自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

BBC取材:フン分析

2017年03月31日 | 玉川上水
BBCの取材のようすはに書きましたが、ここにはそのひとつのハイライトを紹介します。

 さて、水道のあるところに移動して、ふるいと小皿を取り出して、さっき拾ったフンを洗うことにしました。まず、ふるいにのせ、水を流して歯ブラシでゴシゴシとこすると、細かい粘土のような部分が流れて内容物が顔を見せます。この季節は種子などが少ないので、うまくいくかどうかわかりませんでした。
 洗い始めると細かなプラスチックの破片やら、ゴム手袋の断片などがありました。このフンには奇妙なものが入っていました。植物の繊維が見えるのですが、白く、端が直線的なのです。ルーペで覗いていたクリスが言いました。
「これは植物の繊維だな」
「うーん、この端が直線なのは不自然だと思うんだ。白いところとまっすぐな繊維と、端がまっすぐだということからして、Alliumの可能性が大きいと思うな。Alliumって知ってる?」
「ああ、ネギね?なるほど」
「そうだ、ネギ。この端の直線は刃物で切ったもので、そうでないと不自然だ。ということは残飯を食べた可能性が大きい。」
 次のフンからはミズキの種子やイネ科の葉が出てきました。私はメガネを外してふるいに顔を近づけ、言いました。
「This is a seed of Cornus, dog wood. It has distinct shape and I can identify. This grass leaf seems to be Poa annua」といいました。訳すと
「これはコルヌス、ミズキの種子だ。特徴的な形をしているから同定できる。それにこのイネ科の葉はスズメノカタビラみたいだ」
 ミズキの種子は独特の形をしているのですぐわかりました。冬に緑なイネ科は限られます。それにスズメノカタビラは普通のイネ科の葉が全体が徐々に狭くなるのと違い、先端が急に丸くなるので区別がつくのです。するとクリスが
「ポア・アニュア(スズメノカタビラの学名)、ああ、知っている。へえー、イネ科の葉っぱを見て種名までわかるなんて、びっくりだよ」
 そこは長年フン分析をしてきた者としてはちょっと鼻が高いところです。ほかにもヒヨドリジョウゴの種子が出てきましたが、学名が出てこなかったので、草の種子とだけ説明しました。
 3番目のフンからは哺乳類の毛と大腿骨の一部がでてきました。大腿骨の基部が寛骨(腰骨)と関節するところは、球形なので特徴的なのです。大きさからしてふつうのアカネズミなどではなくドブネズミなどと思われました。
 「これはげっ歯類の大腿骨だけど、大きさからしてマウスではない。リスかラットだけど、ここにリスはいないからラットの可能性が大きい」
 「こういう具合に、フン分析にはトータルな動植物についての知識が問われるんだ。いくらコンピューターが発達して、複雑な計算が一瞬でできたり、複雑なモデルを作ることができるようになったといっても、フンから出てくる小さな破片をわかるにはなんの役にも立たない。私は毎日植物の種子の標本を作ったり、動物の骨の標本を作ったりしてきたから、かなりわかるんだ」
 「いやあ、すごいよ。イネ科の葉っぱからスズメノカタビラだと分かるし、植物の破片から刃物で切られたネギと推定、骨の断片からラットの大腿骨、いやあ、大したもんだ」
 こうした検出をしばらくしました。ひとつひとつのフンから出てきたものが違っていたので、クリスは次のようにまとめてくれました。
「いくつか調べてわかったのは、フンからは人工物が出てきたからタヌキは残飯アドをあさっているということだ。それにミズキなどの野生植物の種子もでてきたし、ネズミを食べていたものもある。つまり臨機応変に実にさまざまなものを食べることができるということだ。フンからはいろいろなことがわかるね」


糞を水洗し、説明する(棚橋早苗さん撮影)
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速報 BBCの取材

