電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

尾高尚忠「フルート協奏曲」を聴く

2007年05月03日 08時12分37秒 | -協奏曲
現代日本の音楽に属する作品に接する機会は、当地ではそう多くはないものです。先月の28日の演奏会「現代日本オーケストラ名曲の夕べ2007」は、残念ながら聴けませんでしたが、山形弦楽四重奏団の定期演奏会で佐藤敏直さんの曲を聴き、ここしばらく「日本の名協奏曲集」というCDを聴いております。これはDENONのクレスト1000シリーズ中の1枚(COCO-70507)で、吉松隆「ファゴット協奏曲"一角獣回路"」(1988)、尾高尚忠「フルート協奏曲」(1948)、矢代秋雄「ピアノ協奏曲」(1967)が収録されています。

この中で、吉松隆さんの、入力・変調・出力、あるいは回路などのなじみ深い用語が登場するファゴット協奏曲も、1993年のデジタル録音の鮮明さもあり、打楽器とファゴットの対話などが面白いと思いましたが、とりわけ尾高尚忠さんの開放的な「フルート協奏曲」が気に入りました。

本作の発表は1948年で、いわゆる「進駐軍」のコンサートのために書かれたのだそうです。最初は小編成の室内楽バージョンだったのを、1951年に作曲者自身が管弦楽版に改訂したもので、最後の数小節を残して病気のために早逝してしまったのだとのこと。しかし、そんな翳りは見えず、長く苦しい先の大戦が終わり、生活の苦しさや社会の混乱の中にあっても、希望や自由を謳歌できた時期なのでしょう、どこか民謡風の味わいを持つ、開放感が心地よく感じられる音楽です。

第1楽章、アレグロ・コン・スピリート。どこか日本民謡ふうの印象は、5音音階による第1主題のためでしょうか。のびやかな第2主題。フルートのジャン=ピエール・ランパルの演奏が素晴らしい。日本民謡ふうの部分も、どこか上品な感じです。
第2楽章、レント。ピアノのアルペジオに続き、フルート・ソロで美しい旋律が奏でられます。ここもオリエンタルな気分です。第2主題は、弦のコルレーニョに乗り、のびやかに田舎風に懐かしいメロディ。
第3楽章、モルト・ヴィヴァーチェ。速く活発で、フルートの技巧をふんだんに聴かせます。この曲としては、ラプソディックな明るさの中にもやや哀感を感じさせる楽章です。

演奏は、ジャン=ピエール・ランパルのフルート、森正指揮の読売日本交響楽団。森正氏は、作曲当時の初演者でもありました。1968年に、東京の杉並公会堂で録音されています。もちろん、アナログ録音です。

参考のために、演奏データを示します。
■ジャン=ピエール・ランパル(fl)、森正/読響
I=4'45" II=5'55" III=5'44" total=16'24"
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