駒子の備忘録

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高殿円『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』(ハヤカワ文庫)

2020年08月25日 | 乱読記/書名さ行
 クール&クレバーで電脳を駆使する名探偵シャーリー・ホームズと、だめんず好きでお人好しの女医ジョー・ワトソン…コナン・ドイルの主要キャラたちを男女逆転させ、さらに舞台を現代へとアレンジ。独創性と原作への愛にあふれた新時代パスティーシュ!

 私はミステリーファンとして嗜んでいる程度でまったくシャーロッキアンではないのですが(私はエラリー・クイーン派なので)、パスティーシュが数多く出ていることも知っていますし、興味を惹かれればそれも読みます。この著者の作品もいくつか読んでいるので、手に取りました。カバーレイアウトとオビのイラスト、デザインがお洒落、というのもありました。
 性別を変えたり時代を移したりというのはよくある手法ですが、しかしこの作品は、なんかちょっと…変わっていました。
 時代は2012年、五輪開催に沸くロンドンとされていますが、なんちゃって現代というかパラレルワールドの2012年というかで、ワトソン夫人はベイカー街のフラットを管理するAIになっていたり、全体にちょっとスチームパンクっぽい世界観になっています。
 それはまあいいんだけれど、なんだか…海外小説の翻訳のように見えるようにしているのか、文体がなんだか…まあワトソンの一人称小説だから、それもあるのかもしれないけれど…シャーリーが変人なのはいいとして、何故ワトソンまで女性同士でも相手を「君」と言ったりするの? ワトソンがどんなビッチとされていても全然いいんだけれど、この作品世界における「普通」がどこなのかかよくわからないので、シャーリーのすごさも今ひとつわかりづらいものになっている気がします。残念、もったいない。これだとワトソンの外側にもうひとり、常識的につっこむキャラが必要だよね。
 娘の幼稚園のお迎えに行くグロリア・レストレード警部とか、数学者でネット裏社会の女王ヴァージニア・モリアーティ教授とか、両性愛者の英国官僚ミシェール(マイキー)・ホームズとか、いちいちいいのになあ。
 そしてこれは、特にその後シリーズ化はされなかったのでしょうか…まあこの中途半端さだとその先掘っても何もないな、となっちゃったのかもしれませんが。これでいいユリになったら化けたかもしれないのに…モヤモヤしながらの読了でした。

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