のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

南国の果実を分かつ夜長過ぐ

2007年10月31日 | 梨の品種
高知県産の『新高』です。柏のKSさんからおすそ分けいただいたものです。

高知と言えば、新高のふるさとのひとつです。新潟と高知のナシを掛け合わせてできたのが『新高』。産地としてはプライドがあるはずです。何か参考になるのではと、KSさんが持ってきてくれました。

ひとつひとつ和紙で包まれていました。少し変形していますが、きれいな黄色い表面です。さっそくいただいてみると、完熟しているように見える割には果肉はしっかりしています。風味も感じるし、上品に仕上がっていました。KSさんが指摘するように甘みは抑えられていますが、これはこれでおいしくいただきました。

わが家の『新高』は袋がけをしていません。その分、糖度は高いようです。でもこの肉質にははまだかなわないかもしれません。

果皮がきれいなのは袋をかけていたのでしょう。あの肉質は……もしかしたら完熟する前に収穫し、追熟させているのでしょうか。収穫のタイミングは、どのような環境でどのくらい保存するか、出荷の見極めは…。その品種の良さを引き出す栽培方法はあるはずです。『王秋』にしても、晩生のナシはまだまだ工夫の余地があるようです。

KSさん、ありがとうございました。

うまし酒うましひと時秋深し

2007年10月30日 | わが家の時時
淡麗辛口ながら芳醇な香りとまろやかな味。大吟醸「御慶事ごけいじ」。茨城県古河市青木酒造のお酒です。娘の友人の実家が蔵元です。送った梨のお礼としていただきました。

口に含んだらそのままのど越しから腑に落ちていきます。

独特の技術により、糖化と発酵のバランスを保ちながら低温でゆっくり発酵させて醸し上げたといいます。独立行政法人酒類総合研究所主催の全国新酒鑑評会で平成14年、15年、17年、18年と金賞を受賞。国税局主催の清酒鑑評会でも平成13年、14年、17年と茨城県首席第一位を受賞しています。でも受賞暦で味わう必要はありません。一度、口に含むだけで、蔵元の心意気が感じられます。

わが家の梨、米は心意気を届けているか、同じ作り手として気になるところです。

コスモスの花束うまし朝の市

2007年10月29日 | わが家の時時
台風一過の昨日、我孫子のマンションの一角で月一の農産物朝市が開かれました。マンション開発構想時からのイベントで、周辺農家が持ち寄り、住民がボランティアとして運営しています。開発プランナーとちょっとした知り合いだったものですから、当初より毎回、少しばかりの自家用野菜を持ち込んでいます。

気持ちの良い朝でしたので、さぞかし多くの常連やら冷やかし連が訪れるだろうと運営ボランティアの方々も想定していたのですが、さっぱり。雨が続いていたので、皆、洗濯に忙しかったのではないかというのが共通の見解でした。

台風の風雨もあり、時節柄さすがに路地に咲く花も少なくなったからでしょうか。商品として持ち込んだ花束に蜂が集まってきました。写真の黄色い花はキバナコスモスといいます。

売り上げはともかく、蜂たちにはよいことをしました。

芋嵐遊べや遊べ濡れ鼠

2007年10月28日 | 農のあれこれ
昨日もまた一日、台風がくるというので雨でした。朝食を食べていると友人からJAの農業機械展示会に行かないかというお誘い。二日連続のお出かけですが、断る理由はありません。車でいえばモーターショーのようなこの展示会は毎年この時期に開かれ、メーカーと農家の情報交換の場になっています。

写真の右の袋は機械のカタログや資料を入れるもの。あちこちでカタログをもらってきて、それらを広げて数値やら機能を比較するのが無類の楽しみ。わが家の奥さんにはこの楽しみが理解できないようで。左側は来場者に配られる帽子。これが欲しくて出かけるという人も。黄色と黒だからって、レイソルの帽子ではありません。

今年の展示会で興味を持ったのは、米の色彩選別機。

石やガラスといった異物や着色米、籾などを良品のなかから除去する機械です。以前なら大規模なライスセンターやお米屋さんでしか見られなかったのですが、小規模な米農家でも直売するには必要だという声が高まってきています。

米の色彩選別機は、流れてくるお米をカメラ等で検査し、不良品を発見したら一粒一粒コンプレッサーで圧縮された空気で飛ばすという仕組み。精度の求められる機械で、たいへん高価なものでした。ところが、今年はこれまでの半値程度の機械が登場していました。

