のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

日の匂い頂だく秋の寒さかな(惟然)

2008年10月30日 | 晩秋の梨畑
ナシ畑の防災網をまとめているのですが、
なかにはもう耐久性を失い、交換時期にきている網もあります。
その廃棄網の始末も一仕事です。

なにしろ大きな網です。
新しい網を棚の上にあげる際には
ナシ仲間たちと共同作業をするのですが、
下ろす際は細かく刻んで折りたたんでいきます。

以前は、廃棄網を焼却していたこともあったのですが、
ダイオキシンの問題が大きくなってからは
リサイクルするルートが確立されています。
当然ながら処分費用がかかります。

防災網がなくてもナシ栽培ができるならどんなに楽かと
つい愚痴がこぼれてしまいます。

われと妻壮の二人が働きて老二人憩ひ少三人学ぶ(宮柊二)

2008年10月26日 | 晩秋の梨畑
我が家でのナシの直売は終了しました。
今年も大勢のお客様にご用命いただき
ありがとうございました。

台風の上陸もなく、いろいろな作物が豊作だった一方で、
「なんとか貧乏」という声もあがるのですが、
ナシにとっても恵まれたシーズンだったと思います。

タイトルの「三人学ぶ」から
「二人学び、若一人働き始め」た年としては幸いでした。
そもそも「老二人」はまだ「憩う」という境地にもないのですが。

そんな感慨に浸っている間もなく、
次に向けての作業も進めています。
収量の上がらなくなった樹を間伐し、ナシの樹を更新します。

写真は30年以上働いてきた樹の骨組(主枝)。
枝先から枝先まで12メートル以上はあったでしょうか。
我が家の今の「老二人」が「壮」だったころに植えた樹です。
一つの世代を支えてきた樹です。
次の世代のために樹を更新しなければなりません。


許されぬ人に恋ひつつ白玉の清き思ひもこもりはつべし(伊藤左千夫)

2008年10月24日 | わが家の時時
先日の四万温泉一息ツアーの際に持参したのが
久しぶり「藤沢周平」もの。

お風呂に入ってはふとんに潜り込み、
ページをめくっているうちにまどろんできて、
ふと気がついてちょっと行数を戻ってから読み始める。
軽い寒気を感じたらまたお風呂で温まって
またふとんの中へ。
そんな至福の時間を過ごしました。

今回は人情話、世話物の名品と呼ばれる『海鳴り』
(文春文庫上・下)

はじめて白髪を見つけたのはいつだったか。
走り続けて迎えた四十の坂。
ふと気が付くと心通じぬ妻と放蕩息子の跡取り…。
紙商 小野屋新兵衛は、やがて
薄幸の人妻、おこうに果たせぬ想いを寄せていく。

文庫本カバーのキャッチコピーをいただくと
こんな感じでしょうか。

もし映像化したなら、新兵衛は“緒方拳”だったか。
おこうは、…

ぽっちゃりしてかわいらしくて、芯が強くて明るくて…
藤沢周平の描く女性はいつも男の理想像。

藤沢作品では武家ものがいろいろと映像化されていますが、
こんな市井ものは難しいのでしょうねえ。
やっぱり、理想的な女性は読んだ人がそれぞれ思い描いた方が。
本を読みながら情景を思いめぐらすのも楽しさの一つということで。


PS.たまたま現在、劇団民藝が『海鳴り』を公演していました。
ちなみに“おこう”は日色ともゑ。なるほど…

香木の朽ちし匂ひを立つるなり黒ききのこも白ききのこも(与謝野晶子)

2008年10月23日 | 晩秋の梨畑
ナシの収穫ももう少しで終わりです。
熟すのを待ちながら後始末や
来年のための作業をしています。

枝が混んでしまったところや
冬の剪定時に更新すべき古い枝を切り落とす
この時期の作業を「枝抜き」と呼んでいます。
剪定作業を分散させるという意味もありますし、
秋防除の農薬が余分な枝葉で邪魔されないようにする
という意味もあります。

