のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

新緑登場

2006年02月28日 | ネイチャースケッチ
今にも雪が降ってきそうな一日でした。それでも梅は一輪一輪花が増えていき、沈丁花のつぼみも膨らんできています。隣のアジサイの芽を被っていた皮が破れ、新しい葉が顔を出していました。その新緑は曇天のもとでも鮮やかに見えました。

桜の開花予想が報道されましたが、平年並みの3月末前後のようです。ナシは桜に遅れること、1週間から10日。あとひと月‥‥。

みんな大好きな食品添加物

2006年02月27日 | アグリママ
『食品の裏側』安部司、東洋経済新報社、2005、1,400円+税。今、売れているようです。新聞広告によれば「15万部突破!」とか。

先日からわが家の母が「やっぱり丸大豆しょうゆでよかった」とか「コンビニのおにぎりも食べられなくなってしまう」とか「もう明太子は買うのよそう」とか、さかんに騒いでいました。この本を読んでのことのようです。

1リットル1,000円の丸大豆しょうゆの原料が大豆、小麦、塩のみであるのに、1リットル198円の新式醸造しょうゆは7種類も8種類もの添加物が入っている「しょうゆ風調味料」なんだそうです。コンビニおにぎりの食品表示をみると3種類の添加物が書かれているそうですが、添加物には「一括表示」という抜け道があって、実際には少なく見積もっても6種類、多ければ10種類以上にものなるとか。

著者は食品添加物の元トップセールスマンで、いってみれば食品製造の舞台裏を内部告発したもの。世の中にはむやみに恐怖心を起こさせるものがよくあります。しかし、この本の中の「消費者は被害者か」という一節が問題提起している内容は真摯に受け止める必要があるなあと考えさせられました。

「しかし、だからといって添加物は完全に悪かというとそうではありません。私たちは多かれ少なかれ、添加物の恩恵をきちんと受けているからです。」添加物を使えば製造メーカーの利益は上がる。売るスーパーだって安価な食品を仕入れれば目玉商品として売り上げが伸びる。消費者だって見た目がキレイで、おいしくて、便利で、なかなか腐らないものが安く買える。「一見、誰も間違ってはいない。どんな法も犯していない正しい経済活動です。」問題は食品添加物にまつわる現状の情報公開がされていないことだと著者はいいます。


今朝の新聞に世界人口65億人突破という記事が載っていました。少し前なら食料不足が問題だというような論調も付随してありましたが、最近は食料問題は大きく取り上げられないようです。なぜなら、ここのところ食料生産能力が高まり、人件費の安い中国産よりも安く生産された食料が出回っていると今朝のラジオで話題になっていました。当然、先日話題にした遺伝子組み換え作物も関わる話なのでしょうが‥‥。


食品添加物も遺伝子組み換え作物も農薬も悪者としてはいけないのかもしれません。それを選択するかしないか、消費者が判断するだけのことなのでしょう。できるだけ選択、判断できるよう賢くなりたいものです。

梅開花

2006年02月26日 | ネイチャースケッチ
水戸で梅が開花したというのでわが家の梅もどうかと見回してみたら、数輪開きだしていました。紅梅です。

ナシの剪定作業もいよいよ猶予がなくなってきました。まだ50a以上も残っています。日中の時間が長くなったのでこれまでよりも進むのですが、今日も雨ですし‥‥。それに果樹組合の役職を仰せつかったものですから、さてどれだけできるか、ナシの開花と競争です。

理科美術展

2006年02月24日 | ネイチャースケッチ
ふたたび、デザイナーAさんの話。先日うかがった時、「理科美術展2005」なるパンフレットをいただきました。昨年秋に資料画・標本画の画家たちによる作品の展覧会が行われたのだそうです。

理科美術?はて?資料画・標本画とはなんぞや、です。パンフレットによれば「観賞用のペン画、リトグラフィーとは異なり、あくまでも学問的、科学的な説明の目的に即して描かれた特別の表現機能をもった画である」といいます。いやこういう説明よりもそのもの自体を見れば一目瞭然です。

