4月18日から20日の3日間、日本の伝統楽器、笙の演奏家である真鍋尚之さんがベラルーシを訪問されました。
真鍋先生のHPはこちらです。
「笙って何?」
と思った方もぜひこちらをごらん下さい。
http://www2.odn.ne.jp/gagaku.manabe/index.html
真鍋先生は1年前から文化庁文化交流大使としてドイツに滞在しており、コンサートやワークショップのためにヨーロッパ各国を訪問されています。昨年12月にはロシア・モスクワを訪問したのですが、そのときロシア人がメンバーなのですが、日本の伝統楽器を演奏しているグループ「WA-ON(和音)」と共演しました。
それがきっかけで、ベラルーシのミンスクでもコンサートやワークショップを・・・という話が出て、今回実現したのですが・・・。
実はこの「WA-ON」から私のところへ1ヶ月前電話があり、真鍋先生の通訳を頼まれたのです。
「WA-ON」には日本外務省所管の国際交流基金のモスクワ支部の方から連絡が来て
「ミンスクで通訳がいるから適当な人を知らないか?」
という依頼がきたのです。
最初は「同時通訳できる人」という条件だったので、断ったのですが「逐次訳」でもいいと言われて、承諾しました。
それで私の氏名や電話番号、メールアドレス、HPのアドレスなどが全て、国際交流基金のモスクワ支部に伝えられ、通訳料も国際交流基金の予算として計上されることになりました。
さらに「WA-ON」もモスクワからミンスクへ行って合流し、真鍋先生と共演することになったのですが、その往復交通費も国際交流基金から出ることになりました。
ベラルーシへはめったに日本の演奏家が来ませんし、「WA-ON」もミンスクでの初めての演奏、ということで、期待に胸ふくらましていたわけです。
ちなみに「WA-ON」のHPはこちらです。(英語バージョン)
ロシア人ですが着物を着て、お琴に太鼓・・・すごいです。ベラルーシにはない・・・。そしてWA-ONのリーダーが真鍋先生のブログにも登場するモスクワ音楽院のカラティギナさんです。
http://www.worldmusiccenter.ru/en/wa
ところが、ミンスクに全員集合する日から数えて5日前、別件でミンスクにある日本大使館から電話がかかってきました。
別件というのはチェルノブイリ関係の日本人団体がベラルーシに来るけれど、頼んでいた通訳が急に行けなくなったので、代役として来週1週間ほどゴメリに行けないか? という問い合わせでした。
でも私は真鍋先生の通訳が入っているので、ミンスクを離れられないので断ったのです。
すると大使館員さんはびっくりして
「真鍋先生の通訳は大使館が見つけたベラルーシ人の学生がすることになっており、しかも通訳料は無料ということになっている。」ということでした。
「Tさんは誰から頼まれたのですか?」
ときかれたので、モスクワの「WA-ON」で、しかも「WA-ON」は共演することになっているでしょう? と尋ねると、大使館側は「共演なんて聞いていない。」
と言うのです。
どうなってるの? 分かりやすく言えば、国際交流基金のモスクワ支部が立てたプラン(と予算)さらに、在ベラルーシ日本大使館が立てたプランの二つが存在している、という状態で、しかもお互いの連絡が全くなかったようなのです。
しょうがないので、私は通訳を辞退し、そのことをモスクワの「WA-ON」に伝えました。
「WA-ON」のほうも在ベラルーシ日本大使館が立てたプラン(共演のコンサートの予定なしのプラン。)について全く知りませんでした。
私は在ベラルーシ日本大使館に「WA-ON」のほうにそちらの予定とか通訳は誰がするのか氏名など伝えてほしい、と頼みました。電話口では「分かりました。」と言っていましたが、その後、「WA-ON」メンバーに聞いたら
「在ベラルーシ日本大使館側からは何の連絡も受けていない。」
と言っていました。
出発前の混乱ぶりは真鍋先生のブログでもうかがえます。
http://www2.odn.ne.jp/gagaku.manabe/manabe.html
このブログですが、ちょっと分かりにくいので、HP目次の「戯言」をクリックして、ブログへ飛んでください。それから左側の過去記事「2012年4月」をクリックして、記事のタイトル
「4泊5回」「Minsk1」「ミンスク~カールスルーエ~ケルンまで・・・ 」
をご覧ください。
宿泊先のホテル名も事前に連絡なかったんですね。
18日お昼には「WA-ON」もモスクワからミンスクに到着したのに、その24時間後に私に電話があってきいたら
「真鍋先生もミンスクに着ているはずなのに、居所が分からない。宿泊先のホテルも分からない。在ベラルーシ日本大使館側の人間にも会っていない。」
と嘆いていました。
結局3日間の滞在中、「WA-ON」メンバーと在ベラルーシ日本大使館側の人間は全く会うこともありませんでした。
こうして二つの主催者による二つのプランが、ぐちゃぐちゃな状態で始まりました。真鍋先生のブログにある成功したワークショップ、というのは、「WA-ON」側がベラルーシ音楽院とセットしたものです。
