北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

北海道ガーデンショーのパネルディスカッション

2015-02-28 21:06:40 | Weblog

 

 さて、昨日に続いて「北海道ガーデンショー2015大雪」のシンポジウムの御報告を。今日は基調講演と、その後のパネルディスカッションの様子です。

 まず基調講演は、元NHKのアナウンサーで「プロジェクトX」などの人気番組を担当した国井雅比古さん。

 講演のタイトルは「田舎町には宝がある。だから挑戦できる」というものでしたが、「実はこれはスタッフが勝手に設定してくれたものなんです。北海道へ来れるなら何でもいいや、と思って受けちゃいました」と笑わせながら、独特の渋い低音で取材で訪れた全国の町の印象的な出来事を語ってくれました。

 実は国井さんは、昭和52年から56年にかけて旭川放送局に勤務していたそう。子供達もそこで生まれ育ったことから、北海道にはやはり懐かしさを感じるのだそうです。

「北海道が本州と違うのは、空港を降りたときの空気のピンとした感じです。ただ涼しいとか寒いとか言うのと違って、やっぱり独特の空気感があります。今は都会に住んでいますが、あるとき息子が『お父さん、北海道の匂いがする』って言うんです。本州にしてはひんやりした天気の時でしたが、息子が北海道の匂いを感じるんだと思って印象的に覚えています」

「取材に行って、とても美しい町ですばらしいなあ、と思うんですが、人が歩いていないのに困りました。やっぱり人が写っていないと町が生きているという感じがしないんですねえ」

「実は渓流釣りが好きで、もう二十年も毎年夏に北海道へ来て宗谷から道東を車で寝泊まりしながら移動する旅をしています。北海道の自然は本当に素晴らしい宝物です」

「ある道東の酪農の町へ取材に行ったときのこと。その町では交流事業で本州の子供達を一定期間受け入れることになりました。受け入れるとなると大体高齢者が働きの中心になるので最初は不安だったんですが、実際に受け入れてみると子供達は大喜びで、帰るときにはみんな笑顔で『ありがとう、さようなら。又来るね』と手を振って別れたんです。

 世話をした人たちは、『子供達が笑顔で帰って良かったね』と思ったんですが、ふと、じゃああれだけの笑顔が地元の子供達にあるんだろうか、ということになりました。それでそれに触発されてお年寄りが地域の子供達のための活動を始めたと言うんです。偉いと思いませんか。結局は地域の宝って人だと思うんです。今回のガーデンショーも、一過性のイベントじゃなくて、北海道の花文化を育てるという高いビジョンを掲げておられるんで、ぜひ皆さんも行って応援してあげましょうよ」

 地域の宝は人。一人ひとりが自分も宝になろうと努めて欲しいですね。


       ◆     ◆   


 続いてはパネルディスカッション。

 コーディネーターはラジオパーソナリティの竹本アイラさんで、パネラーは、基調講演の国井さんに加えて、ふらのまちづくり株式会社社長の西本伸顕さん、山岳写真家の市根井孝悦さん、そして今回のガーデンショーの名誉ディレクターである高野文彰さんの四名です。

 パネルディスカッションのテーマは「まちづくりの視点から~北海道ガーデンショーへの期待」と題して、まちづくりとしてのガーデンショーを語ります。

 まずはまちづくりの先行成功事例である富良野の西本さんから。

西本「まちなかの病院が移転することになり、その跡地をどうしようかということになりました。結局役所だけには頼れないと言うことで、民間主導で出資をしてフラノマルシェという地元の産物の物産施設を作りました。

 実は富良野には数えてみると地元産の商品が2千点もあったんです。ふるさと創生で1億円をもらったときに、全国で温泉が掘られましたが富良野ではジュース工場を作りました。そういう先見の明がある先輩達が営々と地元産のモノをつくってきた。

 そしてこれが皆さんに支持されて、昨年は年間85万人の利用がありました。利用者が伸びてきたことも嬉しいですが、地元の人がちゃんと利用してくれているのが嬉しいです。まちなかの活性化も地域が一体になったという感じがします」


 続いて写真家の市根井さん。今の佐藤上川町長に誘われて、層雲峡大雪山写真ミュージアムの館長をされています。
市根井「元々函館に住んで教師をしていました。山に登ったり写真指導などもしていましたが、三年前にようやく住民票を上川町に移して存分に写真が撮れるようになりました。大雪は本当に『花の山』なんです。それもイワウメだとかチングルマなど同じ花がずーっと2キロも3キロも続いて一面に咲き埋め尽くす。

