自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

アボーション

2011年07月31日 | 植物 plants
いま岩手にいます。

今日は一息いれて別の話題です。

 通勤路にカキの木があります。5月に花をつけていましたが、6月14日に若い実がたくさん地面に落ちていました。母樹から結実しないで果実が落ちることを植物学では「アボーション」といいます。アボーションとは「流産」という意味で、たいへんいやな響きがあります。たしかに動物であれば母体から出産前に胎児が出ることになります。
 そう思うと、このヘタに埋もれてしまいそうな小さなカキの実が、なんだかおくるみに入った赤ん坊のように見えて、切ないような気持ちになります。アボーションがなくて受粉したすべての実が育てば、母樹がたいへんなことになるだろうことは頭では理解できても、そうであるならもっと早い段階とかなんとかならないのだろうか、なんてよけいなことを思います。


カキの未熟果実 2011.6.14
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アファンでの調査

2011年07月30日 | アファンの森
いま岩手にいます。

長くアファンの生き物を紹介しましたが、ひとまず終わります。いま私たちの研究室では3人の学生がアファンで調査をしています。去年までは2人でしたが、1人は就職し、1人は大学院に入って継続、新しく研究室に入った2人が調査をはじめました。はじめはほとんど白紙ですが、少しずつ動植物を覚え、関心をもってくれるようになります。生き物を調べることも楽しいですが、学生が成長するのをみるのも大きな喜びです。


観察する学生たち


調査を終えて一息つく
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白い花

2011年07月29日 | アファンの森
岩手にいます。

8月のアファンの報告をミズキで始めましたが、6月は白い花が多いです。


ニガイチゴ


ミツバウツギ アファンにはたいへん多い


ヤブデマリ アジサイのなかま


ギンラン


ツリバナ


ホウチャクソウ


ヒトリシズカ


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木漏れ日

2011年07月28日 | アファンの森
岩手にいます。

6月上旬のアファンはひとことでいえば新緑。カツラは広黄葉もいいですが、新緑もじつにきれいです。光を透過した葉がきれいでした。


カツラ 2011.6.4 アファンの森
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筏とは

2011年07月27日 | アファンの森
まことに不思議なことに、そして思いがけないことに、この植物は葉の真ん中にぽつねんと花をつけます。花の色も緑色なので注意深い人でないと、あることも気づかないくらいです。やがてこれは結実します。その風変わりさは第一級だと思いますが、私がおもうのはネーミングです。花をのせた筏にたとえていること、その名をハナイカダといいます。この葉を水に浮かべて花が筏にのって流れていくのを見たのでしょうか。それは実に詩的で、世界に誇るべき命名だと思います。


ハナイカダ 2011.6.5 アファンの森

明日から31日まで岩手県に行きます。発信ができないかもしれません。
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ワンバック

