のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

北の大地にフロンティアの花が咲く その2(のらやま通信263/1710)

2016年08月18日 | 農のあれこれ
“ランドデザイナー”としての農家の可能性を探るため、6月下旬、二泊三日の北海道ガーデン街道ツアーに夫婦で参加してきました。先月の旭川・富良野編に続いて今月は十勝編。

 ガーデン街道4番目は“十勝千年の森”。地元の新聞社が環境貢献活動の一環として出資し、千年後の人類への遺産となる森をつくることを目標にした実験型のテーマガーデン。5つの庭があり、アースガーデンとメドウガーデンは2012年に英国のガーデンデザイン協会の大賞を国内で唯一受賞しています。また食への取り組みに力を入れ、ヤギを飼いヤギ乳のチーズを作ったり、奇跡のリンゴの木村秋則さんの指導によりリンゴ栽培に取り組んでいます。牧場跡地に作られたガーデン全体を把握するには滞在時間50分では短かすぎます。

二日目の最後、ガーデン街道5番目は“真鍋庭園”。個人の樹木生産者が樹木の育ち方を見せるための見本園から発展した庭園で、針葉樹(コニファー)専門としては日本初、日本最大の見本園だそうです。帯広市街地に近接した8ha以上の敷地に数千種の植物のコレクションがあり、植物園としての役割も果たしています。林業家として入植して以来、5世代にわたって作り上げてきたその時間の重厚さが伝わってくる木々のボリュームでした。
三日目の朝食はホテルではなく、帯広郊外の“紫竹ガーデン”でいただきました。園主の紫竹照葉さんは80代のおばあさん。ご主人を亡くした後の生きがいとして子供のころ遊んだ花いっぱいの野原を再生したいと60代からガーデンづくりに取り組みます。6haの畑を購入し、一本一本植物の苗を植えてきました。20年後の今、農薬を使わずに年間で2500種もの花が咲いて、まるでワイルドフラワーガーデンのようです。カフェでは紫竹さん自身により育てた野菜を自ら調理して何組もの団体客に朝食等を提供しています。ほんとにパワフルなおばあさんです。

ガーデン街道7番目は“六花の森”。北海道土産のお菓子マルセイバターサンドで有名な六花亭の工場に隣接した山野草の森で、六花亭の包装紙に描かれた「十勝六花」が実際に見られます。包み紙に採用したハマナシ等を描いた竜馬一族の坂本直行画伯の記念館をはじめ園内にはいくつもの美術館が点在し、アートと自然の調和を目指し社会貢献事業に熱心な六花亭の姿勢がうかがえます。企業メセナのひとつなんですが、まんまと工場直売作戦に乗せられてお土産購入タイムとなりましたとさ。

ガーデン街道最後は“十勝ヒルズ”。帯広を見下ろす丘の上に立地し、十勝の農と食を身近に感じさせるガーデンを目指しているそうです。それもそのはず、運営会社は地元の豆類商社で、会社のアンテナショップ的意味合いもあるようです。スタッフは総勢60名を越えるとか。とても個人事業者のレベルではありません。

8プラス1のオープンガーデンは景観も運営母体もそれぞれ個性的でした。特に個人の運営する庭園にはフロンティア精神あふれる思いに共感する部分が多かったように思います。ツクリモノではできない時間と人の思いがそこに詰まっていたからでしょう。帯広を開拓し神社の祭神にもなっている依田勉三を紹介するバスガイドの話も十勝愛に満ちていて圧巻でした。帯広交通のあのガイドさんの案内するツアーならまた参加してみたいなあ。結局最後は人ですね。
by mit

北の大地にフロンティアの花が咲く その1(のらやま通信262/1709)

2016年08月18日 | 農のあれこれ
北海道オホーツク沿岸から内陸に入った厳寒地でたった一人、14歳から生涯をかけてフラワーガーデン“陽殖園”づくりに取り組んでいる高橋武市さんが数年前の新聞に紹介されていました。福島の花木農家が個人所有の花木園を一般開放し、年間30万人以上の観光客を集めている「花見山公園」が思い出されました。地平をいかに使いこなすか。“ランドデザイナー”としての農家は農作物を生産するだけでなく、その土地の価値を引き出すためには時にはガーデン作りも選択肢の一つかもしれない。まずはガーデンづくりの現場を見てみようと、近年旅行業界で企画化された二泊三日の北海道ガーデン街道ツアーに6月下旬、夫婦で参加してきました。大雪~富良野~十勝を結ぶ250kmの街道沿いの8つのガーデンにラベンダー畑の“ファーム富田”を組み込んだ欲張りなツアーです。

一番目は旭川の“上野ファーム”。100年以上続く米農家の5代目上野砂由紀さんは、英国でのガーデニング研修を経て庭作りをはじめた北海道ガーデナーのカリスマ。当初、イングリッシュガーデンを再現することを目指すも、寒暖の差が激しく4ヶ月ものあいだ雪に閉ざされる北海道では無理と気づきます。そこで厳寒地でも育つ植物を見極め、生垣や壁を作らない開放的な庭「北海道ガーデン」を作り上げてきました。古い納屋を改装したNAYAcafeや宿根草の苗や海外のガーデングッズをそろえたガーデンショップも人気のようです。ガーデンを見下ろす射的山から見渡す旭川の田園景観も上野ファームならでは。