 こんなところは日本中探してもどこにもありません。皆さん紅葉ははかないと思うでしょ。大雪では8月中旬に秋風が吹き始め、8月下旬に紅葉が一部で始まります。そして9月中旬に頂上が紅葉し、層雲峡に降りてくるのは10月中旬。二ヶ月も紅葉が続くんです。どうかこの山の花を見てあげてください」


 そして名誉ディレクターである高野文彰さん。
高野「前回のときですが、最初はガーデンショーって言われても乗り気ではありませんでした。これまでの世界のガーデンショーは、大都市で大資本が庭を造ってコンペして一番を決めて、短期間開催してすぐ壊す、そんなイベントだったからです。実は高野ランドスケープという会社は、フランスショーモン国際ガーデンフェスティバルに二度出品しています。そこでは人口800人くらいの小さな町が生き生きとして暮らしている。ガーデン文化があるなと思いました。

 北海道では2004年にガーデンアイランド北海道という市民運動が立ち上がって、花を巡る文化づくりを地道にやってきましたが、やはり北海道は花の島になる要素がたくさんあると思います。

 仕事でクウェートの豪族と仕事をしたことがあります。『打ち合わせのために迎えをやります』というのでホテルで待っていたら車がやってきて、『どこで打ち合わせるのかな…』と思っていたらどんどん砂漠の中へ入っていく。そしてついたのは大きなテントの張られたところで、その中で打ち合わせをしました。

 後でそんなことがあったよ、と言うと、ある人が『高野さん、それはすごいことだよ。砂漠の民が本当におもてなしをするときは砂漠で迎えるんだ』と言います。なるほど、それじゃあ花の島北海道でお客様をもてなすような庭があるだろうか?それがあると良いな、と思いました。

 上川町さんは、『町に活力を求めるのには庭が良い』という明確な意思があって、三年前から森のガーデンを作ってきました。今回のガーデンショーはそうしたことの延長にあります。

 造園の手法に「借景」という遠くを庭の風景の一部に拝借するという技法がありますが、この借景が大雪山だなんてスケール感が普通の借景と全く違う。
 ぜひたくさんの方にご覧いただきたいと思います」

 
 国井さんも感想を一言。
国井「元気のある町の共通点は、皆が楽しんでいるというコトだと思います。お客を迎えるのに、頑張らなくちゃいけなくて疲れ果てているようじゃ困っちゃいますね」

高野「今度のガーデンショーでは美人のガーデナーが案内をしてくれることになっていますが(笑)、僕は本当は、上川町民の皆さんがガーデンガイドになって欲しいと思うんです。自分たちの町を自慢の種にして欲しいんです」

西本「富良野って、フラノマルシェが出来る前にはホテルにしかパン屋さんがなかったんです。『富良野じゃパン屋は流行らないよ』っていうのが定説でした。でも地元に美味しい食材があるんだから、って都会で修行したパン屋さんを入れてみたら、とてもクオリティの高いパンを作ってくれたこともあるんですが大人気になりました。

 そうしてパン屋がなかった町に、今では5軒もパン屋さんができました。できないと思っても、潜在的なポテンシャルを引き出すことはできますしね。

 そして僕は売り子の女の子に、『あなたはあなた個人のファンを作らないと行けないよ』と口を酸っぱくして言っていたんです。そうしてこっそりある朝、店の中を見ていると、パンをどっさり買った女性がいて、その方が『あんたの顔を見ているとつい買っちゃうのよね』と言っていた。もう私は涙が出てきました。

 あとマルシェの中には基本的に飲食店を入れていません。商売とすれば出しても良いんでしょうが、それでは町中の飲食店のお客をただ取っちゃうだけになる。だからうちは『近くにこんな食べ物屋さんがありますよ』ってお知らせをしています。ビジネスが儲かるのも結構ですが、地域全体が潤うような形じゃないとまちなか全体が活性化したことにはならないからです」

国井「僕は北海道は、日本にとって絶対に宝の島になると思います。それに百年…はかからないと思いますが、でも五十年くらいはかかるかもしれない。僕はもう生きていないけれど、あの世からずっと見守っていますよ(笑)」

 
        ◆  


 パネルディスカッションが終わったところで、大学の先輩の高野さんに声を掛けました。

「お疲れ様でした。今回の目標入れ込みってあるんですか?」
「一応17万人にしていますが、本当に頑張らないといけないとおもいます。是非多くの方に上川と大雪のガーデンを見てほしいなあ」


 北海道のおもてなしのガーデン文化。北海道の産業の柱の一つの観光に、品の良いコンテンツを一つ加えましょう。

 今年の夏はガーデンショーへどうぞ。

コメント
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