カメムシに吸汁され、米に黒い斑点がついてしまう被害粒。この機械で選別できるなら、減農薬を推進しさらに消費者の信頼を得られるかもしれません。農政の中に導入推進を組み込むことはできませんかねえ。

小雨降る広場で眺むる大道芸時は遊べど心底晴れず

2007年10月27日 | わが家の時時
昨日も一日雨ということでしたので、「充電」と称して博物館めぐり。

まずは御茶ノ水・明治大学博物館。「村絵図の世界 故郷の原風景を歩く」という特別展が開かれています。(9月14日~12月4日、駿河台校舎アカデミーコモン館)

明治大学には木村礎という歴史学の大家がおられて、江戸時代に描かれた絵図をもとに当時の村をイメージするという研究手法を確立していました。学生時代に村絵図を材料に農村調査をしたことがあったものですから、ちょっと懐かしくなって立ち寄ってみました。

村絵図は検地の確認や水争い(水論)、入会地争い(山論・野論)の調整のために作成されたといいます。なるほど地図というのは平和な時代の趣味の産物ではないと再確認。


続いて、上野・国立科学博物館。訪れたのは何十年ぶりでしょうか。

ひとつは「ファーブルにまなぶ」展(10月6日~12月2日、国立科学博物館)。『昆虫記』刊行100年記念だそうです。ファーブルの生涯から『昆虫記』に登場する南フランスの虫たち、そしてそれ以後の100年間の発展の様子を紹介しています。

虫たちの“振る舞い”の意味を理解するために虫をじっくり観察し、実験を繰り返したファーブル。「自分の手で試して、自分の目で確かめる」ことの楽しさを彼から学んでほしいというメッセージでした。

彼の仕事が日本人の自然志向とマッチし、アマチュア研究者たちを勇気付け、「日本のファーブル」たちが昆虫学、博物学に貢献。今後は昆虫の家畜化や昆虫ロボットの研究などが期待されているといいます。アマチュアとして老後の楽しみに虫を研究するのも面白いかも?

         

子供時代、虫が大好きで、自分のペンネームにまで「虫」をつけてしまった漫画家が描いたのが「鉄腕アトム」。その「鉄腕アトム」を原点のひとつに位置づけ、日本のロボット技術を科学史的な観点から紹介しているのが、もうひとつの「大ロボット展  からくりからアニメ、最新ロボットまで 」(10月23日~1月27日、国立科学博物館)。

伝統的な「からくり」から二足歩行ロボット、産業用などが陳列されている中で、最近話題となっている「ロボットスーツ HAL」が興味を引きました。ほぼ同世代の大学の先生が開発した世界初のサイボーグ型ロボット(上の写真)。介護や作業現場での活用が期待されています。

開発者は子供のときに読んだ鉄腕アトムを夢見ていたそうです。同じ本を見て、同じ時代を生きてきたのに…と、ちょっと感傷的に。


たまたま上野公園では「ヘブンアーティストTOKYO」(10月26日~28日)という大道芸フェスティバルが開催されていました。タイトルの写真は、ダークラクーというフランスの芸術的大道芸の代表的アーティストだそうです。この時間帯では一番の人数を集めていました。

3つの博物館・展示は若いころを思い出させてくれましたが、気分が若返るのとは逆に「もう戻れないんだなあ」という感情も。これって男の更年期?

初落ち葉終いの虫はおぼつかず

2007年10月25日 | 晩秋の梨畑
ようやく多目的防災網の始末も大詰め。朝露も本格的になりました。ナシの葉も幸水から散り始めました。

先日までセミの鳴き声が聞こえていましたが、今日、幹にとまっていて死んでいるのかと手をのばすと、力なく飛び立ち、草むらに転げ落ちたのが最後のセミでしょうか。

今年はマツタケのはずれ年だそうで、わが家の梨畑のキノコも不作。去年までけっこういろいろな種類が見られたのですが、今年は日陰でみられた上のキノコぐらい。

こんなところまでこの夏の猛暑の影響が残っていました。気象庁から三ヶ月予報が出され、12月からは例年並みの寒さになるとか。そうなって欲しいものです。

葉牡丹の日がな一日緑濃く

2007年10月24日 | ネイチャースケッチ
今日は「霜降」だそうですが、ここしばらく小春日和が続いています。

さぞ農繁期の後始末が進んだかと思いきや、です。まだJAの口座から資材等の経費引き落としがされておりませんので、懐も暖かいような錯覚をしておりまして、ぬくぬくした気分で仕事をしているものですから、まだ梨畑の多目的防災網の片づけが残っています。

