どの新聞も、野田新首相に関連した記事で占められているが、
僕にはそれ以上に関心深い記事が、後ろのほうの紙面にあった。
今日の新聞の地方版、僕のところは「大阪河内版」なんだけど、
この紙面の一番下の段に、小さく載っている記事に注目した。
「松原市議会正副議長決まる」という見出しの記事だ。
昨日、大阪府松原市で開催された臨時市議会で、
新しい議長と副議長が決まった…ということが、
ひっそりと、小さく報じられていた。
昨日の午後、衆参両院で首相指名の投票が行われていたころ、
大阪府の片隅の松原市でも、市議会議長を決める投票が行われていた。
地方議会の正副議長の任期は、地方自治法では4年であるが、
日本全国ほとんどの議会は、申し合わせにより1年交代と決めている。
まあ、議員になった限り議長になりたい、というのは人情であろう。
議長になったら、地元の人たちにも顔向けが出来る。
議員を何年務めても議長にならない(なれない)議員であれば、
地元の支援者から「なんで議長になられへんねん」と責められたりする。
だから、なるべくなら、一度でいいから議長をやっておきたい。
議長の任期を法律どおり4年にすると、順番がなかなか回ってこない。
そこで、申し合わせで、1年で交代しよう、という約束事を作るのだ。
でも、自分が議長になりたくても、他の議員の協力がいるので難しい。
だから、議長になれるのは大きな会派(あるいは党派)に属する、
ということがまず必要だ。いくら能力があっても、数がなければダメ。
逆に能力がなくても、大きな会派で何期か過ごすと自然に順番が回ってくる。
つまり「人格・識見において議長にふさわしい人」を選ぶというより、
大きな会派の中で古い者を順番に議長に選んで行く、というものなのだ。
松原市といえば、僕が38年間勤めた市である。
そのうち、26年間を市議会事務局の職員として過ごした。
だから退職した今でも、松原市議会と聞けば身体がピクッと反応する。
そして昨日臨時市議会があって、そこで新しい議長が誕生したわけだが、
職員の方からメールで「速報」をいただき、状況を知ることができた。
その速報に接して、今回は大いに驚いた。
今回の新議長さんは、先に述べたような大きな会派の議員ではなかった。
わずか2人しかいない少数会派の議員だったのに、議長に選ばれたのだ。
しかもその人は、僕と今でも親しくおつき合いをいただいている方だ。
「仲間」としてこのブログにも何度も仮名で登場してもらっている。
僕の知るところでは、この人は、19人の松原市議会議員の中でも、
最も良識に富む人で、党利党略に偏らず、人を愛し、自然を愛し、
地域を愛する人で、多くの人々から尊敬され、敬愛されている。
それはもう、とても人望の厚い議員である。
読書好きで、登山好きで、お酒好きでもある。
僕の在職中も、職員の間で最も評判の高い議員だった。
まさに今の松原市議会で、最も議長としてふさわしい人である。
夕方、その新議長さんの携帯にお祝いの電話をかけた。
「ありがとう、ありがとう」と喜んでおられた。
その弾んだ声を聞いて、僕まで気持ちがワクワクしてきた。
いかに優れた人物であっても「数」がなければ議長になれない…。
これまで、そういうやりきれない構図があったけれど、
今回、見事にその「常識」が覆された。
量より質。人数力より人間力。
わかりきったことだけど、いざ実行するとなると、むずかしいものである。
どういう経緯でそうなったかは、その場にいなかったのでわからないが、
今回の議長選挙は、旧弊を打ち破った意義のあるものだったと思う。
元議長は議員を辞職しましたね。
あれは、個人的にやったとしては、ちょっとおかしいと思います。
自分に票を入れてくれ、というのだったらわかりますが、
同じ会派の人間を…ということだったので、
ひょっとして、会派として決めて、それを元議長がやった、と。
あとは自分が一人かぶって辞めた…ということでは、
と古畑チン三郎は思うのでつ~
ともあれ、結果としては、よかったと思います。