2017年03月30日 | 研究など research
3月29日に津田塾大学のタヌキについてBBC(イギリス国営放送)の取材を受けました。私が書いたタヌキの食性についての論文を読んで連絡をとってきたのですが、それからいろいろやりとりをして津田塾大学のタヌキとその調査内容を取材したいということになりました。
 私がプレゼンターのクリスさんと対話をするという「作り」になっていました。キャンパス内を歩きながら、タヌキや里山についての話をしました。それからタメフン場にいって糞を拾い、水洗して内容物を検出したりするところを取材しました。そのあと、夕食をとってから大学外の住宅地の一角で、キャンパス内の林においた餌に来るところをモニター画面で待ちながら話をするところを撮影されました。タヌキにまつわる話をいろいろしていたときに、突然画面にタヌキが現れました。これまでにもカメラで撮影はしていたのですが、毎日というわけにはいかなかったので、取材のその日に撮れるかどうかはまったく予測できませんでした。それが実現したので、みんなで大喜びをしました。終わって車の中で「Perfect!」と喜び合いました。
 この日のことはこちらに書きました。「BBCの取材」というところをごらんください。



BBCのスタッフと


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速報 アマナ 3.28

2017年03月29日 | 玉川上水
28日、玉川上水に行きました。今年は春が来たと思ってから寒くなり、桜も咲き渋っています。4月の第1週に咲くアマナが咲いているかもしれないと思い、アマナのあるのを知っている場所に行ってみました。冬の雑木林という感じでした。



でも、よーく見ると、ありました、ありました。白い花ですが、外側に赤紫色の筋があります。葉は白味の強い、少し水色が混じったような緑色で、スイセンなどのように直立はしないでややだらしないとも思える、地面に倒れるような感じです。



でも花は凛と上を向いています。少し上から見ると雄しべが目立ちます。




枯葉色の地面から柔らかい葉を伸ばし、そこから花を咲かせるのを見た人が、どういう力がそれを可能にするのかと不思議に思っただろうとか、それを見て春の喜びを感じただろうなどと想像しました。
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明治神宮 12.13

2017年03月28日 | その他の調査地
毎月一回、明治神宮に通ってタヌキのフンを拾っています。一箇所よいタメフン場がみつかったので、そこでは確実に拾えます。ほかにもないかといつも歩くのですが、みつかりません。それだけでなく、足跡や獣道などの「匂い」がしません。



常緑樹の多い明治神宮ですが、ところどころに落葉樹のかたまりもあり、ここではカエデがきれいでした。
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カヤネズミ骨格標本

2017年03月27日 | 研究など research
カヤネズミ関連の話題を。「晴行雨筆」の日々ですが、夜は標本作りをすることが多いです。いろいろ作っていますが、カヤネズミの死体が手に入ったので、骨格標本作りに挑戦しました。カヤネズミというのはたいへん小さいネズミで、この個体は体重が5グラムしかありませんでした。


カヤネズミはこんなに小さい


小さいだけに標本作りもたいへんむずかしいものでした。死体の皮をはぎ、内臓などを出してから、ポリデントにつけます。そうすると筋肉がジェリー状になるので、ピンセットで丁寧に除きます。とても神経を使うので集中力が必要です。一気にやると骨を痛めるので、少しでやめて翌日にまわします。
 どれくらいかかったでしょうか。形をととのえて乾燥させました。あまりうまくはできませんでしたが、いまの私にはこれが精一杯です。これで胴体の長さが3センチほどしかありません。


完成した標本
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日の出町の廃棄物処分場 12/12

2017年03月26日 | その他の調査地
東京西部の日の出町というところに廃棄物処分場跡地があります。平たく言えば「ゴミ捨て場」です。ただ、ここではそのゴミを埋めたあと、土をかぶせて一部をグランドにし、一部を生物復元のための空間としました。私はこの計画に参画しました。同時にタヌキ、カヤネズミ、ノウサギなどの調査を学生の卒業研究としておこないました。
 いまでもときどきかかわりを持っていますが、乙女高原で11月にカヤネズミの地表巣を発見したので、確実にカヤネズミがすんでいるここでも確認したいと思い久しぶりに訪問しました。
 ここの自然をいろいろ調べている吉田さんと坂本さんもいっしょにカヤネズミの地表巣を探しました。


吉田さんが何度か「ありました」といいましたが、古かったり、違うものだったりしましたが、ついに間違いないものがみつかりました。


どうやら、ススキの株があるわきで、しかもそこに牧草のようなイネ科の青い葉があるようなところがみつかりやすいようです。乙女高原で多かったススキの数の中にはありませんでした。どうもちょっと性格が違うように思います。

これは違う日に撮影したものですが、処分場は雑木林に取り囲まれています。これがあるからいろいろな動物が供給されるのだと思います。


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Darwin Room

2017年03月25日 | 研究など research
12月21日に下北沢のDarwin Roomという店(標本や教材、書籍などがあるなかなか魅力的なお店です)で講演をしました。玉川上水の生き物しらべの話をしました。



終わってから質問の時間があり、たくさんの質問がありました。こういう雰囲気は田舎にはないので「ああ、やっぱり東京は違うな」と思いました。



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時間は待ってくれる?

