ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

ミンスク市内中央部で爆発事件  続報

2008-07-05 | ベラルーシ旅行・長期滞在・留学注意情報
 7月4日午前0時半ごろ、ミンスク市内中央部で発生した爆弾爆発事件の続報です。
 その後の調査の結果、現場となったコンサート会場で、爆発しなかった爆弾1個が発見されました。「爆弾」というより「爆破装置」のようです。
 4日に爆発したのも爆弾ではなく、このような爆破装置だった可能性が高いです。
 ちなみに爆発したものは時限爆弾ではなく、衝撃を与えると爆発する仕掛けになっていたようです。そういう爆破装置を、大勢の観客が集まるコンサート会場の、観客の足元に置いたわけです。音楽を聴きながら、踊ったりする人もいるわけで、そういう人がうっかり足で蹴飛ばしたら、爆発するように仕掛けていたのです。
 卑劣な犯行ですね。

 会場にいたルカシェンコ大統領は爆発があった場所から100メートルぐらい離れたところでステージを見ていました。
 爆発の後は、恐れることなく、爆発が起こった場所に近づいて、負傷者救援の指揮を取ったそうですが、もし、もう一つの爆弾が爆発していたら・・・
 
 負傷者の数はミンスク市警察当局の発表では37人ですが、ニュースなどでは50人以上、としているところもあります。
 爆弾に詰められていたネジやボルトが体に当たったり、騒ぎの中で逃げようとして転倒して、怪我をした人がほとんどです。そのうち胸部(肺)や腹部(肝臓)にネジなど金属片が刺さった3名が重体、あるいは重傷。
 その多くはベラルーシ人の若者で、2人の幼児(6歳と5歳の子ども。まあ、私だったら幼い子どもを連れて夜中の12時過ぎまでコンサートを聞きに行ったりしませんねえ。)、そして負傷者の中にはロシア人画1名、ウクライナ人が3名含まれていました。また会場の警備に当たっていた警官3名も負傷した、という情報もあります。

 爆発が起こったとき、ウクライナ出身で、現在ロシアで活躍している歌手、タイシヤ・ポバリーがステージで歌っていたのですが、その音響が大きく、爆発が起こったとき、爆発音は音楽や観客の歓声のため、よく聞こえなかったそうです。
 会場にはそのとき約15万人の観客がいたと言う情報がありますが、爆発が起こったことにすぐ気がついたのは、負傷者やその近くにいた人で、大きなパニックは起こらなかったそうです。
 コンサート自体はその後も続き、終了したのは午前3時ごろでした。大体、爆発が起こった後も、コンサート自体を続行するべきではありませんでしたね。もう一つ爆弾があったのが後で見つかったのですから。

 容疑者はまだ見つかっていませんが、
「色黒の男がビニール袋を爆発が起こった現場に置いて行った。」
という複数証言があり、重要参考人としてモンタージュ写真を作成するそうです。また、この男が負傷者となって、病院に収容されている可能性も示唆されています。
そのため、警察は入院した負傷者全員の指紋を採取したそうです。

 一方で怪しい人物を見かけた、という証言が多数あり、単独犯ではなく、複数犯である可能性も示唆されています。
 またミンスク市警察当局では爆発事故が起こったのがコンサートの真っ最中だったこともあり、デジカメでステージの様子を撮影していた観客がいたこともあって、不審な人物を偶然画像や動画で撮影していた人がいたら、情報を提供するよう、捜査への協力を呼びかけています。
(その後、13人の容疑者が取調べを受けたと言う報道がありましたが、犯人逮捕に至るかどうかは今のところでは不明です。)
 
 さて、この「色黒」というのは何かというと、ベラルーシでは、非スラブ人、アラブ系やコーカサス周辺国の民族を指すことが多いです。
 本当にこの人物が爆弾を置いたのかどうか分かりません。何となく、
「爆弾」→「テロ」→「ロシアにおけるチェチェン人テロリスト」→「色黒」というベラルーシ人の連想からきた証言のような気がします。
 だいたい、ベラルーシにはロシアにおけるチェチェンの独立問題のような、民族紛争がありません。
 またチェチェン人テロリストがロシアの隣国ベラルーシでテロ活動をすることは、意味がないように思えます。

 もっとも、犯人も捕まっておらず、犯行声明の発表などもないまま、ミンスク市警察当局は、騒ぎを狙った犯行、つまり政治的な目的はない、と考えていること自体が、おかしいと言えばおかしいです。何を根拠に無差別テロではない、と考えているのでしょう?