「枝抜き」のさらに大きなスケールの作業が間伐。
樹間が狭くなり、剪定ではどうしようもなくなった場合には
間の樹を切り倒し、抜いてしまいます。

樹が成長したからという積極的な理由ではなく、
病虫害等が原因でという消極的な理由から
間伐することもあります。
病害には紋羽病、胴枯病のほかに、
高樹齢化すると萎縮病(症)も大きな問題となっています。

萎縮病(症)は葉の形状や新梢の伸びなどから判断できますが、
その病菌は腐朽菌の一種といわれ
幹にキノコが生えているかどうかでもある程度はわかります。

たとえば、タイトルの写真の樹。
太い幹に苔とキノコが生えています。
これほどになると幹の半分ぐらいは朽ちています。

また、最近、被害が増大してきたナシマルカイガラムシですが、
カイガラムシに被われて枯れてしまった枝・幹もあります。
この被害は農薬が足りないような園の周囲で多く見られます。

今年は病虫害が原因の間伐、移植・新植作業が多くなりそうです。

話しながら枝豆をくふあせり哉(正岡子規)

2008年10月22日 | わが家の時時
納得米プロジェクトメンバーのSiさんが
京都・篠山から送られてきたからと
丹波黒豆の枝豆を持ってきてくれました。

丹波黒豆の種をこちらで蒔いても
こんな大粒にはなりません。
やはりその土地土地の環境だけが
作れるものがあるということでしょう。

食卓に乗せた豆がなくなるまで
四方から手が伸びてきていました。

産んだまま死んでいるかよかまきりよ(種田山頭火)

2008年10月20日 | 晩秋の梨畑
現在、“新興”と“王秋”を収穫中で、
毎日、道の駅しょうなん直売所へ出荷しています。

良い天気が続いているものですから、
収穫を終えたナシ畑から順に防災網を閉じる作業もしています。
半年分の埃を抱え込んだ網を頭上にして
棚の上を歩きながらロープでまとめていくのですが、
できればやりたくない作業です。



そんなときに和ませてくれるのがカマキリ。
あちこちで姿を見せてくれます。
鎌状の前脚を持ち上げて威嚇する姿はなかなか勇ましいのですが、
時にはタイトルの写真のような場面に出会います。

添竹も無いに健気に此菊の(来山)

2008年10月16日 | アグリママ
先日のナシの加工品を提案してくれたFさんが
第二弾を持ってきてくれました。



今度はナシケーキ。
スポンジ台の上に煮たナシを乗せて焼いたようです。
たいへん美味しくいただきました。
でもここで、ちょっと考えてしまいました。

おいしくすればするほど手が混み材料費もかさみます。
そのうえ梨らしさがなくなってくるような気もします。
あえてナシじゃなくともいいということになります。

各ご家庭で趣味のナシケーキ作りに励んでいただければ
それだけナシの消費も伸びるでしょうが、
これまでの我が家の経験からして
商売として加工し販売しようとしても
そんなにうまい話にはならないのでは
という思いが一層強くなりました。

それだけ美味しかったということです。
Fさん、ありがとうございました。

紅葉見や顔ひやひやと風渡る(闌更)

2008年10月15日 | わが家の時時
谷川岳一の倉沢のすぐ下まで行ってきました。
まだ紅葉は始まったばかりのようでした。
紅葉の盛りは天神平を少し降りたあたりでした。
こんな紅葉シーズンのまっただ中に
夫婦で行楽にでかけられるのは
長男が就農してくれたからで、感謝、感謝。

二日間、雨という予報でした。
ならばでかけようと、出発当日14日の朝に宿の空きを確認。
一年前にお風呂だけ利用した群馬県四万温泉積善館へ。
突然だったもので仕事の段取りを終えてから、お昼前に出発。
16時には到着。

