勤務医の拘束時間が月に300時間を超えると、今更のように新聞がTVが驚いて見せてます。一人がこんなに働かねばならぬほどに医者が足りないのだという論調です。何~にをいまさらです。医者は昔からそういう仕事してきたんです、何も驚くに当たりません。先の東京墨東病院のたらい回し事件(たらい回しという言葉をマスコミ使いませんねぇ。クレームが付いたんでしたかね以前に)を受けての非難です。産科学会やら産科の臨床現場にすれば理由はなんであれ注目されて現況改善に役立てば有り難いのでしょう偉いさんたちが窮状を訴えてますが、週刊誌にありましたが公立病院の給料少ないんですってね。どこに問題があるんでしょうか。こんなに無茶働いているんだよと言ってくれるのなら(どっかの労働組合みたいに私ら医者は勤務時間がどうのこうの言いません、そういう仕事でないこと十分にわかってますから)もっと給料出してやりなさいな。それができぬは医療費削減という国策の誤りです。小泉改革という大失政が原因です。医者の給料が高すぎるってあれだけ文句言われて、まるで国の財政逼迫の原因みたいに言われて毎年毎年削りに削られた結果が現況です。医者に夜中も休日も働いていてほしいんでしょう?それならもっと報酬で答えなさいな。今まではそういうバランスがとれていたんですよ。わかっていただけるでしょう?私達とて他の業種と違って多くの報酬受け取っていることくらい認識しています、でもそれだけの職業意識を持ってやってきているんです。8時間労働?有給休暇?何ですかそれ?よく喩えというか重労働の象徴のように言われる医者の当直には「明け」がないこと、当直した翌日もそのまま通常勤務する慣習ですが、確かにその病院の忙しさにもよりますが、私も経験がありますが何回かに一度は本当に一晩中全く休めないこともあるのですが多くは眠れるんです、そこは看護婦やら三交代勤務のように一睡も許されぬ勤務とは違うのです、だからできます、これは些かオーバーに言いすぎです。週二回なんてのは普通の当直シフトでしたが、だからできました。小児科が産科が夜昼ないのは確かにその通りなんですが毎夜毎夜ひっきりなしでもないだろうし、しんどいしんどいと言いながら何とかやれてきたのです、そういう歴史です。医者とはそういう仕事だという有無を言わせぬ職業意識は(おそらく)全員に(少なくとも私の年代までの医者には)身に染みこんでいます。だからやります。医者とは夜昼問わぬ仕事だからやります。だから相当に対応してください、なんです。医療の安全安心は警察消防等々と並ぶ社会生活に欠くべからざる最重要のインフラストラクチャーのはずです。そこを金がかかりすぎるなんてバカな理由で削り潰してきた結果が今なんです。小泉は万死に値するでしょう?医者達の意気を削いできたんですから。今更働きませんよ。そうじゃないですかね。墨東病院の事件は結局国(厚労省)と都(石原知事)との責任なすりつけ合いにすり替わり、医療問題という抽象化してこのまま消えていきます。どうしてこうなったのか皆分かっているのに誰も直そうとしない。医者の質が落ちた?医学部定員を増員すれば粗製濫造には傾きましょう、でも何年の何十年も先の話です。弁護士を増やそうとする試みが(法科大学院)見事に外れたように、こんな事で何も変わりません。質が落ちたかという問いにはいつの時代にもとんでもない破格はいるのだとしか答えられませぬ。昔はこうじゃなかった、昔の医者は偉かったなんて謂は10年前にも50年前にも百年前にも目の前の医者に向けて投げつけられてきた非難でしょうし。産科小児科脳外科外科なんてきつい科を選ぶ奴が少なくなって(いなくなって)駒がないんだから動かしようがないという現状です。何故か。胸膨らませて皆医者になるんですよ。例外はいるのでしょうが大概は人様の役に立とう、病気で苦しむ人達を助けてあげようなんて意気に燃えて医者になるんです。向き不向きがあります、それぞれに適当な道があって然るべきですが、もう25年も前から仕事のきつい科を避ける傾向はありました、いつの時代もそうだったはずです、だからこんな事は理由にならない。相当の評価がされなくなったからです。これが一番の原因です。一に報酬、二に日夜区別のない仕事に対するリスペクトの欠如。研修医が自殺したことによって有り難くも裁判所が医者も労働者であるなんてお墨付きをくれました。労働者?いやいや。皆さんもそう思っておられますの?医者が労働者でいいんですか?もっともっと働かせねばならぬでしょう?一日8時間でいいんですか?そこここの公務員やOLと「平等」に、風邪ひいたら休み、熱がでたら休み、自分の都合宜しく有給休暇をたっぷりとって海外旅行なんかに消えてもいいんですか?こうなったらなったで怒るんでしょう?高給ぼったくりかい?!って。給料高すぎるって非難が強いです。一般職と比べて医者、勤務医よりも開業医。勤務医対開業医の話は余り面白くないです、額面だけの比較しても意味の薄いことなんです、それこそ給料そのままが自分のものである被雇用者と収入で職員の給料を出し病院医院を維持していかねばならぬ経営者とでは土俵が違うでしょう。一般職と比べて医者は確かに高給でしょう。が、それだけ働かせているでしょう?勤務医は働いてますよ、夜昼なく。皆さんはどちらを選ばれましょうか、医者も一労働者に違いないのだから平等公平に労働時間は8時間、有給休暇も同じように取らせろ、給料も一般職と同等にせよ論か、高給出すからしっかり働け論か。くどいですが私達医者は(これもくどいですが例外はいるでしょうけれど)一般労働者に伍して貰わずともいいのです、折角の裁判所のご好意でしたが。自殺者云々は個人的事情によることです、一般化して貰わずとも結構です。何故なら今あなたの周りにいる医者は皆そういう修行をくぐってきたからです、とても単純な理由です。低きに基準を合わせると全体が腐ります。そんなに医者の職業意識は低くありません。だからうまく使えばいいんです。夜昼区別なく働きましょうと皆(若い医者は、と一応限定しておきますが)思っているんですよ。だから使えばいいんです。どこでずれたか。今後は金を出しません、その代わりきついことやらなくてもいいです、あなたの好きにしてください、なんてやってしまったからです。原因はこれほどに明瞭です。もう一度しっかり金使って夜昼働かせる動機付けをして、新米医者は5年間は卒業大学で研修しろと決めればいいんです。一気に解決します。医者は十分量存在します。分配不全と評価(報酬)不足です。もっと働けというならもっと金をあてがいなさい。一労働者だと言うなら尚のこと給料上げて応えるべきです。金は出さぬわ、働かぬと誹るわでは質が落ちるは必定です。こういう明々白々な因果にどうして知らん顔を続けるのでしょうか。事件は次々に起こります。次に新聞沙汰になるのはあなたかもしれませぬよ。
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