北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

インフラのメンテナンスを写真家の視点で見る ~ 山崎エリナさんの講演を聞きました

2024-06-18 23:56:07 | Weblog

 先日、道内の産官学の土木技術者が集う会合がありました。

 年に一度の総会を無事終えたところで、懇親会までの時間に講演会がセットされています。

 講師は山崎エリナさんという女性の写真家で、講演のタイトルは「写真家から見た建設業の魅力」というもので、副題として「感動から感謝へ今伝えたいこと」とつけられています。

 山崎さんは兵庫県神戸市生まれで、パリに留学したことでこちらを拠点に3年間写真活動に専念、その後40か国以上を旅して写真を撮影し、感じたことをエッセイとして執筆されてきたといいます。

 その過程で出会ったのが、建設業、それもインフラを維持管理する「インフラメンテナンスの世界」でした。

 2018年から2023年にかけて「山崎エリナ写真展 インフラメンテナンス」を全国各地で開催しましたが、橋梁・トンネル・道路のメンテナンス現場を撮影した『インフラメンテナンス~日本列島365日、道路はこうして守られている』は、国土交通省のインフラメンテナンス大賞優秀賞を受賞されました。

 また2022年にはこれまでの取り組みの成果が土木学会からも評価されて、土木学会のインフラメンテナンス特別賞を受賞されています。

 講演の中で山崎さんは、「私は基本的に現場に入らせていただいたら、望遠レンズは使わずにその場の視点で撮影をするようにしています」と語ります。

 現場の人たちとも仲良くなる中で、我々のような現場に慣れてしまった者とは全く違う視点で映像を切り取ってくれています。

 現場で働く女性たちも大勢登場しました。

 中には厳しく監督をする上級技術者の女性もいるのですが、女性がいることで現場が明るく和やかになるといいます。

 現場の人たちは写真を撮られることを意識すると普段通りの表情や格好をしないものです。

 それを山崎さんは"振り向きざま"や"後ろ姿"で居合のように瞬間を切り取ります。

 ある若い現場監督が遠くを見るまなざしは真剣な矜持がありました。

 年老いた重機のオペレーターにも職人魂がありました。

 女性の微笑みにも誇りが感じられます。

 そうした表情の先にあるのが、インフラが当たり前に使えるようにするための陰の努力であり積み重ねた技術に他なりません。

 確かな技術で継続的に人が関わっているからこそ、私たちの日常は当たり前のように保たれている。

 しかしその裏側をこうやって写真家の視点で見せてもらえると、展覧会に来たごく普通の観覧客の皆さんは「知らなかった」と感動して帰られるといいます。

 父が映った写真を見て、息子さんが建設業に道を志したという話もありました。

 やはり現場の人間が"ついで"に取る写真ではなくて、写真家が撮るからこそそこに撮影者の感動も盛り込まれているのだと思います。

 良いお話でした。

 山崎さんはインフラメンテナンスの写真集も出されていますので、多くの方にぜひ見ていただきたいものです。


【山崎エリナオフィシャルサイト】
  https://yamasakielina.com/
       

コメント
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