のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

北の大地にフロンティアの花が咲く その1(のらやま通信262/1709)

2016年08月18日 | 農のあれこれ
北海道オホーツク沿岸から内陸に入った厳寒地でたった一人、14歳から生涯をかけてフラワーガーデン“陽殖園”づくりに取り組んでいる高橋武市さんが数年前の新聞に紹介されていました。福島の花木農家が個人所有の花木園を一般開放し、年間30万人以上の観光客を集めている「花見山公園」が思い出されました。地平をいかに使いこなすか。“ランドデザイナー”としての農家は農作物を生産するだけでなく、その土地の価値を引き出すためには時にはガーデン作りも選択肢の一つかもしれない。まずはガーデンづくりの現場を見てみようと、近年旅行業界で企画化された二泊三日の北海道ガーデン街道ツアーに6月下旬、夫婦で参加してきました。大雪~富良野~十勝を結ぶ250kmの街道沿いの8つのガーデンにラベンダー畑の“ファーム富田”を組み込んだ欲張りなツアーです。

一番目は旭川の“上野ファーム”。100年以上続く米農家の5代目上野砂由紀さんは、英国でのガーデニング研修を経て庭作りをはじめた北海道ガーデナーのカリスマ。当初、イングリッシュガーデンを再現することを目指すも、寒暖の差が激しく4ヶ月ものあいだ雪に閉ざされる北海道では無理と気づきます。そこで厳寒地でも育つ植物を見極め、生垣や壁を作らない開放的な庭「北海道ガーデン」を作り上げてきました。古い納屋を改装したNAYAcafeや宿根草の苗や海外のガーデングッズをそろえたガーデンショップも人気のようです。ガーデンを見下ろす射的山から見渡す旭川の田園景観も上野ファームならでは。

二番目に訪れた“大雪森のガーデン”は大雪山系を望む丘陵に広がる森の中に作られています。ガーデン街道のなかでもっとも新しいガーデンで、3年目の今年、ようやくガーデンらしくなってきたといいますが、3年でオープンガーデンができるのかともいえます。公的機関が上野砂由紀さんにプロデュースを依頼しNPOが管理するという地域おこしタイプのガーデン。

二日目は富良野へ。 “ファーム富田”はガーデン街道企画には含まれませんが、富良野の代名詞ラベンダー畑の先駆者として寄らねばなりますまい。産地として取り組んだ香料用原料向けのラベンダー栽培に失敗した後、ただ一軒だけ栽培を続け、再び地域全体が観光用の花畑として注目を集めるまでのサクセスストーリーは車中ガイドの出色のひとつ。ラベンダーはまだちらほら程度の咲き具合でしたが、最盛期の7月になると駐車場待ちの車が道を埋め、たどり着けないバスを途中で降りて園地まで歩き、挙句の果て滞在時間が10分しかないツアーもあったとか。6月中に来てよかった。園内はインバウンド(外国人観光客)で大賑わい。最近の道内観光客の8割はインバウンドというのもうなずけます。

ガーデン街道3番目は“風のガーデン”。脚本家の倉本聰さんが上野ガーデンを見て、新富良野プリンスホテルのゴルフ場跡地にガーデンづくりを上野さんに依頼。その打ち合わせの中から庭を舞台としたTVドラマの構想に発展したとか。クリエーターのコラボが結実したガーデンといえます。
(10月号へつづく   by mit)

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