2011年07月26日 | その他 others
25日の夜、NHK特集でなでしこジャパンのことをとりあげていました。私はあの試合でアメリカ選手が何を感じていたかに興味があったので、楽しみでした。この特集は内容が濃く、期待にこたえるものでした。
 期待していたアメリカ選手、それもワンバック選手が出てきました。この人のすばらしさについては7月20日のブログに書きました。発言はだいたい予想通りでした。まずアメリカは絶対勝つつもりでいた。それはそうでしょう。20戦以上やって一度も負けていないのですから。それで一気に先取点を入れて相手にやる気をなくさせる方針で戦った。しかし不幸にもゴールポストにあたるなどして無得点でおわり、かなり体力を使った。日本は圧倒されて我を失いそうになったが、なんとかパスをまわすことで、落ち着いて前半を折り返した、ということでした。
 アメリカ選手は不本意ではあったが、勝敗は問題にはしておらず、どう勝つかだけ考えていた。そして速攻のできるモーガンを入れ、その通りになった。アメリカは勝ちを確信し、日本選手は「やっぱりだめか」と思った。見ていた私たちもそう思う、きれいなシュートだった。アメリカの監督も満足げだった。ただ、アメリカ側からすると信じられないことに、そのあとで同点に追いつかれた。十中八九勝てると思っていたのに、追いつかれた。ちょっと不安なものがよぎったようだ。
 ひとつの試合の中での選手の心理というのはおもしろいものだ。
 でも、アメリカチームはその時点でも負けるとはまったく思っていない。延長になったのは不本意だが、延長戦で先取点さえあげれば、たまたままぐれで追いついた、これまで一度も勝ったことのない日本チームは、「やっぱりアメリカは強い」と思い知って戦意を喪失するに違いないと思った。そしてワンバック自身が見事なヘディングでずばりのシュートを決める。誰もが「やっぱり」と思った。ワンバックは勝利を確信し、「もたつかせたな」くらいに思っていた。だが、奇妙なことに日本選手は全然へこんでいない。むしろ自分たちが負けないと確信するかのように走り回った。
 実は私は恥ずかしながら大学生のころ、ラグビーのまねごとをしていた。まねごととはいえ、週6日の練習をした。私はウィングで一番走らないといけないポジションだった。力がないし、不器用なのでここしかできなかった。走るのはわりあい速かった。スタンドといってスクラムからパスを受けるハーフからボールを受けてバックスにまわすポジションがあるのだが、ある試合でわがスタンドが相手の背後にパントをよく蹴った。ウィングは必ずそれを追いかけなければならない。ほとんどは相手にとられて蹴出されるのだが、何回に一度は味方がとれることもあるし、相手がボールをとってすぐであればタックルしてボールを奪う可能性もあるので、その小さな可能性を信じて走るのだ。しかしこれは体力を大きく奪うことになる。それでも、勝ち試合だと不思議に走れるもので、いくら疲れていても攻撃場面では力が湧いてくる。だが、試合の流れを決めるポイントで相手に得点され、残り時間がないというときは、口ではがんばろうと声を出しても力が出てこないものだ。
 あの試合の日本選手は「勝てる」ほうのそういう心理状態にあったと思う。そしてあの得点をほかでもない沢が入れ、日本はほとんど勝利したかのようにわきあがった。逆にアメリカは完全に戦意を喪失した。「なぜだ」「ほかでもないワールドカップの決勝戦で、延長戦で点を入れていたのに」。すでに流れは日本にあった。
 インタビューに応じたワンバックの対応は立派であった。最後は日本チームを讃えていた。私はモーガンやキーパーのソロの声も聞きたかったが、衝撃が大きすぎたのかもしれない。
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2011年07月26日 | アファンの森
草ということばは木に対するもので、要するにやわらかい植物のことです。そういうことですが、理科で勉強したように、単子葉植物と双子葉植物があります。このそれぞれに対応する大和言葉は思いつきません。イネ科にはカヤが対応するかもしれません。草は双子葉植物を指すときもありますが、例外がたくさんあります。英語ではgrassとforbがそれぞれに対応します。グリーングラスとかグラスルーツ(草の根)などというとき、英語国民はイネ科の細長い草をイメージしますが、草の根運動と聞いたとき、私はオオバコとかタンポポのような植物をイメージしていました。
 イネ科植物は花も緑色で「華」がありません。そもそもあれを花と思っていない人もいます。しかし、これらの写真を見てください。きれいなおしべが花粉をつけています。イネ科の花は風媒花ですから、虫を引き付ける必要がなく、必要ないことは自然界はしません。華やかな花がないから「きれいでない」という人がいますが、それはまちがいです。イネ科の花は近づいてよく見ると実に美しいものです。ひとつひとつの小花もきれいですが、花序もさまざまでそれがまた美しいものです。図鑑を調べて名前がわかるようになるとうれしいもので、そうなるとまた魅力を感じるものです。
 同じ細長くて地味なグループにカヤツリグサ科の中にスゲがあり、日本にはたいへん種類が多いので、分類がたいへんです。私もスゲは苦手なほうです。でも菅笠など、日本人はイネ科と区別していました。菅原など、この字を使う地名や苗字もあります。
 これらの植物も「雑草」とされることが多いです。華やかでなく、どこにでもあると「雑」なんですね。はい。
 そういう感覚こそ雑であるといいたい、と雑人には思う。 


カモガヤ


トボシガラ


ハルガヤ


カワラスゲ雄花


カワラスゲ雌花
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雑草

2011年07月25日 | アファンの森
雑木とか雑草とか、あるいは害虫などと、人のつごうでまとめて呼ぶのはたいへん粗雑で失礼なことだと思います。でも実際に庭をもっている人は、同じ植物がなんで片や手をかけても消えてしまうのに、抜いてもちぎってもたくましく増えるのがあるのは不思議だと思われるに違いありません。これは人がある価値観をもって自然をねじまげようとして庭とか畑を作るからに違いありません。自然界ではそれぞれに異なる性質があって、それが異なる環境に応じて配置しているだけのことです。アファンの森にも数が多く、手をかけないでもたくましく育つものがあり、それはそれで森に色を添えています。6月にはカキドオシやヘビイチゴなどがそれに該当しそうでした。