画像がこちらで見られます。
http://veleskevich.com/naoyuki-manabe-bgam
私は同じ日の夕方にベラルーシ音楽院内で行われたコンサートに行ってきました。
めったに聞けない楽器の演奏が目の前で聞けて、本当に運がよかったです。もう少し人が集まってほしかったのですが、何せ事前の準備がぐちゃぐちゃだったので、全く予定が早めに立てられず、「WA-ON」メンバーから最初は
「午後2時開始です。」
と言われていたのですが、当日の朝電話があって
「Tさん、5時になりました。」
昼には
「7時に変更になりました。」
と連絡が来たぐらいです。
私ももっと知り合いに声をかけたかったのですが、時間も直前になるまで分からないので、宣伝もままならない状態でした。
「ミンスクに着いても、真鍋先生にはすぐ会えないし、日本大使館側は会おうともしてくれないから、こちらの予定が立てられない。」
とWA-ONメンバーはとても困っていました。
でも笙の音色に感動して、(特に細い竹の筒なのに、とても大きい音が出るので驚きました。魔法みたい・・・。)これは娘にも聞かせたい、と思い、最終日にあった(今度は)日本大使館側がセットしたコンサートのほうに娘を連れて行きました。
そのときのようす(さらには裏話)は真鍋先生のブログに詳しく書いてありますので、そちらをご覧ください。
見ていて思ったんですが、会場になったバレエ学校側と大使館側の意思疎通も事前にちゃんとできていないようでした。
バレエ学校の生徒さんが「来てくれたお礼」ということでバレエの演技を披露して、私などは今日はバレエも見られてよかった、と思ったのですが、それならそれで会の進行とか、段取りとかちゃんと考えないといけないところをしてなかった様子が見受けられました。
しかも会場に来ていた人のうちバレエ学校の生徒がたくさん来ていたらしく、同級生がバレエの演技を披露すると、音楽には興味がないのか、帰ってしまう子どもが多かったです。
バレエ学校の生徒ではなく、もっと音楽関係者のベラルーシ人をたくさん招待すればよかったのですが(しかも文化庁文化交流関係の演奏なので入場無料。)日本大使館側も自分たちがセットしたコンサートなのだから、もっと宣伝したり招待状を配ったりすればよかったのに、と残念に思いました。
でも演奏が終わった後、知り合いに会ったのですが、みんな感動していましたよ。
うちの娘も喜んでいて「吹いてみたーい!」とか「息継ぎはいつしてるの?」とか言っていました。(笙は吸っても吐いても音が出るのだそうです。私なんかハーモニカもうまく吹けないのですが、もしかしたら笙なら吹けるかも? と思ってしまいました。妄想。)
真鍋先生の超絶技巧も見られたし、本当に運がよかったです。
しかし通訳料のことだけが気になっていたので、コンサート終了後、日本大使館側に
「私の通訳料金は国際交流基金の予算に計上されているんですが、実際の通訳は私ではなく学生で、しかも無料なんですよね? そのことを国際交流基金モスクワ支部に大使館から伝えておいてください。国際交流基金のお金が宙に浮くことになりませんか?」(この基金の予算は国民の税金ですよ・・・。)
と話しておきました。
そして「国際交流基金モスクワ支部の担当者の方の名前は○○さんと言うのですが、ご存知ですか?」
と尋ねると
「○○さん? そう言えばそういう名前を聞いたことがありますけど・・・。」
と言う返事でした。
でも私からは通訳料金を予算に入れて申請しておきながら、実はボランティア学生が通訳で一銭ももらってない、ということが後で公になると問題になるので、
「○○さんという人に必ず連絡を入れてください。」
とお願いしておきました。
その後、WA-ONメンバーにそのことを話すと
「在ベラルーシ日本大使館と○○さんは数年来の知り合いですよ。それにこのコンサートの2週間前に○○さんから日本大使館側に今回のコンサートの予定、予算、モスクワから来るメンバーのリスト、そのほか全ての情報をまとめて伝えてあるんですよ。」
と言っていました・・・。
この時点で私は目が回ってしまいました。(@_@;)
ミンスクでの共演もできず、WA-ONメンバーはミンスクを発ち、(しかも真鍋先生の滞在先を知らされないままだったので、お別れの挨拶もできなかったんだそうです。)モスクワへ帰って行きました。
すごく不満だったと思いますが、
「ベラルーシのことを嫌いにならないで・・・。いつかミンスクでWA-ON単独コンサートをしてください。」
と祈りました。
それにしても真鍋先生のブログを読んでいると、お食事もちゃんとできないときがあったり・・・もう少しベラルーシ側がちゃんと予定を立ててほしかったです。
真鍋先生にも「ベラルーシのことを嫌いにならないで・・・。」と思いました。(涙)
でも本当に企画する側の要領が悪いというか、段取りがめちゃくちゃな感じでした。
どうしてこんなことになってしまったんでしょうね。
将来、また日本の文化人がベラルーシへ来ることもあるとは思いますが、二度と同じ失敗は繰り返してほしくないです。ベラルーシなんて遠いところまでわざわざ来ているのに、申し訳ないです。