のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

口びるを押しあつるごとくれなゐの椿ちりぬ手のひらの上(与謝野晶子)

2008年03月31日 | ネイチャースケッチ
当地のソメイヨシノもほぼ満開のようです。
わが家の門にある椿も真紅の花を咲かせていますが、
ひとつふたつと花を落とし始めました。

桜は花の散り様が潔いというような見方をされますが、
椿は赤い花びらが血に、ぽっとりと落ちる花が首切りに見立てられ
「死」をより強くイメージさせていることが多いようです。

たとえば

椿の木は葉のしげければぽつたりとつめたき音してつちにたふるる(若山牧水)

おめおめと生きながらへてくれなゐの山の椿に身をよせにけり(北原白秋)

墓場にはさくらも見えず椿かな(也有)


しかし、冬でも葉が日を照らして風よけとなり、
春に先がけて彩る花を咲かせ、
夏には黒い木陰と重い冷気を届け、
秋の実からは油もとれる…

いえ、油をとったことはありませんが、
椿は好きな花木です。

畠打や子が這ひ歩くつくし原(一茶)

2008年03月30日 | 今年の米づくり
畠打ではなく、田んぼの話です。

またまた雨が降るというので、急遽、畦塗り作業をしました。
今年は雨が多いからどうなるかと思っていたのですが、
思いのほか、土は乾燥していて、
2haぐらいの田んぼなら半日仕事。

友人から借りてきた機械でしたが、ありがたい機械です。
最新型は前モデルと比べると
たしかに便利に効率的になっているのですが、価格は2倍!
便利にするその機能が
はたして価格を2倍にするほどの効果はあるのか。

種俵緋鯉の水につけてあり(星野立子)

2008年03月29日 | 今年の納得米づくり
今年の米作りもいよいよ本格化。
今日は籾を選別して、殺菌効果のある温湯処理をして種浸し。

籾の選別といっても種籾を自家採取しているわけではありません。
購入種子を利用しています。
ですから出荷時にはすでに比重1.14?で選別されていて、
それでも問題なく発芽します。

機械を使って田植えをする場合、苗箱で育苗することになります。
普通は30cm×60cmの大きさの箱に種籾が200gぐらい。
10a当たり苗箱20枚として10a当たり4kgの種籾を用意します。
もし不良品が混じっていても
高密度な種籾でなんとか補完してくれます。

ところがわが家では大きな苗を育てるために超薄蒔き。
一箱当たり60gの籾量。
そこで、もし種籾に不良品が混じっていたら…

ということで、種籾のなかの健康優良児だけを選びに選ぶことに。
そこで、購入種子をさらに比重1.17で選別。
写真で横に浮いている籾は比重1.17以下の
充実度が相対的に低いもの。
沈んでいる籾だけを播種するようにします。

年によっては浮いてしまう籾が多く、
播種量が足りなくなることもあります。
今年の籾は90%以上が比重1.17の水に沈みました。
良い籾です。

桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命をかけてわが眺めたり(岡本かの子)

2008年03月28日 | 農のあれこれ
千葉駅に近い桜は満開のようでした。
今日は農地・水・環境フォーラムのパネラーの一人として
千葉に出かけていました。

農地・水・環境保全向上対策という事業が
全国で行われていまして、
今後さらに広めようと企画されたようです。
この対策は農地や農業用水基盤の管理保全を
地元の地域住民の方に担ってもらおうというものです。

見ようによっては、
業者委託してきた保全管理を
地域で替わりにやってもらい安く上げようとするものですが、
別の見方をすれば
崩壊寸前の農村社会を再生するきっかけになるかもしれない
事業ともいえます。

パネルディスカッションでは
市原市内陸部小港鉄道沿線で環境保全活動を行っている
市原ルネッサンス』が紹介されました。

確固とした組織があるわけでなく、
さまざまな団体の緩やかなネットワークで
NPO法人化も考えていないとのことでした。

動員された各地の重鎮たちには
消費者の視点でとか、消費者と交流して考えるというような
パネラーの発言はいま少し受けが良くなかった印象でしたが、
何人かは何かを感じていただけたかと思います。

