小さな農家でも勇気とアイデアで楽しい農業ができることを体現しています