棚の上で仕事をしながら、懐に入ったものをさて何に使おうかとあれこれ思い巡らすのがこの時期の唯一の楽しみ。そんな気分を見透かしてか、明後日からはJAの農業機械展示会が千葉で催されます。友人からも今度こんな機械のデモをやるので見に来ないかなんてお誘いがあったりして。あんな機械があったらもっといい仕事ができるのに、なにも車を買おうというわけでないからと、わが家の大蔵大臣、いや財務大臣になんとなく探りをいれたりしております。

あくまでも、思い巡らすだけです。

西方へ鳳凰去れりうろこ雲

2007年10月22日 | 雲図鑑
夕方の一時、鳳凰が世の中の安心を引き連れて太陽へ帰るかのような雲の形をしていました。

「雲」って面白いなと思っていたところ、新聞の書評欄で『「雲」の楽しみ方』(ギャヴィン・ブレイター=ビニー著、河出書房新社、2520円)という本を紹介していました。アマゾン・ドット・コムで注文して待っている間に、たまたま目にした雑誌『NAVI』誌上で神足裕司氏が「この夏の余裕は『「雲」の楽しみ方』だった」と書いていまして(11月号p78)、一層、手に取るのを楽しみにしていました。

しばらくしてアマゾンから「ご注文の本はお送りできません」というメール連絡がありました。品切れだったのでしょうか。ますます入手してみたくなっています。

疑えぬ仕事の後の祭りかな

2007年10月21日 | 農のあれこれ
四万温泉での湯浴み後の休憩時間、このベストセラーをぺらぺらとめくっていました。

「読み始めたら止まらない」と帯にはありますが、まだ半分しか読み終えていません。「極上の科学ミステリー」には違いなくたいへん面白いと思うのですが、エイブリーやらロザリンドといった外国人名やポリメラーゼ、オリゴヌクレオチドといったカタガナの専門用語が次々にでてくるものですから、前のページに戻って確認しながら読んでいるという体たらくです。海外文学が苦手なのもそんな理由からです。

この新書の前半は二十世紀最大の発見ともいわれるDNAの二重ラセン構造の発見にまつわる疑惑について。この発見で後にノーベル賞を受賞した科学者たちがほんとうに受賞に値する研究をしていたのか「ダークサイド」があるというのです。

前半のテーマは「知的であることの最低条件は自己懐疑ができるかどうか」ということのように思います。とくに科学者ならこつこつとデータを積み上げ結論を導くという研究の質感が重要といいます。しかし、DNA構造を発見したのは「準備された心にチャンスが降り立った」からではないか…


そういった科学者たちと知的レベルは次元が違うのですが、自己懐疑性が問われる事件が食品関連で次々に明らかになっています。今日も比内地鶏の偽装が報道されていました。赤福も白い恋人たちもミートホープも魚沼産コシヒカリもはじめはきちんと仕事をしていたのでしょう。だから評価されたはずです。でもある程度の名声を得てから、つい調子に乗って自分を騙しはじめてしまったのでしょう。

特産品作りにはブランド化が重要とかいわれますが、もともと供給量に限界のある食料とか農産物などはブランド化によって需要が供給を上回ることのほうが危険が大きいような気がします。食べ物ってそんな差別化すべきものでなく、誰にでも同じように提供されるべきものではないでしょうか。当然、地域性というものはあるのですが。


うーん、DNA発見疑惑から食品偽装へ連想するのは、話に飛躍がありますねえ。

蟷螂の眼光鋭利網に在り

2007年10月20日 | 晩秋の梨畑
「新興」梨の収穫も先が見えてきました。後は「王秋」梨ですが、これもまだ一部の苗木だけですから、そろそろ今年の店頭直売も店じまい。

梨畑の後始末というと、多目的防災網を閉じるのが大仕事。棚の上に乗って、ほこりにまみれた網をまとめていくのはできればやりたくない仕事です。

そんなときに和ませてくれるのがカマキリです。夏には小さかったカマキリが一人前になって、枝や網の上で狩りをしています。カマキリがいるということはそれだけ餌となる昆虫もいるということでしょう。良いことなのか、良くないことなのかよくわかりませんが、カマキリが多いということは良いことでしょう。

