講談社学術文庫で、鬼頭宏著『人口から読む日本の歴史』を読みました。文庫の初刷は2000年春ですが、単行本は1983年に出たもののようで、著者は私よりも5歳ほど年上の方のようです。たいへん興味深い内容で、じっくりと読みました。写真のような日本列島の人口の推移を拡大コピーして表計算に入力しなおすほどに、引き込まれる本でした。
本書の内容は次のとおり。
全体としてたいへん興味深い内容ですが、とくに興味を惹かれた事柄を列挙してみると、こんなふうになります。
うーむ、これは興味深い本です。読書の秋に、最近だいぶ歴史づいていますが、貴族・武将や権力の移行などを中心とした歴史ではない、自分の頭で考える時の良い材料になる歴史の本だと感じます。
本書の内容は次のとおり。
第1章 縄文サイクル
1 縄文時代の人口変化
2 縄文時代の古人口学
第2章 稲作農耕国家の成立と人口
1 初期の人口調査と人口推計
2 稲作社会化と人口規制要因
3 農耕化による人口学的変容
第3章 経済社会化と第三の波
1 人口調査と人口推計
2 経済社会化と人口成長
3 人工史における十八世紀
4 人口停滞の経済学
第4章 江戸時代人の結婚と出産
1 追跡調査
2 結婚
3 出産と出生
5 人口再生産の可能性
第5章 江戸時代の死亡と寿命
1 死亡率
2 死亡の態様
3 平均余命
第6章 人口調節機構
1 人口調節装置としての都市
2 出産制限の理由と方法
第7章 工業化と第四の波
1 現代の人口循環
2 家族とライフサイクル
終章 日本人口の二十一世紀
1 人口の文明学
2 少子社会への期待
学術文庫版あとがき
全体としてたいへん興味深い内容ですが、とくに興味を惹かれた事柄を列挙してみると、こんなふうになります。
- 人口推計の根拠となるデータに関して、考古学的な発掘調査からの推計や、近世の宗門改帳や寺院の過去帳などを分析した統計に基づいており、一定の信頼性があること。
- 一万年以上続いた縄文時代において、気候の変化とそれに基づく植生の変化によると思われる人口の大きな変化があり、とくに縄文晩期〜末期の寒冷期には、南関東においても大きな人口減が起こっていること。
- 近代になってからの南関東の人口の爆発的増加は、都市人口の膨張、繁栄のあらわれと考えられるが、近世までの「都市=蟻地獄」の現実と対比すると驚くほどで、コメ中心の経済から金納に変わる、おそらくは地租改正などにより富の都市への集中が容易になったためであろう。
- 人口の増減の基礎となる出生と死亡の現実がインパクトがある。乳幼児死亡率の高さ、女性の平均余命の短さは出産に伴う危険の現れであろうし、地主などが長命で子沢山なのに比較して下人の短命・子孫の少なさが対照的。病気・怪我などで絶家となったところへ地主等の次三男が分家して人口を穴埋めするという集落の実態が見える。
うーむ、これは興味深い本です。読書の秋に、最近だいぶ歴史づいていますが、貴族・武将や権力の移行などを中心とした歴史ではない、自分の頭で考える時の良い材料になる歴史の本だと感じます。