のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

田起こしだ花だ団子だ嵐前

2014年03月30日 | 春の梨畑
お彼岸を迎え、急に暖かくなったものですから
ナシのつぼみも日に日に開いてきました
今年も待ったなしの日が続きます

そんな毎日に追われ
最近とみに発信力が衰えてきたことを自覚しているのですが
実は、受信力も衰えていたようで
2014年の新書大賞を受賞した
『里山資本主義』という新書(角川oneテーマ21)
を先ごろまで知りませんでした

グローバリズムや「マネー資本主義」の
経済システムのアンチテーゼとして
中国地方の中山間地で木屑ペレット発電に取り組んでいるとか
木造高層建築物が可能となって
オーストリアではエネルギー革命が起こっているとか
新しい社会の具体例を提示し
お金の循環が滞っても
水と食料と燃料が手に入り続ける仕組みをつくろうといっています
多くの人に「懐かしい未来」として
田舎の可能性が注目されるのはたいへん喜ばしいことです
311以降のなんとなくもやもやした気分を
吹き飛ばしてくれるのかもしれません

『百姓貴族』というコミックも話題を呼んでるようです
最近映画化された『銀の匙』という農業高校を舞台にした
コミックと同じ作者で、農業エッセイをコミック化した感じ

どちらも、そうだよねえとか、あるあるって思う反面
なんだかなあという思いもあるのですが
農業分野に様々な人たちが興味をもって
入ってきてくれることは現場が活性化してありがたいことです

ただ、農業あるいは農村の現場では急速にその姿を変えていて
農地制度を含めた農政の見直しとともに
企業参入や金融機関による農業ファンド、農業起業家たちの
踊る舞台となりつつあることも確かです
(週刊東洋経済2014/2/18 特集:強い農業 世界で勝つためのヒント)

そんな中でわが家の当面の仕事は
ナシづくりとコメづくり
わが家産品を原料とした菓子・ジャム・ソース加工
それに近在農家からの加工受託
これでこれからの荒海を乗り越えていこうと考えています

『里山資本主義』の中に
こんなわが家を後押ししてくれる事例が紹介されていました
瀬戸内海の島で原料を高く買い入れ
人手をかけて成功したジャム屋さん
自分も地域も利益を上げる方法が生まれたといいます
生産、加工、販売を地域で行うことによって
外に出ていく金を減らし、地元で回すことのできる経済モデルです
わが家の加工受託はまさにここを目指しています

また、貨幣換算できない物々交換や市場外での流通もまた
わが家でも以前からいろいろと試みてきました
CSA(community supported agriculture)もそのひとつの形でしょう
グローバリズムや巨大企業に負けない農業はあります

最後に少し弱音を…

今日のこの嵐はなんだあ
最近は雨も風も雪も百年に一度なんていう大きさで
もし農業が行き詰るとするとこういう気候変動かもしれません

食卓から地球を冷す

2014年03月23日 | 農のあれこれ
植物は空気中のCO2を吸収して育ちます
しかし、その木を燃やすと木に吸収されたCO2が再び空気中に放出されます
また、そのまま地中に埋めても微生物に分解されて、CO2に戻ってしまいます

そこで、木を炭にして炭素を固定します
炭は地中に埋めても分解されず、CO2に戻りません
つまりCO2が排出されません
炭を埋めた畑で栽培された野菜
それが地球温暖化の原因とされる空気中の二酸化炭素を削減し
地球を冷すことが期待されるクールベジタブル、つまり『クルベジ』です

京都に出かけるついでがあったものですから
こんなクルベジの社会実験をすでに始めているお隣の亀岡に立ち寄ってみました

亀岡では放置されて困っている竹林を地域の未利用バイオマスとしてとらえ
バイオマスの回収→炭化→たい肥との混合→
農地施用カーボンクレジット取引→クルベジ® 販売という流れをつくっています
竹の伐採、炭化は地元の民間事業者に任せ
市農業公社が竹炭と混合した堆肥を製造し
炭の投入実績を管理するため散布まで行います
協賛企業5社からは栽培地看板や商品ラベル等についてクレジット取り引きしています


 
販売は地元のスーパーマーケットで扱ってもらっています
店の入り口の正面に「クルベジ」コーナーが置かれ
5分ほど観察していたのですが、その間でも何組かのお客さんが足を止め品定めをしていました
残念ながら購入した場面には立ち合いませんでしたが
マスコミで取り上げられ
小売店の努力や広報等によりその存在はある程度は認知されているようでした
ほかのノーブランドの野菜の価格と比較しても、特に高いというわけでもないようです
もしかすると、ほかの野菜コーナーと離れた場所の特設コーナーであることが
かえってほかの野菜と比較できずに
購入を躊躇してしまっているのではないかという印象も持ちました。




 
JR亀岡駅から徒歩で10分ほどのところにはクルベジ農法による市民農園が開設され
地元の農業者による農業体験塾のようなものも行われているようです
農作業にはまだ早い時期でしたから露地畑はまだ休んでいましたが
ビニールハウスの前には竹炭の入っているであろうローンバッグが置かれていました





