北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

幌延深地層研究センターを見学する

2015-10-23 23:04:31 | Weblog

 幌延町にある「深地層研究センター」を視察してきました。

 いつか行こうと思っていた施設ですが、なかなかふんぎりがつかずにいました。それをちょっとした縁があって地下の施設も見学できることになり、喜んで行くことにしました。

 研究センターは牧草地に囲まれた丘陵地の中に超近代的な建物が卒然として現れます。

 日本の原発では、使用済み核燃料は使えずに捨てる部分はわずか5%で、95%はまだ使えるので再処理をしてまた燃料にします。で、この捨てるしかない部分は強力な放射能を持っているので処理に困ります。

 放射能は半減期と言って、年限が立てばどんどん半分になって減衰してゆくのですが、その期間が数万年という気の遠くなるような時間単位。

 なので放射能が流出しない形にしたうえで安定的に超長期にわたり保存しておかなくてはなりません。

 これを他国に頼むというのは他国に弱みをもたれる要素でもあり、国防上も好ましくないため自国で処理しなくてはなりません。海底や宇宙、というような頓狂なはなしもありますが、高い確実性をもとめなくてはならず、それらを総合すると、深い地層の中に置いておく、ということが極めて現実的な答えということになります。

 ここ幌延の深地層研究センターは、しばしば「いつかはなし崩し的に核燃料をおくことになるのではないか」と心配される人がいまだにいるようですが、道や幌延町の条例や、互いに結んでいる協定で、ここには放射性廃棄物を持ちこむことや使用することはしない、ということを合意しています。

 それに何より、本当に最終処分譲渡するためにはこちらで地下に掘っているような規模の施設では到底足りず、こちらの数百倍の規模の地下施設が必要になるのだと。

 従って約束上も、実際の規模としても最終処分場にはなりえないというのが、この幌延深地層研究センターなのです。


    【地下模型を見ると規模が大きくないことが分かります】

 では何を研究しているのか、と言われると、深い地層の中で高温になる放射性廃棄物の熱の挙動の研究や、放射性廃棄物を入れることになっている容器とそれを覆うオーバーパック、さらに水を防ぐ緩衝材などの本物がどれくらい水を防ぎ将来にわたって容器が変化するかを調査している、というわけです。

 ガラス固化された廃棄物を入れるステンレス製の容器には、それらの代わりに熱を発するヒーターを入れて高熱状態にしてみて、その温度がどう伝わるかや地下水による容器の侵食度合いなどを調査研究しています。

 こうした研究は原子力発電所を持つ世界中の国々が研究を進めていて、今年はスウェーデンなどの北欧の国で実際の処分が始まるのだそう。

 日本でもすでに原発が稼動しているからには、どうしたって過去の分の放射性廃棄物はあるわけで、これらの処理方法の確立は急務です。

 
 もちろん最終処分の場所は今後決めなくてはなりませんが、その際にもここなどでの調査研究は大いに役立つはずなのです。


     ◆   ◆  


 今日はまず、原子力政策のこれまでに始まり、施設に課せられたミッション、調査研究内容などを説明していただいた上で、一般の方も見られる展示内容を案内していただきました。

 そしていよいよ用意されたつなぎ服に着替えて地下の見学。

 こちらの施設では最深部が地下351メートルという、東京タワーのてっぺんと地上よりもまだ深いところまで立坑が三本掘られていて、うち一本は換気用で残りの二本は地下に続く連絡立坑。

 今日はそのうちの西立坑から地下の最深部に降りてゆき、そこで調査が行われている様子を見せてもらいました。

 人間の乗るワイヤー式エレベーターはせまくてちょっと怖い感じもしますが、4分足らずで最深部に到着します。

 トンネルは半径6メートルほどで鉄製の支保が据えられて内側はコンクリートで固められています。深くてもそこいらを歩いている分には地上の地下道となんら変わらない印象です。

 そしてこちらでは廃棄物以外は、本物の容器やオーバーパックなどが用意されていてそれらを用いた研究がされています。

「カメラでの撮影はどこがよいですか?」と訊くと「どこでも。全部撮っていただいてかまいませんよ」とのこと。隠し事の無いオープンな施設として、ここでちゃんと勉強すれば不安や疑念はなくなっていく感じがします。

 幌延の深地層研究センターで、原子力のことを勉強しておくことは未来への責任のように思います。

 なお施設の隣にはトナカイ牧場があります。思ったよりも小さいですが、かわいいトナカイに接してみてはいかがでしょう。

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