『発達障害の子どもたち(講談社新書)』という本を読みました。小学校の先生になった娘が買った本で、妻が借りて読んでいたのをさらに奪ってきたのです。

世の中の子どもたちの現状として、ADHDやアスペルガー症候群、学習障害、自閉症など、さまざまな問題と思われる単語が氾濫していますが、それらは実際どのようなもので、それを巡る教育あるいは医療現場の現状はどのようなものなのでしょうか。このことは以前から社会人の常識としていつか勉強したいと思っていたので、匿名での具体的な事例紹介の多いこの本は格好の参考書となりました。
※ ※ ※ ※
この本の著者は杉山登志郎さんという、あいち小児保健医療総合センター保健センター長をされているお医者さん。児童青年期精神医学がご専門で、長い間何百例にもわたる発達障害の子どもたちを見てきてこられている方です。
実は杉山先生には、『発達障害の豊かな世界(日本評論社)』という発達障害を巡る話題に触れた著書があるのですが、その後も障害児とその両親と会話をするうちに、本当に必要なことがきちんと伝わっていないといういらだちを覚える場面が何度もあったのだとか。
発達障害に関する重要な情報が正しく伝えられて誤解と偏見が解ければ、そのような子どもたちの社会的な適応はきっと改善するだろうし、子どもたちとその両親にとっても好ましいことでしょう。
ちなみに著者の杉山先生が働いているセンターが抱える新患受診の待機リストは三年先まで(!)あるのだそうで、それを少しでも解消したいという思いも強いのでした。
【発達とはなにか 障害とはなにか】
発達についてはいくつかの領域に分けて考えることができます。以下に発達の領域と、その内容、その障害に対する医学的診断名を書いておきましょう。
Ⅰ)認知の発達…「周りの世界を知り、理解する。また言語を覚え、言葉を用いて考えるといった基本的な認知の発達」…(その障害は精神遅滞と診断される)
Ⅱ)学習能力の発達…「基本的な認知の力を踏まえて、文字を読む、書く、計算をするといった学習能力の発達」…(その障害は学習障害と呼ばれる)
Ⅲ)言語能力の発達…「言葉の発達、言語の理解など言葉の発達の障害」…(その障害は発達性言語障害と呼ばれる)
Ⅳ)社会性の発達…「親子の信頼と絆に始まり、他人の気持ちを読むこと、さらに他人とのつきあい方や社会のルール習得の発達」…(その障害は広汎性発達障害・アスペルガー症候群と呼ばれる)
Ⅴ)運動の発達…「歩く、走るといった体全体の運動の発達」…(脳性麻痺や筋ジストロフィーなど)
Ⅵ)手先の細かな動きの発達…「ものを持つ、スプーンを使う、字を書くといった指の細かな運動の発達」…(発達性協調運動障害)
Ⅶ)注意力・行動コントロールの発達…「認知の発達と深い関係にある、注意力や集中力、行動コントロールの発達」…(注意欠陥多動性障害・ADHD)
※ ※ ※ ※
一般に「普通の」といわれる子どもたちもこれらの領域をなんとか乗り越えることで成長をしているというわけで、普通でいる事って結構大変なんだと思わざるを得ません。
さらに、これらの領域の発達障害は重なって現れることがあるので、さらに問題は複雑になります。発達障害という単語でまとめられる問題の中身は実に複雑な様相を呈しています。
※ ※ ※ ※
また、「障害」という言葉にも注意が必要です。著者は「この『障害』という日本語は著しく断定的なニュアンスを持つ」と嘆いています。
この元になった英単語は"development disorder"というもので、disorderとはdis=乱れ、order=秩序ということ。つまり、日本語の発達障害の意味は、「発達の道筋の乱れ」、や「発達の凸凹」という意味なのです。
何かの機能が決定的に欠落して取り戻せないというような意味ではなくて、広い意味の個性とも言えそうですが、社会の一員として生活をして行く上では訓練したり練習をして矯正をする方がよい個性でしょう。こうした先入観に影響されるところは大きいでしょう。
さて、長くなりますので今日はここまで。改めてこうした問題に関してうろ覚えで先入観に捕らわれている自分が分かりました。明日はもう少し中身に触れてみたいと思います。
皆さんのご意見もお聞かせください。

