のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

炉ばなしにのればいささか鼻なえる

2006年11月28日 | 梨の研修
昨日、本日と続けてナシ生産者の視察を受け入れました。昨日は東京都下から、今日は山梨の生産者団体がお出でいただきました。

わが家の属する沼南果樹組合はナシ業界では減農薬栽培の先進地としてちょっと知られた存在。そこで、ここ7、8年は毎年全国から視察を受け入れてきました。多い年などは年間に10件ぐらいも受け入れたこともあります。最近は少なくなり、今年はこの2件で終わると思います。

平成4年から組合研究部で検討、試験を重ねてきて、ある程度の減農薬化の成果を上げてきましたが、ここ数年は研究部だけでなく組合全体へ波及させることに活動の重点を移しています。来シーズンまでには組合員全員が、農水省の環境に優しい農業実践者を認証する制度「エコファーマー」に登録することを目標としています。

ただ、減農薬化としては新たな展開が少ないものですから、視察に来られてもこれまでの経過ぐらいしか説明できず、申し訳なく思っています。

わざわざ視察に来られるわけですから問題意識の高い産地ばかりです。自分達の成果を持参して、ある意味「受けて立つ」みたいな他流試合的な雰囲気になることもあります。「まだまだ」って押し返すこともあるのですが、最近は「参った」「恐れ入りました」「これだけ進んでいるならわざわざお出でいただなくとも…」って思わせるだけの減農薬化の実績を積んでいる産地が多くなったような気がします。もちろん生産環境がそれぞれ違うわけですから勝った負けたはありません。様々に情報交換ができる「他流試合」は歓迎です。

他産地との「他流試合」でまだ負けたことのないことがあります。それは組合員の平均年齢。お出でになる産地の多くは60歳代が中心であるのに、沼南果樹組合は50歳ぐらいだと話すと皆さんびっくりして帰られます。

視察に行ったり受けたりすることで様々な刺激を受けます。さあ頑張ろうという気にさせられます。だからまた来年も打診があったらまた受け入れることになるのでしょうねえ。

隙入らん彷徨ふ枯れ葉ガラス越し

2006年11月14日 | 梨の研修
そのおしゃれなレストランは「ベーカリーレストラン」と銘打っていて、焼きたてパンの食べ放題を売りにしていました。店内は女性たちでいっぱいになっていました。大きな窓の外では強い南風が吹いていました。


そのレストランでおなかをいっぱいにしたところで、午後から県農業総合研究センターで行われた「ちばエコなし」の研修会に参加してきました。県では「ちばエコ農産物」という認証制度を設け、環境に優しい農業を推進していますが、「なし」ではわが家も含めて7つの生産者・機関を数えるに留まっています。そのてこ入れに研修会を実施したのですが、期待ほど生産者は集まらなかった印象です。

周辺環境に与える負荷が少なくなる、経費的にも身体的にも負担が軽減される、もちろん有利に販売できる、と利点は挙げられるのですが、なにより農薬を使ったナシづくりを前提にした生産者にとっては技術的な不安が大きいのかもしれません。指導研究機関でもまだ減農薬化に取り組んでいる生産者の事例を調査している段階で、栽培技術が確立しているとはいえません。認証生産者間の情報交流も必要かと思います。

質疑では、害虫のシンクイムシ類に対する性フェロモン剤の使い方が話題となりました。幼虫が果実に被害を与えることから交尾を阻害させる性フェロモン剤を設置することで被害を抑制しようという生物農薬ですが、高価な上にその効果も目に見えない。理想をいえば、人間に無害のこの農薬を使うことにより収穫期の殺虫剤を抜けることですが、実際は、わが家も研修会で事例発表した生産者も収穫期に殺虫剤を散布しています。まだまだ検討途上の資材といえるかもしれません。

(後日、わが家に視察に来られた山梨の産地では、フェロモン剤をしっかり使いこなされていて、収穫期に殺虫剤を使わない散布体系を確立されているようです。地域によって環境が異なるとはいえ、井の中の蛙状態であることを再認識させられました)

農薬を使用するという点では、「ちばエコ」の認証を受けたからといって必ずしも化学物質の付着していない「安全・安心のなし」になるわけではありません。減農薬化の過程で生産者自身が体験し、考え、試みること。そして、それを発信することにより「物語のあるなし」になる。その物語に共感していただいたお客様と信頼関係ができる。そういうことが目指すべきことではないかと考えています。