草臥(くたびれ)を母とかたれば肩に乗る子猫もおもき春の宵かも(長塚節)

2008年03月27日 | 春の梨畑
東京ではソメイヨシノが満開になったようで
開花から五日目とは、やはり早い。
夕方6時ごろまで仕事ができるのですが
忙しくなりました。

ナシの花芽はいつの間にか蕾になってきています。

また今度、雨量がどれだけあるのかわからないので
急遽、納得米プロジェクトの元肥散布、耕うんを行いました。

見かぎりし古郷の桜咲きにけり(一茶)

2008年03月26日 | 農のあれこれ
手賀沼縁の桜もちらほらと咲きだしました。

七十二候の「桜始開 さくらはじめてひらく」は
昨日、今日あたりからのことのようですので
暦通りともいえるのでしょうが、
今年の桜の開花は予測以上に早まっているようですし、
札幌では3月としては百十何年ぶりの暖かい気温とか。

また気象庁は今日から竜巻情報も発表するようです。
雷とか台風と同じように注意報等が出されるといいます。
これから激しい天候が当たり前になるということを
暗示しているかのようです。


そんな温暖化や異常気象が心配されるなか
「農薬を使わない稲つくり」のメーリングリスト
最近、話題になっている写真とグラフがあります。

タイトル画像『ハゲワシと少女』という写真
飢えて力つきた少女を、ハゲワシがねらっている
というショッキングな場面です。
撮影者はケビン・カーター。撮影地はスーダン。
1994年のピュリツァー賞を受賞しています。

こんな光景がそれほど遠くない将来、身近になるかも…。
そんな未来予測を国立の環境研究所がしているそうです。

         

年とともに資源がなくなり、人口が爆発的に増加、
工業生産が今のまま進むと環境の汚染がある時点から急激に拡大する。
工業生産は行き詰まり急速に低落、飢餓がやってきて、
急増していた世界の人口もここから顕著に減少を始める。
その後地球の汚染が一気に拡大し、
この時点で人間が生きていくには非常に厳しい環境に変わる。
その時期が2030年前後。
『2030年問題』とか『破局のシナリオ』とか呼ばれています。

生産に限りがある食料とエネルギー資源の奪い合いで、
世界中で大混乱が起こると予測され、
このときのために日本はいかに備えるのか。

もっと広く環境の2030年問題を知ってもらえるよう
写真とグラフを転載させていただきました。

霞みつつ辛夷の花はなほも白く(山口青邨)

2008年03月25日 | 今年の納得米づくり
暖かい日になりました。4月並みの気温だったようです。
朝9時過ぎまで一帯が靄(もや)に覆われ、
走る車もライトをつけるくらいでした。

そんな白い空のなかでコブシが白い花を咲かせています。

それにしても今年の3月は雨がふります。
ここ数日は3日、4日置きに降り、
しかも大きな雨になっています。
芽だしの慈雨ではあるのですが、雨量が多すぎます。

おかげで田んぼに機械が入れず仕事が滞っています。
いつもならこの時期、よく乾燥しています。
畦塗り機を走らせる条件になかなかならず困るのですが、
今年は逆に土に水分が多すぎて入るタイミングがとれません。

納得米プロジェクトでも先週末に元肥のぼかし肥を散布し、
再度耕す予定をしていました。
そろそろ播種の準備もしなければならず、
一片に作業を片付けなければならなくなりそうです。

庭先に老いたるウサギあわれかな恋にはうとく木肌喰いにくる

2008年03月23日 | 冬の梨畑
元歌 奈良の町に老いたる鹿のあはれかな恋にはうとく豆腐糟喰いに来る(正岡子規)

剪定の際に切り落としたナシの中枝
(小枝でも大枝でもないので)
を畑に転がしておいたところ、
上向きになっている部分の
木肌、表皮だけが何者かに削り取られています。