二番目に訪れた“大雪森のガーデン”は大雪山系を望む丘陵に広がる森の中に作られています。ガーデン街道のなかでもっとも新しいガーデンで、3年目の今年、ようやくガーデンらしくなってきたといいますが、3年でオープンガーデンができるのかともいえます。公的機関が上野砂由紀さんにプロデュースを依頼しNPOが管理するという地域おこしタイプのガーデン。

二日目は富良野へ。 “ファーム富田”はガーデン街道企画には含まれませんが、富良野の代名詞ラベンダー畑の先駆者として寄らねばなりますまい。産地として取り組んだ香料用原料向けのラベンダー栽培に失敗した後、ただ一軒だけ栽培を続け、再び地域全体が観光用の花畑として注目を集めるまでのサクセスストーリーは車中ガイドの出色のひとつ。ラベンダーはまだちらほら程度の咲き具合でしたが、最盛期の7月になると駐車場待ちの車が道を埋め、たどり着けないバスを途中で降りて園地まで歩き、挙句の果て滞在時間が10分しかないツアーもあったとか。6月中に来てよかった。園内はインバウンド(外国人観光客)で大賑わい。最近の道内観光客の8割はインバウンドというのもうなずけます。

ガーデン街道3番目は“風のガーデン”。脚本家の倉本聰さんが上野ガーデンを見て、新富良野プリンスホテルのゴルフ場跡地にガーデンづくりを上野さんに依頼。その打ち合わせの中から庭を舞台としたTVドラマの構想に発展したとか。クリエーターのコラボが結実したガーデンといえます。
(10月号へつづく   by mit)

静かなむらに従業員3800人のショッピングセンターがやってきた(のらやま通信261/1608)

2016年08月18日 | 散歩漫歩
どちらから?と問われたら「柏です。柏でも家の周りが田んぼと畑の田舎です」と答えます。田舎は田舎なりにこの10年ずいぶん変わりました。振り返ると道の駅しょうなん農産物直売所ができたこと(2001年)と40万都市柏市の農家になったこと(2005年吸収合併)はわが家の農業経営のターニングポイントでした。
 それまでもわが家の梨の販売については、お客様の紹介や送り先様がお客様になって下さるなどの形で直売シフトしていましたが、農産物直売所は自分の出したものがお客様に認められれば商品たりうるわけです。ばあちゃんが趣味で作っていた切花が墓参り需要に合致して売れる!自家用につくっていたインゲン、ミョウガ、切り干し大根がお金に換わる!わが家だけでなく仲間たちも創意工夫をし、ズッキーニ、花オクラ、ロマネスコなど面白野菜をつくってきました。
5年遅れて柏市内にもうひとつの農産物直売所「かしわで」がオープンしました。ふたつの直売所オープンから15年がたち、農家開設の直売所からインショップの地元野菜コーナーまで林立し、専業農家も直売にシフトせざるをえない時代になりました。
 地域の中で直売所の存在が当たり前となった今、直売所も環境の変化の対応に追われています。ひとつは大型化。来年度、我孫子市の農産物直売所「あびこん」が手賀沼湖畔の県の環境学習施設を改修して新たな直売所となります。もうひとつは、飲食サービスの提供。「あびこん」は移転に際してカフェを併設するそうです。先月「かしわで」にも農家レストラン「さんち家」がオープンしました。地元野菜をふんだんに使って農家のおかあさんが出汁から自前で作るビュッフェスタイルのレストランで評判は上々のようです。
40年間、柏の象徴であった百貨店そごう柏店がこの9月閉店となります。一方で郊外型の大型ショッピングセンターが次々とオープンしています。モラージュ柏、イオンモール柏、ららぽーと柏の葉、流山おおたかの森S・C、…。さらに 今年の4月には近くの国道16号線沿いにセブンパークアリオ柏がオープンしました。13万平方メートルの敷地にヨーカドーを中心にテナントが200店舗!従業員3800人!駐車場4000台!公園も併設しています。映画館、ボーリング場、カラオケ…、物販と飲食とレジャーとなんでもあって1日家族連れで過ごせるところ。4月25日のグランドオープンの日には開店前に3000人が並んだそうです。開業10日間で100万人突破。これはセブン&アイグループ史上最速の記録だということです。
道の駅しょうなん農産物直売所はどうするか?道の駅しょうなんは、2015年に国土交通省より地域活性化の拠点を形成する重点「道の駅」の候補となりました。地域活性化の拠点となる優れた企画の具体化に向け、地域での意欲的な取り組みが期待できるものとされます。
柏市の計画では『都市部と農村部を繋ぐエントランスパークとして整備し、地域の自然・人・農業にふれあい、学び、交流する拠点』と謳っています。直売所リニューアルのほかレストラン、体験農園、多目的広場、インフォメーションセンター等々、平成31年オープンを目標に検討が進められています。
市街化調製区域という都市計画決定、米の減反政策、ライフスタイルの変化による子供たちの流出などの要因がたまたま重なり50年ほど静かであったわがむらにも大きな波がやってきています。街のすぐ隣で、自然の風、鳥の声、虫の声、田畑を見やれば季節の移りかわりを五感で感じることができるということに価値があるなら、それを誰がどうやって作っていくのか。農業で生きていかねばならないとしたらどう農業で生き残っていけるか。街の人たちや外から人々を招き、その交流によって地域を活性化したいというのであれば、なによりそこに暮らすわれわれが生き生きと農的生活を楽しんでいなければなりません。そのうちに住みたいという人がきてくれるなら、こんなにありがたいことはありません。      (BY SACHI)