「本館湯治プラン」なら平日一泊二食5,350円。二人で一人分の料金です。
部屋、食事は最低限のものですが、
お風呂だけは4万円コースのお客様と同等。

湯治をいうなら形だけでも二泊三日はほしいところを、
無計画でいつもバタバタしている我が家としては一泊がいいところ。
翌日も雨ならゆっくりお湯に浸かっていようと思って出かけたのですが、
予報より早く、朝には雨が上がったので、
即、予定変更で谷川岳まで行ってきたというわけです。

今回もなんともまあ、大慌ての弾丸ツアーというか
思いつきわがままツアーの一幕でした。
でもこれで気分転換できて、農繁期の後始末に取り掛かれます。
後始末が終わったらまたツアー企画をしたいものです。

夜の家内はほがらに籾を摺る(松瀬青々)

2008年10月13日 | 今年の米づくり
12日、手賀沼トラストの古代米の籾摺りを我が家で行いました。
その際、木工の達人Sさんが見慣れぬものを持ってきました。



昔の籾摺りを真似て作ってみたというのです。
構造は米やそばを粉にする石臼と同じ。
溝をつけた下台と上台の間に籾を少しずつ落とし込み、
上下の台の間の摩擦で籾殻がはずれるというものです。



古い道具を一度見ただけで、
あとはこんなものだろうと推測しながらつくったものだから
なかなかうまくはいかないと
Sさんは謙遜していましたが、
それでも半分ぐらいの籾から殻がはずれていました。

昔の人はこういう道具をよく考えもしたし、
根気よく作業もしたのだろうと、
尊敬するばかりです。

夜る窃(ひそか)に虫は月下の栗を穿(うが)つ(芭蕉)

2008年10月11日 | 農のあれこれ
旧暦9月13日の夜の月を「十三夜」「後の月」といって
古来、月見をしてきたそうですが、
将来に対する不安心理が蔓延しそうな今だからこそ
復活させたい風習のひとつ…

と、お盆も彼岸もないナシ農家が言えることではありません。
でも、季節、季節をきちんと暮らしに組み入れることは
農業のあり方を考えるきっかけになると思います。

東にしあはれさひとつ秋の風(芭蕉)

2008年10月10日 | 梨の品種
今年は10月になってもなかなか秋らしい日になりません。
世の中では世界恐慌の黒い雲が湧き上がってきそうな雰囲気。
今年のナシシーズンも終盤になり、
あちらこちらから今年の総括が聞こえてきますが、暗い話ばかり。

そんな中での期待の新品種「王秋」です。
これから収穫に入ります。
試食してみますと、たいへん美味しく出来上がっています。



きめ細かい果肉に高い糖度。
リンゴのような風味もあって
「あきづき」が9月の「幸水」なら「王秋」は10月の「豊水」。
フルーツ好きの方には支持していただけると思います。

早めに収穫すると「二十世紀」のようなさっぱりとした食感で
じっくりと熟させると「洋ナシ」のようなちょっととろりとした食感に。
一つの品種で先祖の二つの味が楽しめます。
さらにもうひとつの先祖の「新雪」の特徴まで引き継いでいて
保存性が良くひと月以上常温でおいておけるといわれています。

9月上旬の「秋麗」と合わせて美味しい新品種を提供することで
これから迎えるかもしれない冬の時代を乗り切っていきたいものです。

葡萄の種吐き出して事を決しけり(高浜虚子)

2008年10月06日 | ネイチャースケッチ
ブドウスズメという蛾の蛹(さなぎ)のようです。
作業場の前のブドウ棚にいた幼虫(芋虫)を
虫かごの中にいれておいた一匹が蛹になりました。



こっちの芋虫は別の種類です。
名はわかりません。
こちらは繭の中で蛹になったのですが、
途中で食べられてしまいました。




果樹農家としてはお恥ずかしい話ですが、
病害虫のため
今年も作業場前のブドウはほとんど食べられませんでした。
そのかわり岡山や山形のプロの作ったブドウをいただいたのですが、
巨峰のような大粒のブドウもみんな種なし。
高級ブドウだったのかもしれませんが、
お客様がそこまでのサービスを求めていることなのかとビックリ。

みんな種なしブドウになったら
物事が何も決まらなくなりそうです。