百科事典や動植物図鑑、児童用学習図鑑などに掲載されていた動植物の細密画や天文、宇宙、気象や生態を紹介する図、過去や未来の世界予想図、乗り物や機械の図解など、みなさん、一度は目にしているでしょう。『原色牧野植物大図鑑』で描かれている画といえばおわかりいただけるでしょうか。パンフレットには子供のころに昆虫図鑑や魚図鑑で幾度も見返し慣れ親しんだ画が並んでいました。明るい未来予想図から21世紀になったらこんな世界になるんだなんて想った子供のころを思い出し、懐かしくさせられました。

こういう資料画・標本画を描く画家たちの集まりが理科美術協会と呼び、Aさんもなんとその一人というのです。40数年の実績を持つ大御所から新進気鋭の若手まで展覧会に参加したメンバーは22人。中には兄弟がいたり親子もいたりで、これぐらいの人たちによって支えられている狭い世界といえます。40,50代の中堅の画家が少ないのにも気がつきます。画が写真やCGによって代わったり、学術図鑑などの出版そのものが少なくなったためといいます。しかし、絵画と科学的知識と視点を統合する表現世界として世界から見直されつつもあるそうです。日本の伝統的お家芸?!。

写真左側がAさんの作品。テントウムシ(ナミテントウ)の斑紋変異。数千匹!のナミテントウを実際に観察し、背中の模様をいくつかのパターンに類別して描いたそうです。写真やCGでは表現できない手作業の世界です。

写真の右側はAKさんの里山の鳥瞰図。里山の風景を描き続けることがライフワークとか。里山保全運動にも積極的に関わっていきたいとパンフレットにありました。Aさんのビオトープづくりといい、ただ画を描いているだけでなく生活と一体となった仕事ぶりに感心させられます。

ぼかし6日目

2006年02月23日 | 今年の納得米づくり
17日に積み込んだぼかし肥。しばらく温度が上がらず心配していましたら、昨日あたりから急上昇。昨日の午後には46℃。今朝には51℃まで上がっています。コンテナには水滴がつき、有機質の表面にはうっすら白い発酵菌がついているように見えます。

このまま温度が落ちるまで発酵菌におまかせ。ちょっと楽し過ぎかな。

春一番?

2006年02月22日 | 雲図鑑
暖かい日でした。南風が吹き、青い空に雲が流れていました。発表がなかったようなので、風力が規定値以上にならなかったのでしょうか。個人的には春一番でした。

去年は2月15日にナシ畑でテントウムシを確認できたのですが、今年はまだ見かけません。それだけ寒いのでしょうねえ。

庭のビオトープ

2006年02月21日 | ネイチャースケッチ
牛久市の知り合いのデザイナーAさんのお宅でビオトープを見せてもらいました。以前のお宅でも小さなビオトープシステムを作られており、それなりに完成度の高いものでしたので感動したのですが、新居のそれは全体で50坪もある広さのものでした。

          

ビオトープの中心は池で、一番大きなブルーシートを底に引いてあるとか。水深はもっともあるところで80cmぐらい。底には砂をひき、正面の岩を積んだところにはポンプを設置して、自然ろ過かせて水を循環させていました。カワニナもいっぱい見られ、タナゴなどは個体数が増えすぎて、元いた川に放流しなければと話していました。クヌギの幼木にも昨年夏にはカブトムシがきたそうです。

          

息子さんの要望で、今年は池からの排水路沿いに田んぼを作りたいということでした。周辺の環境にも恵まれているとはいえ、まだ作り始めて1年半で生態系が根付いているようです。これからの充実が楽しみです。

GMと原子力

2006年02月20日 | 農のあれこれ
GMといってもゼネラルモータースではありません。遺伝子組み換えのこと。最近の新聞でGM作物の記事(朝日新聞060207-15p)と原子力発電の広告(朝日新聞060219 be on sunday 6p)が相次いで掲載されていました。

遺伝し組み換え作物とは、ある生物がもつ有用な遺伝子を別の改良しようとする生物のDNA配列に組み込んだ作物。たとえば、除草剤を散布されても枯れない大豆。作物以外の雑草だけを選択して枯らす除草剤により省力化、コスト削減を図ることができます。害虫抵抗性作物ができれば殺虫剤の使用を削減でき、砂漠でも育つ作物ができれば緑化や食料増産をもたらすといいます。逆に、害虫抵抗性作物により、より抵抗力の強い害虫を登場させるリスクがあるといわれます。また、種子を開発した大企業に全世界の食料が支配される可能性もあると指摘されています。

