毎年年末に注文していたお酒の連絡が今年は日付が前年度の申込用紙で来ました。
親戚にもお年賀で配って歩くお酒です。
変だなあ、と思いながら妻が毎年注文していたメアドに注文のメールを送ったのですが、「ご注文を受け取りました」という返事もなければ「発送いたしました」という連絡もない。
お酒を注文していたのは、長野県大町市の「市野屋商店」という150年の歴史と伝統ある酒蔵。
「金蘭黒部」というお酒が有名で、例年こんなことはありませんでした。
メールじゃらちが明かない、と年末の30日に電話をしたところ、ようやく連絡が取れたのですが、「担当がインフルエンザで出ておりませんでしたので受けきれなかったかもしれません。申し訳ありません」という返事。
住所、氏名、申込内容を告げて電話を切ったところ、すぐに折り返しの電話がまたきました。
「メールが届いていないのですが、どちらのメールアドレスに送られましたか」
「×××@▲▲.COMです」
すると先方は、「ははあ、実はそのメアドの担当者が既に退職をしていて、そのアドレスは今は使われていないのです」という驚きの説明。
「それでは改めてご注文を確認させていただき、すぐに発送いたします」
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よく見ると、確かに今まで注文していたアドレスは担当者の個人名のアドレスになっていましたが、よもやその方がもういないとは。
おまけによく考えると、毎年来ていたお酒のカタログも届いていませんでした。
一体どういうことなのかなあ、と調べてみると、なんとこの「市野屋商店」さんは、2018年度に、後継者がいないことから事業を他の方に譲渡していたことがわかりました。
【長野県中小企業団体中央会 中小企業レポート2018年3月号】
http://www.alps.or.jp/eventalps/alps2/wp-content/uploads/2018/03/201803.pdf
この中の記事に、まさに市野屋商店さんのことがこう書かれていました。
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― 地方創生は連携による地域力アップと強力な発信―
大町市にある市野屋商店は『金襴黒部』で知られる150年老舗酒蔵で明治時代の母屋と蔵で酒造りを続けてきたが後継者がいないことから取引金融機関の紹介で長野県事業引継ぎ支援センターへの相談となった。
大町市内三蔵で観光の一翼を担っている「三蔵呑み歩き」を途絶えさせる訳にいかないこと、歴史的価値がある母屋と蔵を酒造りとともに後世に残したいとの思いから、建物は創業者一族に残し、製造部門だけを第三者に託することを決断した。
一方当センターに譲受相談をしていたかぶちゃん農園は、飯田市で市田柿の干し柿製造販売を主力に急成長している企業で地産品の品揃えを図っている。最近では発酵食品の需要に着目し、ヨーグルトなどの新規事業にも力を入れてきた。全国にユーザーを有する販売力を背景に、市野屋ブランドの日本酒と甘酒の拡販に自信が持てたことで株式譲渡による子会社化が実現した。従業員全員雇用と元社長は相談役についた。
かぶちゃん農園は「市野屋商店150年の文化と歴史を守りたい」とし銘柄や屋号は変更しない。また、元社長所有の歴史ある建物をそのまま使い続けることで大町市の観光コースなど地域貢献も果たしていきたいとしている。
【引継ぎ者の言葉】
また、かぶちゃん農園様からは次のようなお言葉を寄せていただきました。
信州の〈食〉を全国に届けるのが当社の使命と考えていますので、その〈食〉の仕入先を確保することが喫緊の課題となっています。
特に地域に根ざした食品製造業が後継者不在などで廃業している現状に危機感を覚えています。発酵食品を中心に幾つか事業を引継いでいますが、今般ご紹介いただいた事業引継ぎ支援センターには感謝しています。
さらに発展させるべく全力で取組んでまいります。
------------ 引用ここまで
企業の後継者不足のことはいろいろと耳にしていましたが、身近な商店がこのような課題を抱えていたとは思いませんでした。
お酒は元日に届き、親戚への年賀も無事に終えました。
それにしても事業承継をしてくださるところがみつかって、これまでと同じように美味しいお酒が飲めることは幸せです。
事業承継はこれからさらに問題になってくるでしょうし、その結果いままでのような企業のノウハウやブランドが失われるとすれば残念です。
様々な団体がこうしたマッチングを行ってくれて、事業承継がスムースになることを願いたいと思います。
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