prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「初恋」

2006年07月12日 | 映画
なんだか釈然としないところが多い。
三億円事件の実行犯が女の子、というのは一般に出まわっている目撃情報からするとムリがありすぎるし、画と声としてもクリアしていない。権力がかかわって今の手配写真にしたというつもりだろうか。これまたムリのある話。
あと、計画した男はなんで自分でやらないのだろう。後で盗んだ金を使って、政府のメンツを潰すのだといった裏の計画が出てくるのだが、男の素性からして自分で手を汚した方が効果的だと思うのだが。女の子のことをどう思ってやらせたのかというと、ますますわからない。

新宿伊勢丹前に路面電車が走っていたり、愛国党(憂国党という名前にしていたが)のポスターがずらっと新宿南口の階段と思しきあたりに貼られていたりと、考証的には70年代の風俗の再現はまずまず。ただし、当時の反体制的雰囲気はいささか物足りず。今の閉塞感の方に引き付けたのだろうか。

宮崎あおいは、特に前半ほとんどセリフなしでよく場面をもたせた。
(☆☆★★★)



初恋 - goo 映画

「親密すぎるうちあけ話」

2006年07月11日 | 映画
右と左を間違える人、というのはけっこういるので、それがきっかけで分析医の代わりに会計士のところに美女が紛れて来てしまい、という出だしは良い。

だけど、たとえば、ヒロインがやたらタバコをぷかぷか吸うものでゴミ箱の中に火がついてしまい、消し止めたあと煙を逃がすため窓を開ける、それで机の上の書類がどっと飛ぶのを拾い集めるのだけれど、その中身をヒロインが見て正体を知るとかどうにかなるのかと思ったらどうにもならないのです。
なんかねっとりとものものしい割りに細かいところで詰めていない気がしたりして、どうも眠くて困った。
ハナシの展開の勢いで見せる映画ではないのは、わかっているのですけどね。



親密すぎるうちあけ話 - goo 映画

「修羅雪姫 怨み恋歌」

2006年07月10日 | 映画
1974年度作。梶芽衣子の主演作としては「女囚さそり」(72)のつながりで企画されたのだろうなあ、と思う。最近、釈由美子主演で現代化してリメークされたが、こちらは軍国主義時代の話。

刑務所で生まれ、殺し屋として育てられ、警察に追われるようになったヒロインを特高が救って恩を着せ、反体制知識人のもとに送り込んで政府をひっくり返す力のある書類を盗ませようとするが、とうぜんヒロインは反体制側に寝返って特高さらには権力者たちに反抗するようになり、最後にはそいつらをぶった斬るというハナシ。前作があるらしいが、見ていなくても別に困らない。
この知識人が伊丹十三、特高が岸田森、その手下に南原宏治・山本麟一と、早死にした故人が目立つ。

70年代の反体制気分の強い時代を反映しているところも「さそり」ばりで、ガラス越しの拷問を音を消して見せたり、やたら血が水の中を広がっていくところを強調したりと、様式的演出も踏襲している(鈴木達夫撮影のセンスの分、上まわるくらい)。権力の下っ端の片目をつぶすところもなぜか一緒。

逆手に持った短刀で長い刀を持った警官たちをぶった斬るばかりか、拳銃やショットガンまでやっつけてしまうのだから、いくら劇画原作でもムリがある。
(☆☆★★★)



修羅雪姫 怨み恋歌 - goo 映画

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「トリック2 劇場版」

2006年07月08日 | 映画
相変わらず大いに遊んだ作り。
感動的に駆け寄って抱き合うカットでわざわざ涙がしぶいているのをCGで作って加えたり、修正が入るはずのないパンツはいた尻にわざわざヒッカキを入れたり、「よし、いくぞ」というセリフのあとに吉幾三の歌の題をいくつも重ねたり。シリーズをたまぁにしか見ない客としては、あまりセンス合わないが。

ただし脱力しながら見ていると、その変なところにちらっとトリックがしかけてあったりする。
しかし、このシリーズ、ど田舎好きね。

仇役が片平なぎさだと、二時間サスペンス的雰囲気になる。劇場版だからって、特にどうもこうもない。
仲間由紀恵はきれいだけれど、スクリーンで若い堀北真希と並べて見ると恐ろしいもので肌がもう違う。