国内では7~8割の人が安全性への不安などからGM作物を食べたくないといわれていますが、国内で消費される大豆の6割はGM大豆という試算があるそうです。また、米国から輸入した種子にはGM品種が混じっていて「意図せずに」GMと非GMを混入、交雑する可能性があるともいわれます。実際、昨年2月には千葉などの港周辺の野生の菜種からGM品種が見つかったという報道もありました。有機肥料として広く流通している菜種粕にも当然混入されているともいわれます。


原子力発電の広告記事では、国際環境保護団体グリーンピースの共同創設メンバーで、原子力エネルギー反対の立場から推進に変わった方が登場。環境への負荷を減らすことも大事だが、世界中のエネルギー事情も満たさなければならない。非寛容な環境保護運動がCO2削減にブレーキをかけている。エコロジーは宗教でも、左翼も右翼もない。科学や論理、常識にのっとった「中道」だけが環境を守り、持続可能な社会をつくるといいます。

確かに原子力エネルギーの見直しが世界的に始まっているようです。マスコミも政治家もみんなで原子力エネルギーについてもっと議論すべきかもしれません。しかし、唯一の原爆被爆国民であることのアレルギーや原発廃棄物の負の遺産に対する不安も無視できないでしょう。


GM作物も原子力エネルギーも、現実では意志に関わらずその恩恵を享受していながら単なる不安から拒否するのはやはり矛盾しているでしょうか。

ものごとにはメリット、デメリットの両面があるのは当たり前。メリットが上回れば優先的に選択すべきと考えます。しかし、GM作物なら大規模な種子会社により食料が支配されるかもしれない。原子力エネルギーなら廃棄物を数百年間も管理し続けなければならない。そんな大きな仕組みを人の力で制御できるのだろうか。どちらにもメリット/デメリット問題以外にそんな不安が共通してあるように思います。

昨日の「ジャンケン文明」ならどう解決できるのでしょうか。

ORでなくAND

2006年02月19日 | 農のあれこれ
「共存のための文明論」という宣伝コピーに釣られて『ジャンケン文明論』(李御寧、新潮新書111、05.4)を手に取りました。

西洋型の近代文明は二項対立の「コイン投げ文明」であって衝突を生み、弱肉強食、先制攻撃優勢の社会を作ってきたが、東洋には誰も勝たない誰も負けない、相互依存、相互牽制の「三すくみ」モデルが生きている。自然には絶対的に強い支配者はいない。互いに持ちつ持たれつの共生関係で結ばれて、相補と調和を保っているという自然観がある。いわば「ジャンケン文明」。春は夏に、夏は秋に、秋は冬に、冬は春に負けて季節はめぐる。陰と陽は対立を超えて補完しあう。そこには勝ちも負けもない。

たとえば、二宮金次郎の「勤労」「分度」「推譲」の報徳仕法。「勤労」とは金を儲けて豊かになろうとする欲望で、「天道」とは対をなしている人道。「分度」とは欲望の限界を知り、コントロールする天道と人道の融合。「推譲」は蓄えた富の余分を世のためにつくし、他とわけあうこと。これらは互いに相補関係をなし、バランスをとりながら循環する。富の欲望は「分度」によって蓄積からシェアにかわっていく。万物は個ではなく、相互関係によって意味を持つ。差異(相違)は葛藤対立ではなく、変化と融合を通じて「生々発展」する物になる。それが土や農作物や人の中にある「徳」‥。実際、彼の実践は多くの村や人々を豊かにした。

さらに著者は、島国で縮み志向の日本はグー、大陸と島の両意性を持つ韓半島はチョキ、地理的広がりと古来からの寛容の徳から中国をパーと読み替えて、3国がイデオロギーを超えて共存する壮大なジャンケン関係の構築を提示。そのためには、他者に対して常に弱さがあることが大切という、ジャンケンの発想が不可欠といいます。


この新書の本文は次から次へと著者の博識が展開され理解しにくいところもありますが、常に三すくみ状態の農業の現場に身を置いているせいか、なんとなく納得させられてしまいました。

