のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

まっすぐな歴史と誇り引き継いで(のらやま通信251/1510)

2016年04月28日 | 散歩漫歩

山の中腹に忽然と赤い大鳥居が現れました。全国の信者からの寄進で建てられたようです素足になり詔を受け、身も心も清めてご神体とのご対面です。何度も参詣しているという方に「ご利益はありますか」と聞くと「こうして毎年、参詣できることがありがたい」と。不謹慎なことを聞いてしまいました。
出羽三山の湯殿山神社での話です。山を下りた里に湯殿山総本寺大日坊というお寺があります。弘法大師の開創、出羽修験道の霊地で、徳川将軍家の祈願寺という歴史もあって、明治期の廃仏毀釈以前は日本で有数の規模を誇った寺院だったそうです。ここでは修行の究極の姿、即身仏・真如海上人を直接仰ぎ見ることができます。二十代から木の実などしか口にしない木食の行に入り、96歳で生身のまま土中に入定という説明も伺えました。
かつては「西の伊勢参り、東の奥参り」が一対の人生儀礼のひとつだったそうですが、“他言無用、言わず語らずの山”といわれ、今日でも厳しい戒律が生きているようです。今年から地元の二つの講の役員を務めることになり、そういえば明治42年生まれの祖父が地元の八日講(出羽三山講)の最後の役員をしていたと思いだし、その足跡を垣間見ようと7月、山形県庄内地方へいつものように突撃夫婦旅。
庄内といえば、だだちゃ豆を代表とする“在来作物”。現在も50種類以上が受け継がれ栽培されているそうです。イタリアンの奥田シェフの活躍で知られるようになりました。鶴岡出身の藤沢周平の時代小説でも焼き畑農法で作られる藤沢カブや民田ナスなど、山海里の恵みが数多く取り上げられています。こういった食文化が評価され、鶴岡市が昨年、日本で初めてユネスコ創造都市ネットワークに加盟認可されています。これを機にグリーン・ツーリズムを通じたまちづくりを一層進めるとのこと。
鶴岡の街から日本海に出る湯野浜海岸の入り口におしゃれな農産物直売所がありました。店内がとても明るいので見上げると、農業用鉄骨ハウスをそのまま利用していました(写真)。もともと作物が健康に育つように作られた施設です。冬は暖かく、夏涼しい、しかも明るい。農産物直売所というとプレハブやログハウス風が多いのですが、これはいい着想です。
店内には時節柄、色とりどりのミニトマトのほかに、ジュースやケチャップ、カレーなど、トマトを原材料とした加工品がたくさん陳列されています。自前の加工場も持っているといいます。聞けば七年前に土建業から新規参入した事業所とか。近くの砂丘の中の畑を大規模に経営。トマトの他、特産のメロン、イチゴ、キャベツ、ナス、エダマメなど13種もの野菜を作付け、土づくりに力を入れ、差別化を図ろうとしています。レストランも持ち、加工品はネット販売で活路を見出そうとしています。成功事例として紹介されているようですが、本当の評価はこれからかもしれません。互いに頑張りましょう。
庄内には、城のあった鶴岡と北前船で栄えた酒田の二つの街があります。片や譜代大名酒井家が領民との信頼を深めながら江戸期一貫して治め、片や「本間様には及びもせぬが、せめてなりたやお殿様」と歌に詠まれるほど栄華を誇り、防風林や灌漑事業に貢献した日本最大の地主本間家の本拠地。朝ドラ<おしん>で有名になった酒田の山居倉庫、クラゲ展示で名を馳せる加茂水族館、時代小説ファン垂涎の藤沢周平記念館、もちろん出羽三山の羽黒山など、他にも見どころいっぱい。落ち着きの中にも自信と活力があふれている感じです。時間の経過に耐えたものはそのまちに風格を与え、まちに暮らすことの誇りに通じる。こんな想いを再認識した旅でした。         (by mit)

(2015年10月)

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