鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

迫力のモスクワ芸術座「リア王」

2006-12-23 | Weblog
 東京・初台の東京オペラシティでシェイクスピアの「リア王」を観た。それも静岡県総合芸術センター芸術座監督の鈴木忠志氏演出で俳優はすべてモスクワ芸術座のロシア人俳優という3国合作による公演といった感じで、2、3月前に同じオペラシティで鈴木忠志氏の「「イワーノフ」、「オイディプス王」、「シラノ・ド・ベルジュラック」3部作を観て、その大集成ともいえべき「リア王」をぜひとも見たくなって、すぐに申し込んだのだ。クリスマスを控えたオペラシティはクリスマスツリーの前でコンサートがあるせいか、いつもより人出が多かった。オペラシティの大劇場、中劇場、小劇場とも公演があり、華やかな歳末の雰囲気が満ち溢れていた。
 「リア王」は演出の鈴木忠志氏がモスクワ芸術座から招かれ、モスクワ芸術座所属の俳優50人をオーディションし、15人を選んで日本で2週間にわたりスズキ・メソッドの特訓をしたうえ、公演に臨んだ、という。冒頭、車椅子に乗ったが新聞を読みながら登場する。どうも精神病院に入院している病人のようだが、幻想のなかで自分をリア王だと思い込み、そこから車椅子に乗った病人をリア王として、演劇リア王が展開される。
 舞台中央に作られたいくつもの扉を利用して複数の登場人物が一時に出たり、隠れたりすることで、場面転換を図る。リア王は娘のゴネリル、リーガン、コーディーリアスに愛情の度合いに応じて遺産を分け与えると宣言する。そこに忠臣グロスターの嫡男エドガーと私生児エドモンドが後継者争いをしながら、リア王の娘たちと愛憎劇を繰り広げて、最後は3人の娘を亡くして嘆き死んでいく。
 すべては幻想の中の物語として演じられていくが、娘役を男性が演じていることとスズキ・メソッドというのか声がよく通り、挙措がきびきびしてまるで群舞を見ているような気になってくる。セリフはもちろんロシア語で、舞台の両袖にある表示板に日本語訳が出てくる。それを追いながら演技を見るのだが、オペラならともかく演劇で翻訳劇を見るのは慣れないせいか、ちょっと忙しかった。
 それと、「オイディプス王」でも主人公が車椅子に乗って動き回っていたが、現実の世界とは違うのだ、ということをアピールしているのか、鈴木忠志独特の世界を形造っている印象を受けた。
 最後は舞台の複数の扉をうまく使って、観客のカーテンコールに応えていた。最初は演出されたカーテンコールだったが、何回もカーテンコールに応えているうちに生の嬉しそうな表情を出して、満足に演技できたことを喜んでいる風に見えた。観客は結構年齢が高く、鈴木忠志ファンというか、演劇通らしき人が多かったような感じがした。それと、ロシアのモスクワ芸術座公演だからか、ロシア人らしき外人の客が目立っていた。
 出口で、鈴木忠志氏が知人の顔を見つけ、嬉しそうに笑顔で応えていたのを目にして、いい公演だったのだな、と改めて納得した。
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