はじめは気がつきませんでした。
しかし、日がたつにつれてその数が増えていきます。
この上を何か機械が通ったわけではありませんし、
のこぎりや鋏でわざわざ削り取ったわけでもありません。

考えられるのは
ノウサギがかじっているのではないかということです。

えさのなくなった冬季、シカなどが皮をかじり
幼木や苗木が枯れてしまうという話を聞いたことがあります。
昨夏、視察にいった大分県日田市の梨園でも食害防止の柵を
苗木のまわりに設けていました。

表皮のけずられた部分をみると
前歯でかじったような跡がありまして
ノウサギであろうと思うのですが、
まさかもっと大きな野生動物?

もうひとつの疑問。
なぜ切り落とした枝の表皮だけをかじるのか。
立っている苗木や幼木の表皮をなぜかじらないのか。
まさかノウサギは首を90度横に傾けられないわけでもありますまい。

でも、本当に苗木や幼木の表皮をなぜかじられるようになったら
またまた害獣が…

去年も咲ことしも咲や桜の木(鬼貫)

2008年03月22日 | 春の梨畑
都心では桜の開花宣言とか。
東京で咲いてから5日から一週間ぐらいで
このあたりでも開きだします。
その年の気温にもよりますが。

ナシはさらにそれから少し遅れます。
でも枝によっては花芽がほぐれ、
中の蕾の形が見えてきたものもあります。

定点観測している花芽も
16日と比べると花芽がほぐれてきました。
今年もナシは花を咲いてくれるのでしょうが、
まだ剪定が終わっていない…

乳垂るる妻となりつも草の餅(芥川龍之介)

2008年03月20日 | アグリママ
もう彼岸になってしまったのですが、
わが家でもそろそろ草もちを道の駅直売所へ出荷しようかと
今朝は草もち作りの予行演習。

あちこちの農産物直売所では、この時期、
一人や二人、草もちを出荷しています。
近隣直売所での先輩方の作り方のポイントを聞いてきて
今年はこれまでよりももっと美味しいものにしたいと模索中です。

要は水加減のようです。
お金をいただくわけですから品質も安定していなければなりません。
昨日はおいしかったけど、今日はいまひとつ…
というのではいけません。

感に頼るのでなくきちんと数字を積み上げ、
ある程度のものができる自信がつけば
そこではじめて感が働くというものでしょう。
わが家はまだまだ修行の日々が続きます。

タイトルについて
妻は垂れるほどはないと申しております。

霞んだり曇つたり日の長さ哉(正岡子規)

2008年03月19日 | 農のあれこれ
曇り空のもとで水仙の黄色が鮮やかに光っていました。

三回目の桜の開花予想、
このところの暖かさでやはり早まりました。
剪定作業も尻に火がついて気ばかりが焦っていますが、
鮮やかな黄色が一瞬和ませてくれます。


ところで、17日の朝日新聞の社説は
農業を「成長産業」に変えよう
というタイトルでした。

希望社会への提言シリーズのひとつで
・コメの生産調整をやめ、増産へ大転換しよう
・やる気のある農家は政府の直接保障で支える
という主張のようです。

農業再生で地域活性化の核になるという“産業”振興の視点では
経営の大規模化、効率化、企業化、農地の流動化が必要でしょう。
ぜひとも推進してほしい方策です。

しかし、食の安全や食糧安全保障、環境や農村の景観維持の
視点から考えると、
成長産業に育成するだけでは実現できない目標があるように思います。

ガーデニングブームの延長上に自給菜園の確立をという主張とか、
新規就農者の多くが有機農法をめざすとか、
食の安全に関する事件がおこるたびに
農産物直売所での売り上げが急増するとか、
もうひとつの視点からの農業振興の必要性を裏付けていないでしょうか。