亀岡の事例は、大学研究機関と行政だけでなく
地元事業者・農業者や民間企業との協力を得ながら
社会実験がうまく離陸しているようです
あとは消費者がその価値を認識し、購入行動まで成熟すれば実験が成功
さらに社会運動という形に醸成されれば温室効果ガス削減の一歩にという期待が膨らみます
そのためにも柏市での社会実験が重要な役割を担うことになると再認識させられました
 
わが家で行われた1月のナシの剪定枝の炭化試験の結果が少し前に報告されました

わが家の畑から排出される剪定枝は計算上ですが約9t
炭化した炭の量が約3t。そのうち難分解性炭素量が約1t
難分解性炭素とは炭から揮発分(有機質)やミネラル(灰分)を差し引いたもので
安定的に貯留可能な炭素・元素状炭素という意味のようです

わが家のナシ畑から毎年1tもの炭素を固定化できるというのは予想以上の量でした
樹木は当然、竹やもみ殻よりも炭素の抽出率が高い値のようで
産地として取り組むようになればさらに大きな数値となって社会にアピールできるかもしれません

次なるは萌黄の映えるずんだ餅

2014年03月19日 | かしわかあさん
このお彼岸の連休は定番の串団子に米粉シフォンケーキのほかに
「おはぎ」もがんばります

少し前は特別安価なおはぎがスーパーで売られていましたから
道の駅直売所のわが家の「手作りおはぎ」とは
ある意味で「棲み分け」していたようなものでした
ところが最近は、コンビニでプレミアム価格のおはぎが売られたりして
あまり差がなくなりました

お客様に飽きられないよう
次なる刺客商品を放つべく日夜精を出しています

冷凍庫に去年の枝豆が冷凍されていたのを思いだし、
白ダンゴは毎日作っていますから
さっそく白団子に絡めて見ました

上の写真の豆の色は今一つのレベルですが
実物はもっと鮮やか
試食してみてもおいしい!
これは商品化しなければなりません

エダマメの時期はまだ先ですが
原料調達の準備をするため試食用のずんだ団子をもって
エダマメ生産農家にはねだしエダマメを分けてもらえるよう
お願いに行ってきました

お楽しみに〜


すごもりの虫戸を啓く雨降れり

2014年03月16日 | ネイチャースケッチ
先日13日、雨の降った時です
春にしては大きな雨でした
夕暮れ時、庭に何やらうごめくかたまりが…
周りの色彩と同化していてすぐにはわからなかったのですが
わが家の主のひとりが冬の眠りから覚め
腹ごしらえにでてきたようです





その後、車で走っているときにも
彼の仲間が畑の中のアスファルトの道を横切っていて
ああ、啓蟄だなぁ、なんてね

ナシ畑でも芽が動き出したようてす
剪定作業ももう二、三日で終われそうです
雪で仕事ができない日があったのに
予定通りに終えられるというのはなぜだろうと考えたら
後継者君が戦力になっていることもあるのですが
古木になって生産の上がらない大枝をチェーンソーで
バシバシ切り落としたために剪定する枝の絶対量がなかったんだと
気がつきました

わが家でナシを始めて40年
苗木がどんどん育っていた時期は生産量も右肩上がりでしたが
ある時期をピークに下降気味に
具合の悪い木は順次、新たな苗木に植え替えているのですが
欲を出してもう一年、もう一年と思いきって切り替えられないうちに
生産量は低空飛行状態になってしまったようです

早めに木を更新したほうがいいよと
古くからの産地から助言をいただいていたのですが
自分で痛い目にあわなければわからないというのは
よくある話ですが

さざ波のほとりの春は荒れにけり

2014年03月11日 | ネイチャースケッチ
日の光だけでなく気温も春らしくなってきました
谷津を流れる小川も童謡のように
さらさらと音もなく湧水が流れています
だけど川面にはさざ波が立ち
川底には無数の文様が刻まれています



三年目の311を迎え
あの日を振り返ることが多くなっています

「あの日のことを忘れないで」とよく言われます

もちろん新たな生活基盤が整っていない地域や被災者が
まだまだ多いわけですから
すべての人が被災地に思いをはせることで
せめて気持ちだけでもつながっていたいという被災者
を支援する意味もあるのですが
最近は直接的な大きな被害のなかった人たちに向けて
次の天災の当事者になる可能性のあることへの戒めの意味
の方が大きくなっているように思います

千年に一度の津波で多くの犠牲者をだした
だから千年先の命を守りたいという
宮城県女川の中学生たちの
「いのちの石碑プロジェクト」が紹介されていました

子供たちの純粋な気持ちに比べ
3%の増税という眼先の損得に右往左往し
結果として次の増税を引きこむことになることに思いの及ばない
大人たちのなんと浅はかなことよと自戒させられました

ゲンパツの再稼働論議も…

今年も
春が来てもフキノトウは食べられません
シイタケも食べられません
大好きなタケノコも食べられない春です
まだ嵐が吹き荒れています
あの日のことを忘れられるはずはありません