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「火火」

2006年07月07日 | 映画
陶芸家というと気難し屋の代名詞みたいな印象があるが、そういう母親を持った息子が辟易しながら自分も陶芸の道に進むユーモア混じりの前半は田中裕子が好演だし、陶芸の描写に腰が入っていて楽しめるが、息子が白血病に犯されてからの後半は、どうかすると骨髄バンクの宣伝映画みたいに見えたりしてしまう(骨髄バンクができるまでの実話でもあるのだが)。

骨髄を提供する方(ドナー)だって入院して手術に近い処置を受けなくてはいけないし、下手に途中で降りたらもっと患者にとって致命的になる(骨髄をいったん放射線で殺してから移植するので)、といったことを一応知っているので、ではちょっとドナー登録しましょうという気にはならない。映画の評価とは一応別にすべきだろうが。

黒沢あすかの妹弟子が緊張しすぎて突然ぶっ壊れたようになる身体表現が面白い。
(☆☆☆★)



火火 - goo 映画

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「パローレ」

2006年07月06日 | 映画
オープニングのアップの連続から原宿ロケのハイスピードへのつなぎが良く期待したが、ミュージカル風の場面が室内シーンに閉じこもった感じで、この監督の前作「ガキンチョ☆ROCK」ほどカット割と音楽処理にミュージカル・センスを感じられないのは残念。
新作「陽気なギャングが地球を回す」もだけど、役者の生かし方に独特の可愛らしさがある。
幽霊が人間と一見見分けがつかないように出てくる処理にもう一つ神秘感が欲しい。
烏丸せつこがえらい太って出てきたのでびっくり。



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「金環蝕」

2006年07月05日 | 映画
1975年度の山本薩夫監督による九頭竜川ダム建設にまつわる談合・汚職・隠蔽工作による殺人などをモデルに描く大作。

30年前の映画なのだが、主は変われどすることの変わらないこと、あきれるばかり。
政・官・財の癒着とはマスコミでいやというほど言われていることだが、それをコンパクトに、かつスケール大きく描いている。
派閥記者が堂々と高級ライターを総裁候補からもらっていたり、業界紙記者がリークされた情報を横流ししたりするディテールなども光る。
あと、どうやって建設会社が見積もり価格をもっともらしい理由をつけてかさ上げし(今みるとびっくりするのは、ダム建設費の見積もりが40億とかそこらへんなこと)、しかも入札に入るように仕組むか、といった手口が具体的に描かれていて、報道で知るだけより、腑に落ちる。

要するに、ここには悪人しか出てこないわけで、社会派ではあっても正義派的なヌルさはなく、あくの強い人物と芝居をみっちり詰め込んでいて、その分、今風でもある。
山本薩夫はもちろん戦後の代表的な社会派監督だけれども、社会悪を攻撃するばかりでなく結構楽しんで描いているみたい。

テレビ時代になって政治家もパフォーマンスに走るようになったと言われるが、もともと政治家には演技者的な資質がいるのではないか。ハッタリ、泣き落とし、作り笑い、駆け引き、恫喝、みんな「人の目」を前提にした振る舞いだもの。

ほとんどすべての登場人物にモデルがいるという。今見て一番わかりやすいのは幹事長の中谷一郎=田中角栄(絶えずばたばた扇子を扇いでいる)だが、森脇将光=宇野重吉や田中彰治=三國連太郎など、力のある役者がアヤシゲな人間を舌なめずりするように演じている
(☆☆☆★★)



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「ココシリ」

2006年07月04日 | 映画
標高4700メートルという人跡未踏の地、というのは実は皮肉なことにカメラで撮られたら人跡未踏ではなくなるわけで、それと「高さ」や「薄い空気」はそのままではカメラに写らないのですね。
撮影は本当に大変だったろうが、それが即ち映画的成果というわけには参らない。
フレームから外れた部分の広さというのは映画見ているだけではわからないのだし。

流砂の場面など「アラビアのロレンス」を思わせたりするが、あの映画ではマッチを吹き消すのと砂漠に朝日が昇るカットのすごいモンタージュその他で、「普通」とはまったく違う世界に一気に飛躍していた。映画的エンジンが強いというのか。

とはいえ、ほとんど男ばかりの登場人物の生活の苛烈さは十分描けていたし(隊長の面構え、よし)、500頭分を越す毛皮が地面いっぱいに広げられている光景はぞっとさせられる。相変わらず、辺境にAK47ライフルが顔を出す。
あれだけ厳しい環境だったら、もっととんでもない人間的光景が繰り広げられるかというと、そうでもない。
チベットだったら、中国侵攻の時よっぽどヒドい出来事あったのではないかと映画とは関係ないところに気が行ったりする。
(☆☆☆★★)



