ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

夫婦別姓 ベラルーシでは

2015-12-17 | ベラルーシ生活
 日本では夫婦同姓は合憲、という判断が示されました。
 ベラルーシの場合はもちろん夫婦別姓が認められています。
 ちなみに私たち夫婦も別姓です。
 日本人でも外国人と結婚すると、別姓が認められます。つまり日本人の苗字のままにしてもよいわけです。
 だから結婚しても夫婦別姓のままでいたい! と言う方は国際結婚しましょう・・・というのは冗談です。(^^;)別姓にしたいから無理やり外国人と結婚するわけにもいきませんからねえ。
 
 私としては選べるようにしたらいいのにと思います。個人の権利や苗字選択の自由があるほうが21世紀社会だと思います。
 ただ一つ気になる点があります。
 それは後回しにして、ベラルーシではこんな状況だとまずご紹介します。

 そもそもベラルーシは日本と同じ父系社会です。
 昔は結婚すると、妻が夫の姓に変えるのが当然でした。
(例外。貴族は二重姓、つまり夫の苗字と妻の苗字を合体させた苗字を使うことがあった。ベラルーシに住んでいてもユダヤ系は母系社会であるため、妻の苗字が優先されることが多かった。)

 しかしソ連社会になり男女平等が謳われるようになり、姓を選択できるようになりました。
 同性にしてもいいし、別姓にしてもいいわけですが、実際妻が別姓を選ぶのがこういう場合です。
 独身の頃から著名なスポーツ選手などでその苗字が広く知られている場合。
 妻の家系が元貴族、妻の実家が有名人一家など、その苗字が有名でステータスを持っている場合。
 夫のほうの苗字の意味が変だったりかっこ悪い場合。(「馬鹿」とか「犬」とか「ごきぶり」とかそういう苗字がたまにあります。)

 こういうケースは少数派です。
 そんなわけで、選べるといっても結局夫のほうの苗字に変えるというケースがほとんど。
 子どもももちろんお父さんの苗字をもらいます。

 次にもし夫婦別姓となった場合、子どもの苗字はどうなるの?という問題が起きます。
 その場合、子どもの苗字を父と同じにするのか、あるいは母と同じにするのか選べます。
 しかしベラルーシの場合、もともと父系社会なので、父親と同じ苗字にすることが多いです。
 でも赤ちゃんのときに親が決めるものであって、本人が決められません。そこで、もし子どもが成人したときに、
「父親からもらった今の苗字を母親の苗字に変えたい。」(あるいは母親の苗字を父親の苗字に変える)ことは手続きさえすればできます。

 ついでにいうと、兄弟で違う苗字をつけることもできます。例えば長男の苗字は父親の苗字。次男の苗字は母親の苗字、ということもできます。

 次にもし離婚となった場合、日本では妻は旧姓に戻すのが普通だと思います。
 しかしベラルーシでは同性にしていた夫婦が離婚後、旧姓に戻るのか、それとも夫の姓を名乗り続けるのか選べます。
 日本人の感覚からすると、感情的に
「夫が大嫌い → 離婚 → 嫌いな元夫の苗字を名乗り続けるなんて絶対イヤ!」
と思いますが、ベラルーシ人の場合、
「パスポートも夫の苗字になっているし、変更するの面倒くさい。」
などの理由により、離婚後も元夫の苗字を名乗り続ける人がいます。

 離婚して母親が子どもを引き取っても、子どもの姓は元夫のまま・・・というパターンがほとんどです。

 さて、ここで日本の夫婦別姓についてです。
 私が子どもの頃、こういう知り合いがいました。仮名ですが、山田さんと鈴木さんが結婚して、妻の鈴木さんが山田さんになりました。その後男の子が2人生まれました。山田お父さんは一人っ子。山田お母さんはお兄さんがいて鈴木家を継いでいました。しかしお兄さんには子どもが生まれませんでした。
 長男のほうは山田家を継ぎますが、鈴木家を継ぐ人がいないので、次男のほうを鈴木家へ養子に出しました。
 次男の苗字は鈴木になりました。しかしまだ未成年なので山田家で生みの両親に育てられています。
 つまり家族の中で1人だけ苗字がちがうのです。
 そして法律上の両親はおじさん夫婦です。

 今日本では一人っ子が増えています。しかも「苗字を残してほしい。家名を絶えさせてしまってはご先祖様に申し訳が立たぬ。」という慣習にとらわれている家庭が多い場合、日本で夫婦別姓を認めたとしても、子ども、つまり兄弟の苗字は統一しろ、という決まりのままだと、結局は別姓選択の価値が減ってしまうと思います。

 (日本社会が変わって「うちの苗字? 別になくなってしまってもかまわんよ。」という人が大部分になれば、こういう条件は抜きで考えればいいと思いますが。)

 夫婦別姓反対派の意見の中に「一つの家族の中で苗字がばらばらだと家族の絆が弱まる。一体感がなくなる。」と言う意見がありますが、上記のケースのように家族の中で苗字が違う場合はすでに存在しており、そのせいで家族の仲が悪いとは限らないのではないでしょうか。
 
 江戸時代なんて家族の中で苗字がばらばら、というケースはしょっちゅうあっただろうと思いますが、かといって親子の情が少なかったとか、そういうことはなかったと思います。

 大体世の中を見渡せば、同じ苗字を名乗っている夫婦の間が冷め切っていたり、同じ苗字を名乗っている親子の間で家庭内暴力とか殺人とかいっぱいありますよ。
 苗字が同じだから家族の絆が強くて仲がいいとは限りません。

 ですから家族の中で苗字が違っていてもいいと思うし、偏見の目で見ないほうがいいと思います。

 日本社会にあった夫婦別姓を認めるのであれば、子どもの苗字も個々に、どちらの姓を名乗らせるのかこれも選択できるようにする・・・この二つをセットにしなければ、夫婦別姓の権利が持つ価値が減ってしまうと思います。

 余談になりますが、国際結婚すると二重姓も認められます。
 「スミス・山田」という感じの苗字になります。
 私はベラルーシで結婚したので、婚姻関係の書類を日本大使館経由で提出しなければなりませんでした。
 大使館へ行くと担当の大使館員が「結婚後の苗字は二重姓にしなさい。」としつこく勧めてきました。
 そのほうがメリットあるのに、というアドバイスだったのかもしれませんが、あまりのしつこさにかえって怪しく思った私は「いえ、二重姓にはしません。旧姓のままにします!」と記入して書類を提出しました。
 大使館員は残念そうにしていました。
 あれは何だったのでしょう?
 いまだに謎ですが、外国人と結婚した日本人の差別化を図っているように感じ、不愉快でした。

 このようなわけで、私は苗字を変えていないのですが、それで満足しています。
 日本のケースですが「結婚して苗字が変わり、本人確認できないので、年金がもらえない。」などというニュースを聞くと、ベラルーシにも似たようなケースがあるので、名前を一切変えず、本当によかったと思います。

 子どもにも私の姓を名乗らせたので、ご先祖様への責務も果たしましたよ、私は。
 今後どうなるか分かりませんが、うちの子も結婚後、苗字は変えたくないと言っています。(日本人男性と結婚する場合、日本の法律に沿った選択をしないといけませんけどね。)

 家族の中で1人苗字が違う夫ですが、別に疎外感なんて感じていません。
 そもそもベラルーシではよっぽど著名な家系でもない限り、先祖代々子々孫々家名を残さねば、というような意識がありません。だから気楽な社会です。(^^;)