 ルカシェンコ大統領は、この爆発は(暗殺など)自分を狙ったものではなく、独立記念日という祝日を気に入らないという人物が、善良な市民を狙い、パニックを起こそうとしたものである、と話しています。
 しかし、ボルトなどをたくさん詰めて殺傷力を高めた爆弾で、単なるいたずらにしてはずいぶん悪質です。
 犯人の捜査にはミンスク市警察のほか、ベラルーシのKGB、ロシアの特別捜査官も協力しているそうなので、実際には「単なるいたずら」と考えて容疑者の捜索をしているのではないようです。さらには
「必要とあれば、犯人探しのため、アメリカの特別捜査の協力を受けることもありうる。」
と(あのアメリカ嫌いの)ルカシェンコ大統領が話しています。

 ただ、ベラルーシの首都ミンスクでこのような無差別に不特定多数の群集を狙った、爆弾事件が発生したのは、今回が初めてです。
 7、8年前にミンスクの空港に爆発物をしかけた、という爆破予告電話があって、空港が閉鎖されましたが、実際には何も爆発物は発見されませんでした。
 また、在ベラルーシロシア大使館に手榴弾が投げ込まれたこともありましたが、大勢の群集を無差別に狙った事件ではありません。

 ただし2005年にビテプスクで、2回の連続爆破事件が起こりました。1回目はバス停のそばの花壇に隠されていた爆発物が爆発し、2人が負傷。
 2回目は市内の大型オープンカフェのそばの花壇の中に隠されていた爆発物が爆発し、46人が負傷。
 このときはルカシェンコ大統領は、連続テロ事件の可能性があるとして国民に注意を呼びかけました。犯人は捕まっておらず、犯行声明も発表されず、事件は未解決のままです。
 これは3年前の事件ですが、今回の事件と同じように爆発物にネジなどが詰められていたそうで、共通点もあります。

 ベラルーシでは7月3日木曜日が祝日であるため、4日の代わりに6月28日を就労日に振り替え、3日から6日まで4連休になっています。
 連日独立記念イベントが開催される予定ですが、今回の爆発事故を受けて、イベントの開催を取りやめるようなことはしない、と政府当局は発表。ただし、各会場の警備を強化するそうです。
 4日の昼間、ミンスク市内を車で移動しましたが、市内に特に混乱や異常はなく、屋台が立ったりと、予定通りにイベントが開催されていました。
 ミンスク市内の大部分に非常線が張られた、という日本語ニュースサイトによる情報もありますが、そのようなものは私は見かけませんでした。
 
 添付した画像は事故が発生してから約12時間後に撮影した事故現場のコンサート会場です。
 ここにも非常線や立ち入り禁止のロープなどは張られていませんでした。すでに現場検証も終わり、特設ステージを解体する作業が行われていました。

 こちらのニュースサイトで事故発生直後、そして夜が明けてからの現場検証の様子などが7枚の画像で見られます。

http://focus.in.ua/gallery/40149/page/0/0.html



 とにかく、事件の全容が解明されるまでは、しばらく注意が必要ですね。
 この夏、ベラルーシへ旅行に行く予定の方は、以下の日本外務省の渡航情報などご参考にしてください。

http://www.anzen.mofa.go.jp/info/info.asp?num=2008C224


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 さて、ここから先の書き込みは爆発事件から約1年経過した2009年6月末のものです。
 必死の捜査にもかかわらず、今でもこの事件の犯人は見つかっていません。
 現在、ベラルーシでの成人男性全員の指紋が採取されているそうです。さらにはDNAも採取するため、唾液まで集めています。
 今のところ、S夫には順番が来ていないそうで、本人も
「え、指紋なんか集めてるの?」
と知らなかったそうですが、すでに指紋を取られた人もたくさんいるようです。
 もっとも、拒否する権利があり、その場合は「指紋の採取を拒否します。」という書類にサインしないといけないそうです。
 
 こんなことをして本当に爆発事件の犯人が見つかるのかなあ・・・? 国外に逃亡していた場合はどうなるの?
「何も悪いことをしていない一般市民の指紋を、成人男性というだけで採取するのは人権侵害だ!」
と怒るベラルーシ人もいます。確かに。

 でも、私が思うにこれは爆破事件の犯人を捕まえるため、と言うより将来の犯罪を防止するため、あるいは犯人検挙率を上げるためなのではないでしょうか?
(こういうことを言うと、S夫は
「てことは将来、男じゃなく女が犯罪を犯すようになるんだな。捕まりにくくなるから。」と言っております。あのねえ・・・。)

 日本でも犯罪防止、あるいは犯人をすぐに捕まえることができるように
「国民全員に個人番号をつけて、DNAをデータ化せよ。」
といった極論を唱える人もいます。反論すると
「だったら犯罪を犯さなきゃいいだけのこと。それとも何か? 今から犯罪を計画しているとか?」
と再反論されます。
 (しかしDNA鑑定結果だけに頼ってはいけない、という事件が日本でも起こりましたからねえ・・・。)

 こういう国民が管理される社会、日本よりもベラルーシのほうが先に実現するかもしれません。それでベラルーシで本当に犯罪が減るのか、検挙率が上がるのか、知りたいところではあります。  

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 ここからは2009年7月に追加した情報です。
 成人男性だけではなく、女性も指紋を採取されているそうです。ただし女性の場合は、爆発事件が発生した前後に、現場の近くで携帯電話で通話をしたことのある人に限定されています。
 たまたまお祭の会場近くに来ていて、たまたま事件発生前後に友達と携帯でおしゃべりしていただけで、指紋を採取されるのです。
 S夫の知り合いの奥さんは、指紋の採取を拒否しました。
 それはともかく、携帯電話の通話記録って、(日本もそうだけど)いつどこにいたのか調べれば簡単に居場所が分かる、という意味で、国家が国民を管理できるということですよね・・・。
 

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