北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

丸井さんに思うこと

2009-01-30 23:26:39 | Weblog
 北海道では大ニュースになっているようですが、北海道を代表する老舗デパートの丸井今井、通称「丸井さん」が民事再生法を申請したという残念な知らせがありました。

    ※    ※ 【以下引用】 ※    ※

【丸井今井、再生法申請へ 消費低迷で業績悪化 ー 北海道新聞】
 http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/143701.html

 経営再建中の丸井今井(札幌、畑中幸一社長)が自主再建を断念し、民事再生法の適用を申請する方針を固めたことが二十八日、明らかになった。負債総額は四百七十億円前後とみられる。同社は二〇〇五年に不採算部門を切り離す会社分割を実施。道内金融機関や大手百貨店・伊勢丹(東京)の支援で経営再建に取り組んできたが、消費低迷などで業績が悪化し、法的整理による経営破綻(はたん)に追い込まれた。

 札幌本店の営業は継続するもようだが、旭川、函館、室蘭の地方三店舗の存廃や七百六十人の社員を含む従業員の処遇は明らかになっていない。二十九日にも役員会で正式決定し、裁判所に同法適用を申請する見通しだ。

 丸井今井は経営再建に着手後、小樽、苫小牧、釧路の不採算三店舗を閉鎖する一方、旗艦の札幌本店で紳士、食品フロアなどの大型改装を相次ぎ実施して伊勢丹の運営ノウハウを注入しながら業績の改善を進め、五年後の一〇年に年商を一割伸ばして九百億円台に乗せる計画だった。

 だが、個人消費の低迷や競争激化などで売上高は、逆に下降線をたどり、〇七年七月中間決算以降は赤字に転落。〇八年一月期は約四十三億円、同年七月期(六カ月の変則決算)は約九億円の純損失を計上、自己資本は五億円未満まで減少した。

 このため、〇九年一月期(同)には債務超過に転落する恐れが出てきたほか、景気悪化で販売不振の長期化が懸念されることから、法的整理で抜本的な経営再建を目指す決断を下したとみられる。

    ※    ※ 【引用おわり】 ※    ※

 一部のニュースには利用者の声として、「子供時代から丸井さんに遊びに来ていた。休日は家族で食堂のお弁当を食べ、買い物をするのが何より楽しみで、丸井さんで買い物をすることは、市民にとってはステータスだった」といった意見を紹介していますが、残念ながらこういう人が激減したのでしょうね。

   *   *   *   *   *
 
 熱力学の世界に「エントロピー増大の法則」というのがあります。「エントロピー」とは、もともとは熱力学を語るなかでの造語ですが、『無秩序な状態の度合い』を数値で表すものとして用いられました。

 無秩序な状態ほどエントロピーは高く(数値が大きく)、整然として秩序の保たれている状態ほどエントロピーは低い(数値が小さい)と表現されます。

 そして「エントロピー増大の法則」とは、「すべての事物は自然のままに放っておくと、そのエントロピーは常に増大し続け、外から故意に仕事を加えてやらない限り、そのエントロピーを減らすことはできない」というもので、簡単に言うと、秩序だって集まっているものはばらばらに広がろうとするものだ、と理解できます。

 コップの中の水にお湯を注ぐと、コップの中は熱いお湯と冷たい水に分かれているわけではなくて、やがて混ざり合って全体にぬるくなってしまいます。また整理整頓された部屋がいつのまにか乱雑になってゆくのも同じようなもので、整理整頓をするには外部作業というエネルギーを投入しなくてはなりません。

 これと同じように、我々の社会も一定の秩序は常に壊される方向に働くもので、秩序を保ったり再編するにはエネルギーを投入しなくてはならないのです。

 買い物をする便利で楽しい場所が町の中心のデパートにしかなかった制約的な秩序は、郊外型のショッピングセンターが増大して対的な魅力を失って行きました。

 丸井さんでなければダメだった楽しいお買い物の場も、ススキノでなければダメだった飲屋街も、テレビの番組も国民的スターも、時代と共にどこでも何でも良くなってしまいました。

 人々を引きつける魅力も数少ないものから広がりを見せて、エントロピーも増大するばかりです。

    ※    ※    ※    ※

 ことほど左様に、放っておけば制約や秩序が崩れて行く時代の流れにあって、やはり放っておけない問題を、時の流れに逆らうように再び秩序を取り戻すには相当のエネルギーが必要になります。

 個人の財産や個々のお店は守れないけれど、環境や景観、町のにぎわいなどは住民のコンセンサスを取った上で、予算や資源を回すことで守っても良い秩序なのではないか、と思うのです。

 丸井さんは守れなくても、楽しい大通りの街並みという秩序は守るのが良いのではないでしょうか。

 相当にエネルギーが要りそうなのですがね。
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