電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

免疫力

2022年11月08日 06時00分28秒 | 健康
以前は、「免疫力」という言葉をわりに無自覚に使うことがありました。「年を取れば免疫力も落ちてくるのだから」などというような使い方です。ところが、新型コロナウィルス禍の中で、少々疑問に感じるようになりました。「◯◯◯で免疫力を高めてコロナを撃退!」みたいに、怪しげな健康法やサプリメント、食品などを商売のネタにするようなケースが目につくようになったためです。

たまたま新型コロナウィルス感染症やmRNAワクチンについて調べたり、NHK高校講座「生物基礎」で免疫のしくみをおさらいしたり、講談社ブルーバックスで審良静男・黒崎知博著『新しい免疫入門』を読んだりして、自然免疫から樹状細胞の抗原提示を契機として獲得免疫(適応免疫)が始まる仕組みや、食作用・感染細胞の排除などの自然免疫の働き、獲得免疫にも細胞性免疫と体液性免疫とがあり、抗原を認識したB細胞が樹状細胞の抗原提示を受けたヘルパーT細胞に刺激されて増殖し、抗原産生細胞となって抗体となるタンパク質を作り出す仕組み、抗原を記憶する記憶細胞の存在、自己免疫疾患やがん細胞を攻撃する際などの自己・非自己の認識の重要性などを知りました。自然免疫から獲得免疫への情報伝達が、ブルーバックス『新しい免疫入門』の著者の一人である審良静男先生の研究であることもスゴイなあと感心しましたし、おそらくこのあたりは孫たちの世代、今の若い高校生がウンウン言いながらテスト勉強に精を出すところでしょう。

考えてみれば、私の高校生の頃に生物に「免疫」という単元はあったのだろうか? 残っている教科書等で調べてみました。

  • 私の高校時代(1970年頃) 高校生物に「免疫」の単元なし。大学時代に初めて免疫グロブリンを習いました。世代で言えば古希の前後の世代。
  • 娘たちの高校時代(2000年前後) 年齢で言えば40歳前後の世代。「生物II」に抗原抗体反応や体液性免疫と細胞性免疫のしくみなどが登場しているが、「生物I」と違って履修した人の割合はごく少ないのではないか。抗原提示の仕組みなどはまだ研究途上だったはず。
  • 孫たちの高校時代(2020年頃〜) いままさに現役の中高生の世代。「生物基礎」で自然免疫と獲得免疫(細胞性免疫と体液性免疫)のしくみをきちんと習っている・習う予定となっているようだ。

こうしてみると、免疫についてきちんと習ったことがある世代はごく少ないことがわかります。多くの人が漠然としか知らない事柄をネタにすれば、いかにも「科学的」な装いをこらすことで、怪しげな健康法や商品を売りつけることができる、ということなのでしょう。であれば、逆に「免疫力」という言葉を謳い文句にしている記事広告は、眉に唾をつけて接すべし、という言い方ができるのかもしれません。怪しげな勧誘には「免疫力って、何馬力?」てな具合におとぼけするのもありかも(^o^)/

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