ココシリ - goo 映画

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「ハンテッド」

2006年07月03日 | 映画
クリストファー・ランバートのアメリカ人ビジネスマンが、一夜を共にした女ジョアン・チェンがジョン・ローン扮する忍者に殺されたことから、忍者軍団に命を狙われるようになり、ローンを宿敵とするサムライの子孫・原田芳雄とその妻・島田陽子に守られながら、ちょっと修行するとやたら強くなり、トリは自分でローンと戦って勝つというハナシ。

ローンのものすごい日本語とか、ホテルの和室のど真ん中になぜかでかい風呂があって西洋男と東洋女が混浴するとか(お約束)、ニンジャの里の厳しい掟でやたらと下っ端ニンジャが殺されるとことか、運転手が殺されて新幹線が暴走し(このシンカンセン、ATSがついてないのね)、乗客のパニックの中でニンジャ軍団が原田・島田組と闘う、という珍シーンがゲテモノ的にお楽しみ。
新幹線の自動ドアの前に床をカタナで切り裂いて、ドアが開かないようにするなんてマジメにやってるんだもの。

原田以外は、今何やってるのだろうと思う役者だらけ。
ときどき、どういうわけかこういうゲテを見たくなる。
(☆☆)



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「LIMIT OF LOVE 海猿」

2006年07月02日 | 映画
素材と仕込みはしっかりしているけれど、微妙に小骨が当たって味付けの濃さが舌に残る。

ドキュメントタッチの画の迫力・スケールは見ごたえ十分、伊藤英明はじめ役者たちも体を張ってるし、隙間なく見せ場をつないで、いったん話が終わったとしか思えないように見せてもう一回盛り上げるスタミナなど、よくやってます。

だけどテレビレポーターの扱いや、ホテルのロビーにウェディングドレス姿で出てきてしまう加藤あい(なんでああ立ち入り禁止になりそうな場所に神出鬼没に現れるのだろう)とか、プロポーズのセリフがスピーカーで衆目に轟いてしまう趣向、などのフジテレビ臭は、好きな人には良いのでしょうけどね。ちょっとづつひっかかる。

あと、船が傾いてるのに昇っていく煙突が垂直っていうのはどういうこと?
沈没するのに、煙突のてっぺんから先に水が入ってくるのも、変。
(☆☆☆★)



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「オーメン」

2006年07月01日 | 映画
脚本が76年のオリジナルと同じデヴィッド・セルツァー。原作者が脚色したのと同じことで、リメイクというより芝居の再上演みたいなもの。
もっともこのネタさんざん絞りつくされた末だから、どうしたってヴォルテージは上がらない。そうすると元のストーリーの設定や展開の無理がけっこう目立ってくる。
いくらなんでも、有力外交官ともあろう地位の人が自分の死産したという子をまるっきりチェックしないのか、とか、素性のわからない子をいきなり養子にするか、とか、紹介所からの正規の書類を持っていない乳母を雇うか、とか。
イキオイで見せるってわけにはいかないのですね。

時代が現代に移っているので、9.11やイスラエルのシーンでやたら銃を持った兵士が目立っているところ、そしてバチカンが予め悪魔の子が誕生しているのを知っていて、結局ぜんぜん手を打てなかったというシーンが追加されている。
そうなるとしきりと悪魔の子の存在を警告する、見るからに異端の神父(ひいきのピート・ポスルスウェイト)などバチカンと関係あるのかというと、これが全然関係ない。そのあたり明らかに変。ラストを変えて、悪魔の子がバチカンの神父の養子にでもなるのかと思った。ンなわけないが。

悪魔の子が大統領になりそうになるという旧三部作の流れが、現実で実現しているのかもと言いそうな雰囲気。実際、アメリカを狙うテロリストは本気でそう思っているはず。

元のストーリー展開がきっちりしているから、さほど退屈はしない。さまざまな見せ場もグラフィックに華やかめになっている。
ミア・ファローが悪魔を守る乳母というのは、あんまり「ローズマリーの赤ちゃん」を引きずりすぎたキャスティングで、かえって嬉しくない。素でキモチ悪い感じなのだね。

エンド・タイトルの音楽でいきなりオリジナルのジェリー・ゴールドスミス作曲「アベ・サンターニ」が出てきたのにはびっくり。リスペクトってことですか。
オリジナルが音楽で乗せてたとこが大きかったのがよくわかった。
(☆☆★★★)



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