世の中の子どもたちの現状として、ADHDやアスペルガー症候群、学習障害、自閉症など、さまざまな問題と思われる単語が氾濫していますが、それらは実際どのようなもので、それを巡る教育あるいは医療現場の現状はどのようなものなのでしょうか。このことは以前から社会人の常識としていつか勉強したいと思っていたので、匿名での具体的な事例紹介の多いこの本は格好の参考書となりました。
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この本の著者は杉山登志郎さんという、あいち小児保健医療総合センター保健センター長をされているお医者さん。児童青年期精神医学がご専門で、長い間何百例にもわたる発達障害の子どもたちを見てきてこられている方です。
実は杉山先生には、『発達障害の豊かな世界(日本評論社)』という発達障害を巡る話題に触れた著書があるのですが、その後も障害児とその両親と会話をするうちに、本当に必要なことがきちんと伝わっていないといういらだちを覚える場面が何度もあったのだとか。
発達障害に関する重要な情報が正しく伝えられて誤解と偏見が解ければ、そのような子どもたちの社会的な適応はきっと改善するだろうし、子どもたちとその両親にとっても好ましいことでしょう。
ちなみに著者の杉山先生が働いているセンターが抱える新患受診の待機リストは三年先まで(!)あるのだそうで、それを少しでも解消したいという思いも強いのでした。
【発達とはなにか 障害とはなにか】
発達についてはいくつかの領域に分けて考えることができます。以下に発達の領域と、その内容、その障害に対する医学的診断名を書いておきましょう。
Ⅰ)認知の発達…「周りの世界を知り、理解する。また言語を覚え、言葉を用いて考えるといった基本的な認知の発達」…(その障害は精神遅滞と診断される)
Ⅱ)学習能力の発達…「基本的な認知の力を踏まえて、文字を読む、書く、計算をするといった学習能力の発達」…(その障害は学習障害と呼ばれる)
Ⅲ)言語能力の発達…「言葉の発達、言語の理解など言葉の発達の障害」…(その障害は発達性言語障害と呼ばれる)
Ⅳ)社会性の発達…「親子の信頼と絆に始まり、他人の気持ちを読むこと、さらに他人とのつきあい方や社会のルール習得の発達」…(その障害は広汎性発達障害・アスペルガー症候群と呼ばれる)
Ⅴ)運動の発達…「歩く、走るといった体全体の運動の発達」…(脳性麻痺や筋ジストロフィーなど)
Ⅵ)手先の細かな動きの発達…「ものを持つ、スプーンを使う、字を書くといった指の細かな運動の発達」…(発達性協調運動障害)
Ⅶ)注意力・行動コントロールの発達…「認知の発達と深い関係にある、注意力や集中力、行動コントロールの発達」…(注意欠陥多動性障害・ADHD)
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一般に「普通の」といわれる子どもたちもこれらの領域をなんとか乗り越えることで成長をしているというわけで、普通でいる事って結構大変なんだと思わざるを得ません。
さらに、これらの領域の発達障害は重なって現れることがあるので、さらに問題は複雑になります。発達障害という単語でまとめられる問題の中身は実に複雑な様相を呈しています。
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また、「障害」という言葉にも注意が必要です。著者は「この『障害』という日本語は著しく断定的なニュアンスを持つ」と嘆いています。
この元になった英単語は"development disorder"というもので、disorderとはdis=乱れ、order=秩序ということ。つまり、日本語の発達障害の意味は、「発達の道筋の乱れ」、や「発達の凸凹」という意味なのです。
何かの機能が決定的に欠落して取り戻せないというような意味ではなくて、広い意味の個性とも言えそうですが、社会の一員として生活をして行く上では訓練したり練習をして矯正をする方がよい個性でしょう。こうした先入観に影響されるところは大きいでしょう。
さて、長くなりますので今日はここまで。改めてこうした問題に関してうろ覚えで先入観に捕らわれている自分が分かりました。明日はもう少し中身に触れてみたいと思います。
皆さんのご意見もお聞かせください。