三寒四温

2006年02月18日 | 今年の梨づくり
立春以降、4月並みの暖かい日があったり、今日みたいに冬に逆戻りするような日があったり、でも着実に春に近づいているようです。本当は冬の言葉のようですが、三寒四温というのにぴったりな時期です。

12月はじめに播種して、年が明けてからようやく芽をだしたナシ畑のライムギがここまでになりました。霜で白かったナシ畑が一雨ごとに緑色を濃くしています。

ぼかしづくり

2006年02月17日 | 今年の納得米づくり
自分の食べる米は自分で作ろうと、消費者自身が米づくりに取り組むわが家の納得米づくり。今日は元肥用のぼかし肥の積み込み作業をしました。ぼかし肥とは作物が吸収しやすくなるように原材料(有機質)を発酵させた肥料。原材料の有機質が玄米なら、ぼかし肥はお粥。

用意した材料は、オカラ160kg、くず大豆160kg、くず米160kg、米ヌカ160kg、籾殻40kg、カニガラ10kg、シリカ80kg。これらを8回に分けて撹拌器に投入し、混ぜ合わせます。

         

材料を混ぜ合わす時に注意をしなければならないのは水分。多すぎても少なすぎても、発酵菌がうまく入り込めず失敗します。軽く握ってできる「だんご」をつっ突くと壊れるくらい。

         

うまく混ざったら、コンテナに小分けします。

         

普通は1mくらいに積み上げ、熱が上がってきたら切り返して、また積み込み。これを繰り返して熱が上がらなくなれば出来上がり。好気性の発酵菌が積み込んだ材料の中央部まで入り込めないために空気を送り込むための「切り返し」ですが、やはり面倒。その切り返し作業を省く技が、コンテナに小分けすること。有機栽培に取り組む我孫子のNさんに教えてもらった方法で、コンテナに新聞紙を引き、混ぜ合わされた材料を入れるだけ。

        

コンテナを積み上げても空気はコンテナの間に入り込むし、新聞紙も空気を通します。これで切り返しなしでぼかし肥ができるというわけです。現実にはコンテナ毎にぼかしの出来具合が違うこともあって、ひと山に積み上げ何度か切り返す方が失敗がないようです。

トキを呼ぶビオ田んぼ

2006年02月16日 | 農のあれこれ
昨夜、我孫子市白山の六角堂にて第1回手賀沼トラストサロンが開催されました。言いだしっぺのわが家の父が話題提供。

千葉県北西部の柏市と我孫子市には50万人が暮らし、合わせて2,500haの田んぼ、2,200haの畑、1,200haの山林がある。もし田んぼで10a当り8俵の米を収穫し、地域内ですべて消費されるとしたら、都心から30km圏ながら米の自給率が40%(一人当たりの一年間の米消費量を60kgで計算)。この地域に暮らすすべての人たちが力を合わせてこれらの自然環境を作り続けていくためにはどんな方策があるか。「消費者体験型米のオーナー制度」「体験型市民農園」「保健保安林」ときて、さて特長ある地形の谷津田をどうしようか。と、こんな内容でした。

最近、それぞれのブログを通じて情報交換していただいている千葉県一宮町の齋藤農園さんから示唆に富んだ事例を紹介していただきました。

「トキを呼ぶビオ田んぼ」(2004年,2005年の活動についてはこちら

非農家の方が定年後に耕作放棄されていた谷津田50aを買い取り(新規就農!)、農業高校の生徒やGNP120メンバー(G元気でN長生きして120歳くらいでPぽっくりと死にたいというおばさんたち)といっしょに開墾、古代米づくりに取り組んでいるといいます。

サロンでさっそくこの事例も紹介しましたが、柏・我孫子地域でもこんなことができるでしょうか。

土の素

2006年02月15日 | 農のあれこれ
本格的な春の農作業準備が始まって需要がかち合う前にコメ糠を仕入れようと市内の精米業者さんへお願いしてあります。写真の左側に写っている大きな袋の中に400~500kg入ります。これを10袋ばかり予約して、ナシ畑に3月と5月の2回にわけて散布しようと考えています。