わが家の父が関わっている手賀沼トラストという市民団体では
農家と地域住民の「協働」により
農村環境を保全維持しようと試みてきました。

今年6年目を迎える我が家の納得米プロジェクトでは
非農家の方々が自給用のコメを自ら栽培するという方法を模索しています。

これまでの家族経営による農業でもなく
これから求められるという企業経営による農業でもなく
もうひとつの農業経営。
多くの方が関わるということから農業法人という形態に
なると思いますが、
自給型農業法人というか、環境管理農業法人というか。

農地、機械、施設を有する農家が核となりながらも
非農家の方々も構成メンバーとなり、
場合によっては非農家の方が農家の資格をとって、
とくにリタイアした人たちによって
入れ替わり立ち代り引き継がれていくような経営
の可能性はないでしょうか。

わが家の経験では、非農家との「協働」は
慣行農法では見えなかったものが見えてくるという
農家自身の「食育」になっているように思います。
当然、確固とした地産地消システム、地域経済システムとなっています。
そして、農家後継者はなくとも農業後継者は確保される、
生きている土を守ることで人の命もつながっていく、
そんな「いのちの連鎖」システムができてくるような気がします。

つまこふるかはづのこゑの一こゑのはてのなげきにたへずもあるかな(大隈言道)

2008年03月18日 | ネイチャースケッチ
日の入りは17時51分になったそうで、
18時ごろまで外で仕事ができるようになりました。

上弦を過ぎた月光はあたりを照らすには十分でした。
なにやら、池(ただの水溜め)の方で
鳴き声が聞こえます。

携帯ライトを当ててみると二組と一匹のヒキガエル。
あぶれた一匹がカップルにちょっかいを出して
追いかけまわしていました。

夜露もなくなったようです。
春です。

ナシの芽も緑さしたる彼岸かな

2008年03月16日 | 春の梨畑
気温も20度近くまで上がり、いよいよ春本番。
玄関前にあるジンチョウゲも独特のにおいを発散しています。

今年の冬は十分寒かったものですから
昨年のような休眠打破ができないというようなことはなく、
この暖かさでナシの芽もどんどん膨らんでいます。
花芽の外皮が剥けてきて
隠れていた白い部分や緑の部分が覗いているものもあります。

昨年は幸水の花芽から収穫までを定点観測しましたが、
今年は豊水に注目。
本日第1回目、「動き出した花芽」です。
開花予想は、桜開花後1週間。4月10日ごろ?

明日はもう彼岸の入り。
彼岸までにナシの剪定を終わらせるという計画でしたが、
とてもとても。
まだ一週間から十日はかかりそうです。
次の目標は「開花までに終わらせる」。

タイトル元句  竹の芽も茜さしたる彼岸かな (芥川龍之介)

この恩はおまえの子らに還せよと娘を送る梅かおる朝

2008年03月15日 | わが家の時時
長女の高校の卒業式でした。
いろいろと話題を提供してくれた学園生活でした。

壇上に上がるというので一家総出ででかけていきました。
おとうさん、おかあさん、ありがとうと
呼びかけられ、ちょっと涙ぐんでしまいました。

タイトルは先日の歌会で
全員からポイントをいただいた記念すべき歌です。

親に還せよといいたいところ、ぐっとやせ我慢。
そんな感情も伝われば幸いです。

鶯の木伝ふ梅のうつろへば桜の花の時片設けぬ(作者不詳;万葉集)

2008年03月13日 | 農のあれこれ
カワズザクラも三分咲き程度まで開いてきました。
梅は散り始めました。
ナシの芽も膨らんできたことが
いよいよわかるようになりました。


そんな春気分とは裏腹に
柏市の農家には激震が走りました。

柏市内で生産されたカブで残留農薬が検出されたと
マスコミ報道されました。
これからどのような影響がでるか
皆きょうきょうとしている感じです。

作為的な原因ではないとしても違法は違法。
ドリフト(農薬の飛散)では
だれもが当事者になりうる可能性があります。
より一層、順法を旨とする心構えが求められます。