七十二候でいえば、今日あたりは「媛鮮在戸」。「キリギリス戸に在り」の気候。秋の虫も冬支度といったところでしょうか。

つれづれに紫濃くしあけび開く

2007年10月19日 | ネイチャースケッチ
四万温泉の帰り道、関越道沼田IC近くの「田園プラザ川場」という道の駅機能を持った農業公園?の直売所で買ってきたアケビとポポーです。

ポポーを村の特産にという話を聞いたことがあり、どんな果物だろうと試しに買ってみました。マンゴーのような食感と味で、好き嫌いがはっきり出そうです。種子から簡単に庭先果樹になるというので、種子を播いてみようかと思っています。

田園プラザ川場」は関東地方の道の駅を対象としたアンケートで「好きな道の駅」第一位を3年連続受賞しているそうです。

地ビールレストランやミルク工房、ミート工房、直売所などがひろびろした敷地の中に配置されています。様々な体験ができるのもさることながら、一番の売りは裏山全体がブルーベリー山になっていることかもしれません。自由に園内に入って食べられるということのようです。こんな地域の特性を生かした施設の特徴づくりが評価されたのでしょう。

親のおやの積みし石也稲架(はざ)の波

2007年10月18日 | 農のあれこれ
 
タイトル元句 : 親のおやの打ちし杭也あじろ小屋 (一茶)

四万温泉からの帰り道、群馬県中之条町での光景です。こういう山間地に入らないと稲架がけの姿も見ることも少なくなりました。

先日、二日にわたりNHKで「ライスショック」という番組が放映されていました。国内の農村では農家の高齢化、米価の低落により米作りの担い手がいなくなり、一方で海外からはコシヒカリの生産がビジネスチャンスになりつつあるというレポートから、誰が米を作るのかと問題提起していました。

経済を中心に据える国の施策は大規模営農へシフトしようとしていますが、はたして経済活動としてだけで米作りを続けているのか。黄金色に染まる田園を美しいと感じることができるなら、瑞穂の国の民として底力を発揮させなければならないでしょう。

あの月をとってくれろと泣子哉(一茶)

2007年10月16日 | わが家の時時
 
ほら、とってきたよ、ここに。

群馬県重要文化財の旅館建築の一室の窓です。一日小雨模様という天気予報だったものですから、急きょ、群馬県の四万温泉へ日帰りで行ってきました。

立ち寄り旅館はアーチ型の窓と五つの湯船の並んだレトロモダンな大浴場のある積善館。さすが四万病に効くといわれる泉質。源泉かけ流しのお湯は無色無臭透明ながら効能はしっかりしているようで、肌のすべすべ感は何日持つかしらとわが家の奥さんも大喜び。

        

3時間あまりかけて往き、温泉で3時間あまりを過ごし、また3時間あまりかけて帰ってきました。時間も資金も余裕のない我が家には立ち寄り温泉がお似合いかも。というわけで、次はどこへ行きましょうか。

これがまあつひの道なり木の子咲く

2007年10月15日 | わが家の時時
 
タイトル元句 : 是がまあつひの栖か雪五尺 (一茶)


「新高」の収穫もようやく終了しました。「新興」は最盛期、「王秋」は様子をみながら少しずつ道の駅直売所へ出荷しています。

残りの時間はというと、まだ果実が残っていて防災網を閉じることはできませんので、普通は選定作業の前作業として混んだ枝や古い枝を間引いたりする作業をすることになります。

わが家の場合、今年は夏に萎縮病や白モンパ病により枯れた梨の樹が多かったものですから、まずその始末することから手をつけています。

先日9日に果樹組合の仲間たちとつくば市にある果樹研究所へ出向き、「萎縮病と白モンパ病の研究最新事情」というテーマで話を伺ってきました。どちらの病気も梨栽培上の長年の課題です。

萎縮病は春先の展葉期に一部の葉が萎縮、波打ち、やがて樹全体にひろがり、ひどくなると枯れてしまう病気です。剪定跡や幹の傷から入り込む腐朽菌(サルノコシカケ仲間らしい)が病原体と考えられていますが、原因は特定されておらず症状の総称といわれています。

萎縮病病原菌と思われる原因で腐朽した樹幹を切ってみるとこんな感じ。右側の1/4ぐらいが健全部で、そのほかが腐朽部。

        

このくらいになると梨の樹も葉を維持するのがようやくで、果実を生育させることは困難になって、結局、樹体を除去・改植するかどうするかということになります。

対策としては、腐朽部の切除や樹勢維持・回復などがいわれますが、株元・根部が問題なければそこから新しい幹を伸ばして育成するという方法も現実的な対応と考えています。