自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

丹沢 7

2019年05月23日 | 研究など research
高いところにブナ林があり、非常に特殊化した構造が単純になっていることがよくわかりました。尾根部には木がないところもあり、日差しが良いので、草本類が多くなります。林の中で木が倒れたりしてできる隙間(森林ギャプという)があると緑が濃くなります。こういう場所も普通であれば低木類やつる植物が多いのですが、ここではイネ科やスゲが優占していました。


森林ギャップ

 またギャップというには木がない場所もあり、小さな草原のようになっています。こういうところもイネ科が多く、シカがいかにも好みそうな場所です。実際、探すとシカの糞がありました。


「小さな草地」

 丹沢のシカ糞を分析しましたが、現地を見ていなかったので、どうもおかしいと感じていたのは、普通植物が豊富な中腹ではろくなものを食べていないのに、高地のほうがイネ科が多いのです。


丹沢東側の塔ノ岳の中腹と高地の春のシカ糞の組成。稈というのはイネ科の茎のこと。中腹では稈が多かったほか、ササが少しあった。これに対して高地ではイネ科が25%くらいもあり、そのほか繊維と稈も多かった。この結果は、シカは中腹では植物の葉を全部足しても20%ほどしか食べず、消化の悪い稈などを食べているが、高地ではイネ科を中心に葉を30%ほどは食べていることを示している。もっとも高地でも繊維が多いから、他の場所に比べれば葉が極端に少ない。

 高地や尾根は概して植物が貧弱なので意外感がありました。それで糞を送ってくれたブナ党の梶谷さんに質問したら、尾根のほうが植物が多いということで「そうかなあ」と思っていたのですが、それが現地を見てとても納得ができました。元々はそうではなかったはずで、シカの影響がなかった頃は中腹のほうがササや低木が豊富でシカには好適な環境だったはずで、シカ自身にとって逆転現象が起きたものと思われます。

 やはり「現地を見るに如くはなし」です。
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