『風の盆恋歌』・・・高橋治の描く小説で、越中八尾(やつお)の町に流れる風の盆の胡弓の音色が、主人公二人の心の様を全編を通じて奏でています。
ある男性が、一年のうちの風の盆の数日を過すためだけに八尾に買った家の小さな庭に、あるとき酔芙蓉の花が咲く。
時間がたつと花の色が変化する・・・家の主はそのことに驚きます。
彼の愛する人が、こっそりと注文して植えさせたらしいのだけれど、実はこの花の色の変化こそが、二人の人生を物語っているのだと、私は思っています。
全編を通じて、酔芙蓉の花の色が何度も語られているのですもの。
家の主と、酔芙蓉を植えた人とは、実は不倫の間柄なので、それなりに話は展開していきます。
でも、清潔感のある文章は心地よく、いつか二人を親しく感じてしまったりもするのです・・・
いろいろあって、この小説は私の心を捕らえて放しませんでした。
なので、酔芙蓉もまた深く心に刻まれて、いつか見たいと願う時間だけが流れたのです。
その花が、今目の前で秋風にゆれている。
朝見た白い花が、夕方に紅く染まっているのだから。
これはもう、まちがいなく酔芙蓉。
私はひとり、声を殺して花の前で泣いていました。
それほど、憧れていたのです。
朝の花が上の写真です。
そしてお昼ごろにはこんな色に。
気温の高い日なら、もう少し濃いめの色かも。
午後になると、ずいぶん変化してきます。
夕方には・・・
そばにある白いつぼみは、明日開くのでしょう。
初めて見たのは朝だったので、次の日にこの夕方の色を見て、思わず声をあげました。
自分が確かに見ているのに、とても同じ花とは信じられなかった。
こうして、やがては手のひらに包まれるほどに丸くしぼんで、土に還っていきます。
純白に開き、はにかむように薄く色づき、日暮れの前には燃えるような色に染まって、やがて果ててゆく。
その姿にこの小説の二人の心が見え隠れして、切ないのです。
花を主人公にしているわけではないのに、変化してゆく花の色が二人の人生を物語っている、心憎い一編ではあります。
私の見た木は長く生きているようで、私の背丈よりもずっと高いところまで花をつけていました。
その花に見おろされて風に吹かれる私の幸せな気持ちを、どうかご想像くださいね。
ある男性が、一年のうちの風の盆の数日を過すためだけに八尾に買った家の小さな庭に、あるとき酔芙蓉の花が咲く。
時間がたつと花の色が変化する・・・家の主はそのことに驚きます。
彼の愛する人が、こっそりと注文して植えさせたらしいのだけれど、実はこの花の色の変化こそが、二人の人生を物語っているのだと、私は思っています。
全編を通じて、酔芙蓉の花の色が何度も語られているのですもの。
家の主と、酔芙蓉を植えた人とは、実は不倫の間柄なので、それなりに話は展開していきます。
でも、清潔感のある文章は心地よく、いつか二人を親しく感じてしまったりもするのです・・・
いろいろあって、この小説は私の心を捕らえて放しませんでした。
なので、酔芙蓉もまた深く心に刻まれて、いつか見たいと願う時間だけが流れたのです。
その花が、今目の前で秋風にゆれている。
朝見た白い花が、夕方に紅く染まっているのだから。
これはもう、まちがいなく酔芙蓉。
私はひとり、声を殺して花の前で泣いていました。
それほど、憧れていたのです。
朝の花が上の写真です。
そしてお昼ごろにはこんな色に。
気温の高い日なら、もう少し濃いめの色かも。
午後になると、ずいぶん変化してきます。
夕方には・・・
そばにある白いつぼみは、明日開くのでしょう。
初めて見たのは朝だったので、次の日にこの夕方の色を見て、思わず声をあげました。
自分が確かに見ているのに、とても同じ花とは信じられなかった。
こうして、やがては手のひらに包まれるほどに丸くしぼんで、土に還っていきます。
純白に開き、はにかむように薄く色づき、日暮れの前には燃えるような色に染まって、やがて果ててゆく。
その姿にこの小説の二人の心が見え隠れして、切ないのです。
花を主人公にしているわけではないのに、変化してゆく花の色が二人の人生を物語っている、心憎い一編ではあります。
私の見た木は長く生きているようで、私の背丈よりもずっと高いところまで花をつけていました。
その花に見おろされて風に吹かれる私の幸せな気持ちを、どうかご想像くださいね。