カキドオシ


ヘビイチゴ
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新型水着

2011年07月24日 | その他 others
スポーツニュースで平泳ぎの北島選手をとりあげていた。正確にいうと彼のライバルを二人とりあげていた。ひとりはノルウェーの選手であった。名前は意識してみていなかったので知らない。
 私たちは北欧には一般に好感をもつ。自由で福祉が発達し色彩の好みなどがよいというのが、北欧に対する私の印象だ。その選手は文字通り北欧らしさにあふれていた。彼がいうには「日本やアメリカと違ってプールなど、水泳の設備はよくない」と。アメリカはいざしらず、日本はよくないと思っていたのでおどろいた。トップ選手は世界最高水準の設備で練習しているのかもしれない。
 彼が言いたいのはどうももっと高度なことらしい。そもそもスポーツとは何かということにも関係しそうなことである。それは、フェアプレーと体力、技術を鍛えることこそ大切だということである。彼はその狭いプールで技術を鍛える。
 その後水着の改良がなされ、世界新が続出したが、彼は新水着を着ることを拒絶した。成績は落ちた。だが、そのあいだも彼は技術をみがく。そして新水着が禁止されると、彼の順位はあがり、いまや世界の1,2位を競うまでになった。これはすごいことだ。
 「スポーツは結果がすべてだ」とよく言われる。それは否定しようがないように思われる。しかし彼にとって水着で記録を上げることは自分に嘘をつくようで受け入れられないのだろう。
 これは大きな勇気だと思うし、ほんとうにすばらしいことだと思う。以下は強引を承知で自分と自然のことにつなげる。
 2,3日まえにタニギキョウの雄性先熟ことを書いた。これはもちろんすでに知られていることに違いない。だが自分の目で確認するということの意味は私にとって限りなく大きい。研究者というのは論文を書くことで「評価」される。その渦に巻き込まれると1分でも論文執筆に時間を使いたくなり、自然をみるときも、「論文になるか」が優先される。「ならないものは相手にしない」になり、さらには「自然をみるより論文をよむほうが得だ」になる。それは本末転倒であろう。もし「結果がすべて」なら新水着でも、薬剤でも使おうという誘惑に負けるであろう。それではそもそも何のためにスポーツをしているのかわけがわからない。現にそういう国はある。
 水着禁止は英断であったと思う。そのままだったら、本人がすぐれているのか水着がすぐれているのかわからないからだ。そのことを拒否したノルウェーの選手はすばらしいと思う。見れば二十歳代の若者である。その若さですでにそういう心境に達するというのは、本人の洞察もあるであろうが、やはり社会のもつ健全さを反映しているのだと思う。
 昨日信じられないような事件が起きたが、それがたまたまノルウェーであった。しかし私たちはそれは例外的なことだと判断する。これまでのスカンジナビアの国々の歴史が私たちをそう感じさせるのである。そういう意味で世界が日本をどう見ているだろうか。感じのよい国とは映っているとはとても思えない。だが私は震災にあった東北の人たちの、あの忍耐力や冷静さややさしさは、間違いなく日本という国に対する世界のイメージを新たにしたと思う。ただ経済に目がくらんで、あくせく働いているばかりの国だとは思わないのではないか。そんな気持ちがある。
 すばらしかったのはその選手やアメリカの選手が北島選手を好敵手であると同時に尊敬し、彼のもとに学びに来たいといい、北島はそれを受け入れているということだ。勝ち負けは大きいだろうが、すべてではあるまい。日夜努力し、ベストを尽くす。それで敗れても、マスせでコミはとりあげなくても、選手同士は理解しあうに違いない。人はごまかせても、自分はごまかせない。
 生態学者にとっても「新水着」はたくさんある。私は動植物を眺めるとき、自分と彼らのあいだの直接的な関係こそが大切だと心の底からそう思えるようになった。
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ぐるぐる

2011年07月23日 | アファンの森
ミズタビラコははじめて見たときにムラサキの仲間だとわかりました。ワスレナグサなどと通じるものがあります。というよりキュウリグサが似ています。それは花序の先端がぐるぐると巻いているところです。

ミズタビラコ

きのうのシシガシラもぐるぐるでした。
 自然界にはぐるぐるがいろいろあります。巻貝はその代表でアンモナイトなどもそうですし、オオツノヒツジの角もそうです。


食いしん坊の人は「蛸の足」の茹でたのを連想するかもしれませんが、文字通り「タコノアシ」という植物もあります。


要するに次第に小さくなって、一定の角度がついてまがっているとこういうことになります。渦潮など生き物でないものでも原理は同じです。


また無断借用をしました。




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