コメ糠は身近な有機肥料として注目されていまして、いざ販売店で購入しようとすると結構な価格になります。精米業者さんからみれば、いってみれば産業廃棄物なんですが、お金になるなら換金したいもの。小分けする手間をかけていない分だけ安く譲ってもらっています。

この精米業者さんへも最近、ある生協から生ごみ堆肥を作る際の有機物として使いたいので卸してもらえないかという打診があったそうです。わが家も一農家としては大量の注文なので、もしかしたら肥料にして他へ小売しているのかと冗談で聞かれました。他へ回すぐらいならわが家で使いますが、それだけ需要も高まっているということでしょう。

生ごみ堆肥や食品工場からの有機質の廃棄物など身近にいろいろな有機物はありますが、かえって始末に困ったり、有害物質を土の中に入れ込んだりする危険性があります。農家同士で情報交換している「除草剤を使わない米作り」というホームページ上でも2月6日から10日ごろにかけて、し尿発酵肥料や人糞堆肥などへの疑問が寄せられていました。「畑はゴミ捨て場ではない」ということを肝に銘じて、素性のはっきりしたものだけを使いたいと考えています。

ドリフトマニュアル

2006年02月14日 | 農のあれこれ
農協へノコギリ替え刃を買いに行きましたら、カウンターに『ドリフト対策マニュアル』(社団法人 日本植物防疫協会)というなんとなく硬めの冊子がありました。隣には全農が出した「農薬散布に気をつけましょう」というパンフレットもありました(トンボの写真のあるもの)。

ドリフトっていうと車の運転技術の「ドリフト走行」ぐらいしかなじみがなかったのですが、この問題、もしかしたら農業現場における今年最大の課題かもしれません。ドリフトdriftを英和辞典で引くと「漂う、漂流する」とあります。農業現場で問題にするのは農薬が漂うこと。目的園地外へ飛散すること。これまでも周辺の住宅や走行している車に飛散したと問題になったことはあります。水田の空中散布などは常に抱えてきた問題です。

ではなぜ今年、大騒ぎをしているかというと、今年の5月29日より食品衛生法が改正され、残留農薬が一定基準以上であった場合に食品の販売等が禁止されるようになります。えっ?!これまで基準ってなかったの?って驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、もちろんありました。ただし、作物ごとに指定された化学成分の基準値があっただけで、もし指定以外の化学成分が残留していたとしても無視されてきました。それが、残留基準値が設定されていない農薬等が一定量以上含まれる場合も規制の対象となります。この一定量とは「人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が定める量」として、一律0.01ppmとされています。これを残留農薬のポジティブリスト制度と呼んでいます。

具体的な例で説明しますと、これまでは野菜には野菜の残留農薬基準、米には米の残留農薬基準がありました。もし、野菜には使わない米の農薬が野菜に残留していても問題とはなりませんでした。米用の農薬を野菜に使うということは想定していないわけです。ところが現実には、たとえば水田農薬の空中散布により水田に囲まれた畑などには米用の農薬が飛散しています。これからは野菜に米用の農薬でも0.01ppm以上残留していたら問題にしましょうということです。

これからは自分の畑でどう農薬を使うかを心配するだけでなく、隣の畑でどういうふうに農薬を使うのかまで心配しなければならなくなります。これまでは農家と非農家の間で農薬の飛散問題があったのですが、これからは農家間でも問題になります。販売禁止や残留農薬のイメージダウンにより直接的に被害が発生するためにこれまで以上に厳しい状況になることも想定されます。

特に果樹農家はステレオスプレーヤという強制的に風を送るファンを使った散布機を使いますので、被害者よりも加害者になる可能性があります。先日、県の果樹連でもこの問題に関する会合が開かれたようです。風のない時を選んで散布するとか、適切なノズルを選ぶとか、遮蔽ネットを設置するとか、いろいろと対策は考えられるのですが、自分だけの注意では防げない部分もあるのも確か。周辺農家と意思疎通を一層密にするのが一番なのかもしれません。

これからはナシは山林の間か住宅地の中でしか作れなくなるかも。それにしても「ドリフト」だとか「ポジティブリスト」とか、まず意味を理解しなければならないことが多い課題です。