2017年03月24日 | うた
3月20日にNHKのBSで小田和正をとりあげていました。「100年インタビュー」というシリーズです。私はいくつかの面で小田和正が好きですが(2013年2015年)、この番組はそうした思いに答えるところがあり、とても納得が行き、心に響くものでした。私にとって印象的なことがふたつありました。
 ひとつは「感覚のあう人とつながることの大切さ」ということです。若い人は知らないと思いますが、1970年代にフォークソングがはやってコンサートがよくあったのですが、そこでは気に入らないアーティストが出てくると「帰れ!」と叫び声があがりました。そして「軟弱だ!」といったヤジが飛んだのです。ひどい話ですが、当時の若者は歌には「人生が投影されるべき」などと本気で思っていて、ただ恋情を歌うだけの歌は「軟弱だ」というのです。小田のいたオフコースはそう批判されたのです。別の機会に小田は自分の心に正直な歌を作ったといっています。今回小田が言っていたのは、「同じ歌が聴く人によって違い、オレと同じ感覚を持っている人の心に届くことを信じて作った。そういう人とのつながりを大切にする」という意味のことでした。好きな人への素直な気持ちを表現することは「軟弱」であるかないかといった基準で評価されるべきものでないにもかかわらず、粗雑な精神の持ち主にはその思いは伝わらないということです。そうした時代の空気の中でも、自分の作るものは売れる、売れないにかかわらず、いつわりはないのだ、そうであれば、数は少なくとも、あるいは声は小さくでも、その歌の心を理解する人は必ずいるという確信があったということでしょう(これについてはこちら)。私はとくに若い人向けの本を書くとき、同じ気持ちをもって文章に向かって来たので、たいへん得心のいくことでした。
 もうひとつは、自分が本気でやりたいことをやっていれば時間は必ず待ってくれるということばです。これは50歳代では決して感覚としてわからないことだと思います。小田は69歳、私より2歳上で、だいたい同世代です。人生をカウントダウンすると感じるようになった者にしかわからない感覚として、たとえば「あと何回春を迎えられるだろうか」というのがあります。時間は限られている、「あれもやりたい、これもやりたい」という気持ちでいれば、焦り、時間が惜しいと思うでしょう。しかし冷静に考えて、やりたいことに限りはないし、人生には限りがあるのだから、それはきりのないことです。小田のことばでわかったのは、彼はやりたいことを本気でやってきて、いわば今死んでも悔いはないという気持ちでいるということです。このことを自分に重ねて考えると、私は動植物のことをみて、理解したいと思って生きてきたし、その努力を惜しまなかったという感じあります。大仕事をしたかどうかではなく、自分に与えられた才能と時間を懸命にそちらに向ける努力はしてきた、という意味で。もちろんやり残したことはたくさんありますが、今でもそちらを向いて毎日を過ごしています。
 このふたつはとても腑に落ちることで、それを聞けただけで番組をみた甲斐がありました。ただ、大きなところで私の中に疑問というか謎のようなものがモワッと湧いてもいます。そのうち文章にしたいと思いますが、今は形になりません。

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タチツボスミレ 3/22

2017年03月23日 | 玉川上水
きのう(4/22)、玉川上水を歩いたらタチツボスミレが咲いていました。いろいろな低木も芽をふくらませ、葉を展開しているものもありました。いよいよ春が来たのだと、そわそわした気持ちでした。

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クチナシ

2017年03月22日 | 植物 plants
クチナシは白くきれいな花がよく知られていますが、果実もなかなかユニークでみごたえがあります。知識としてはこれを染料として使うということを知っていたのですが、実際どんなものか試してみたいと思い、和紙に挟んでおきました。数日だって取り出したら、かなり鮮やかな朱色に染まりました。


クチナシの花 2007.7.1 小平市


クチナシの果実 2016.12.14 麻布大学


和紙に染まったクチナシ果実の色

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