prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「劇場版 アナウンサーたちの戦争」

2024年08月20日 | 映画
NHKのアナウンサーたちが政府の情報局の統治下で偽情報を偽と知りつつ「情報戦」の一環として流していたことをはっきり描いている。今でも似たようなことやってるだろ、とツッコミ入れたくなりますが、それをわからせるのが限界もウソもありながらもドラマの役割ではあるだろう。
天気予報も重要な機密情報だとして禁じられたことがあったとは聞いていた。

橋本愛が語り手を兼ねて出演しているのだが、終始着物姿。それも菊などの花をあしらった柄で、相当に良い着物ではないかなあ。ああいう着物を実際に着ていたのか、役作りなのか、気になった。着ていたのだとしたら、給料はどのくらいだったのか、男女で差はあったのか。

高良健吾が真珠湾攻撃の第一報を伝える館野守男役を演っているのだが、その「大本営陸海軍部、12月8日午前6時発表。帝国陸海軍は、本8日未明、西太平洋においてアメリカ・イギリス軍と戦闘状態に入れり」という声の調子がそっくり。実物の声だけからは淡々とした事実を伝える以上のニュアンスしか感じ取れなかったが、高良の姿を晒した演技では声=言葉に引きずられて自分で自分を説得してしまうようなファナティックな表現になっていた。

ラストで玉音放送を録音したレコードから再生される天皇の声が良くも悪くも敗戦を決定的に告げたわけで、声は文字通り人を生かしも殺しもするのにつながるがわかる。

画のないラジオで声だけで情景をありありと想像させるというのは、今でも体験できるが、画のあるテレビではより強力になったとも想像の余地がない分制限ができたとも、どちらとも言える。
戦前にすでにテレビ受像機ができていたことが見せられる。
スクリーンに上映されたのは8Kなのか、そういう基準ではないのか。

インパール作戦はあんなものではなかったろうなと見たことはないが見当はつく。画にした分、弱くなった。

「風蕭蕭として易水寒く 壮士一たび去りて復た還らず 」という「刺客列伝」のうち、荊軻伝からのくだりはちょっと格好よすぎる気がしないでもない。

ラストの字幕で南方では「あの戦争」のことを「日本戦争」と呼んでいると出る。身も蓋もないが、なるほどと思う。