のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

産み手ならつくってみたい血が騒ぐ(のらやま通信240/1411)

2016年04月27日 | 農のあれこれ

出掛けたついでに東京ビッグサイトで行われていたアグロイノベーションというイベントに寄って来ました。農業の新しい潮流を概観するにはこういう展示会は最適です。せっかく近くで開かれているのですからその利点を生かさない手はありません。同種のイベントはいくつもあって、先月の幕張メッセのイベントはどちらかというと商談会、今回は新技術の発表会といった感じ。
今年のメインテーマは植物工場とICTを使った栽培管理システム。植物工場はわが家の経営としては当面検討対象外。ICTとはInformation and Communication Technologyの略で、情報通信技術を表すITにコミュニケーションの概念を加えた言葉。JGAPという農業生産工程を食の安全や環境保全の側面から管理する世界基準の認証制度があります。将来、JGAPを取得することを求められるでしょう。認証に際してはきちんとした栽培情報を管理することが求められます。農業経営者としては現在進行中の作業も含めた栽培履歴をクラウドデータで管理し、スタッフ間で共有、顧客へ公開するというICTの活用した栽培管理システムに取り組まねばと再認識させられたのですが、生産者としては新技術や新品種の方が気になります。
梨の新しい栽培技術としては、神奈川県から樹体ジョイント仕立て法と栃木県から根圏制限栽培法が発表されていました。どちらも数年前から公表されていて、前者は幹と幹をつなげていって(ジョイントして)、複数の根から一本の長―い幹を作ろうという技術。後者は果樹のポット栽培のようなもの。どちらも栽培管理の容易化、早期成園化、安定生産などを目的とする技術です。今後、借地で梨を栽培するようになると、不可欠な技術になるかもしれません。
ジョイント仕立てはわが家でもこの冬の苗木から少し試みるつもりでした。普通なら現地に出向いて担当者に時間をとってもらって聞かなければならないのに話を、今回は向こうから同じ所に来てくれて、しかも二ヶ所の現場責任者の話を聞けるのですから本当にありがたいことです。
梨の新種では、農研機構(国の果樹試験場)から「甘太」「凜夏」、神奈川県から「香麗」「なつみず」が発表されていました。「甘太」は「新高」に代わる品種。「凜夏」は気候温暖化に対応した品種。「香麗」は「幸水」より早く収穫できる品種。「なつみず」も「幸水」より少し早く収穫でき実の大きくなる品種。新しく登録される品種はどれもこれまでの品種にない特性があるもので、わが家としては「幸水」より早い品種を思案中。農研機構からも近いうちに早生品種がでるとかで楽しみです。
他の新品種をみると、キウイフルーツの新品種が複数の研究機関から発表されていました。神奈川県と東京都の研究機関からも。どちらも市街地のなかでも栽培しやすいという性質に着目しているということでしょうが、需要そのものがこれからも期待できるということもあるのかもしれません。
香川大学は自生しているシマサルナシとキウイフルーツを交雑させ、新品種を開発。小型でありながら糖度が高く、果皮に毛がなく皮を剥かずにそのまま食べられるというものでした。果皮は栄養価も高く、本場でもそういう食べ方をしていると聞いたことがあります。これは将来有望と苗木を手に入れることはできるかと聞くと、当面は香川県内に限るとか。香川県はキウイフルーツを特産にしようとしていて、この品種開発についても県のお金も投入されているとか。それでは仕方ありません。
ちなみに神奈川県は県の開発品種の栽培を県内に限るとはしていないそうです。キウイフルーツについては確認しませんでしたが、ナシはT県との比較で伺いました。神奈川県のナシは直売が多く、品種の知名度を高めるために、むしろ早く拡散するのを歓迎するとのことでした。なるほど地域それぞれの性格で戦略が違うようです。
加工用として注目したい品種もありました。オリーブの生産者が地域を越えて連携し、商品を開発、売り込みをしていました。国の農研機構でスモモとウメを掛け合わせて育成した「露茜」。その赤い色素に注目した和歌山県が加工品を開発。島根大学は地元で自生するダイコンを品種改良。辛味の薬味に使う「出雲おろち大根」と命名。登録品種名は「スサノオ」。相当に辛そうです。三重県鳥羽商工会議所は古来から自生する「タチバナ」に着目。永遠に香るといわれるその香りを生かしたオリジナル商品を特産品にしようとしていました。北海道からは海から陸に最初に上がったといわれる「シーベリー」を商品化。油成分は高級化粧品や皮膚疾患の薬に、ビタミンEと強い酸性は抗酸化作用のある加工品に、黄色い色素はお菓子業界にと応用範囲が広がります。
わが家でもどれか作ってみたくなりました。
(2014年11月)

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