タイトルバックでさまざまな演奏・振り付けの「ボレロ」が短いカットの集積で描かれる。ここでどれだけ多様な「ボレロ」か現にあるのかを見せておいて本題に入る。
ボレロというのは何もラヴェルの独創ではなくてスペインの三拍子の舞曲がもとにあったというが、そこに至るラヴェルのいくら作曲しても芽が出ない苦心と、いったん売れたら調子よく持ち上げる評論家のイヤミな豹変ぶりがいかにもありそう。
中央で踊るダンサーのエゴイズムも印象的。「愛と哀しみのボレロ」のモーリス・ベジャール振り付けによるジョルジュ・ドンのソロの印象が先にあるだけに女性であるジャンヌ・バリバールのソロがかえって目新しく見える。
早坂文雄作曲の黒澤明監督の「羅生門」でボレロのリズムを採用していて、ラヴェルの盗作あるいは剽窃呼ばわりされたものだが、なんでボレロのリズムを採用したのか、どこから着想を得たのかと思う。